中盤まで世界観ふせた『全領域異常解決室』、異例構成に悩むP 脚本家・黒岩勉は「焦るな」

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2024年12月11日 08:10  クランクイン!

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異例展開が話題のドラマ『全領域異常解決室』(第9話場面写真) (C)フジテレビ
 藤原竜也主演で放送前から期待値の高かった『全領域異常解決室』(フジテレビ系/毎週水曜22時)が、9話&最終回の残り2話を残すのみとなった。5話での驚愕展開、7話にエピソードゼロを持ってくるという異例の構成も話題だが、脚本を手掛けたのは、ドラマ『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』『マイファミリー』、映画「キングダム」シリーズ、「ゴールデンカムイ」シリーズなどの人気脚本家・黒岩勉。「この物語は7話から始まります」という黒岩氏のコメント通り、終盤に来て物語はさらに加速。今夜の9話放送を前に、黒岩氏と大野公紀プロデューサーに話を聞いた。

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■5話まで本当の世界観を見せない異例展開 大野P「ギリギリまで悩みました」

――“不可解な異常事件”に、藤原竜也さん演じる超常現象のスペシャリストたちが挑む物語としてスタートした本作ですが、当初は超常現象に見えて、科学的に解決できる一話完結の事件モノの流れでした。それが、爆破事件が起きた第5話から驚きの展開を見せました。視聴者の熱もどんどん帯びていきましたが、5話での展開は正直、かなりスロースタートです。

黒岩:はじめから世界観を明かしたうえでドラマをスタートさせようという考え方もありました。ただ最初はより多くの方に見てもらえる形にしておいたほうがいいんじゃないかと。その上で、狭く深い世界に持っていこうと。4話までなんとなくどこかおかしいなと思いながら来た5話目で、世界を反転させる。いきなり1話でやるよりは、そこまで付いてきてくれた人たちなら、その後も同じ列車に最後まで乗ってくれる可能性が高いだろうと思ったんです。

大野P:打ち出し方については、ギリギリまで悩みました。ファンタジーを地上波のドラマで描くとなると、視聴者の方がどこまで離れずにいてくださるかなと思った部分もあったので。黒岩さんもおっしゃる通り、ある種の事件解決モノとしてまずは楽しんでいただいた先に、ゲームチェンジがあって、こんな奥行きがあるんだ!と知っていただく後半にしていこうと。「異常解決のミステリーです」というのを1枚めくると、日本の神話の話になるというところを、早くお客さんに届けたいという思いは1話からずっとありました。

黒岩:焦ってましたね。

大野P:焦ってました(苦笑)。

黒岩:僕は「焦るな」と言ってたんですけどね(笑)。

大野P:興玉(藤原竜也)の「僕も神です」は、台本上では5話では言っていないんです。5話で爆破事件があって、千里眼の能力者がいて…という流れの中、次回予告の15秒だけでもそれをお伝えすることで、後半の世界観が垣間見えるし、見てくださる方にも楽しんでいただけるだろうと。黒岩さんの脚本は、次週に対するどんでん返しや引っ張りがいっぱいあるんです。その中で、予告としてももう1枚のせたほうが、見てくださる方に楽しんでいただけるんじゃないかなと。とにかく楽しんでいただきたい思いで、「(第6話の)僕も神です」を予告に入れました。

――黒岩さんとしては「見せちゃったんだ」といった思いは。

黒岩:大野さんたちは、早め早めにこの世界観の広さを匂わせたいと言ってました。予告編に関しては僕としてはお任せするしかありませんが、みなさんの反応を見ていると、よかったんだなと。

――FODで1話先行配信をしたり、Netflixでも放送済みの回を追うことができます。全体の展開を考えていくうえで、配信の存在も大きいですか。

黒岩:10年前ではこうした仕組みは難しかったかもしれませんね。今回は5話まで付いてきてくれた人に、5、6、7話とすごく深いところまで刺さっていく仕組みにしようと決めました。

■「僕も神です」セリフは必然 説得力が伴ったのは藤原竜也だからこそ

――それにしても「僕も神です」はしびれました。すごいセリフです。

黒岩:これを言わせてやろうみたいなのはなくて、必要なセリフだっただけですが、ただ、今回、藤原さんじゃないと成立しない企画ではありました。必然でありつつ、なかなかハードルの高いセリフですからね。神様だと言われても「えー!」とはならない助走を5話までにつけたつもりです。とはいえ演じる人に説得力がないと成立しない世界観。だから藤原さんに決まったときは「いける」と初めて思えましたし、すごく嬉しかったですね。この構成で引っ張れると思えたのも、藤原さんだったからです。

――かなり話題になりました。

黒岩:実は僕のイメージだと、もう少しコメディになる可能性もあるかなと思っていたんです。「僕も神です」と言った後の小夢(広瀬アリス)のリアクションも含めて、くすっと笑えるところになるかもしれないと。それが「ああそうですね」というものすごい説得力だった。こちらが想像した以上の感じに仕上がって来るのは、ドラマならではです。

――あらためて、藤原さん演じる興玉雅のキャラクターに求めていたことを教えてください。

黒岩:まず捉えどころがない。神様ですからね(笑)。特に興玉は捉えどころがなくて、すごく風流で余裕があるんだけど、つかみどころがない。同時になにか深いところを考えているんじゃないかという…すごく難しいことをお願いしました。でもそれをやれちゃうのがすごいですよね。

大野P:藤原さんには唯一無二の存在感と説得力があります。セリフに曖昧さも残しつつも、そのキャラクターが存在していることに説得力を持たせてくださる。過去にもみなさんの心に残る名シーンや名場面を数々作ってきていらっしゃいますが、藤原さんなら、今回もそれらをさらに覆すような面白いシーンを作ってくださるだろうと思いました。

――広瀬さんとの化学反応も素晴らしいです。

大野P:広瀬さん演じる雨野小夢は、視聴者目線のキャラクターとして登場します。藤原さん演じる興玉雅という、不思議でみやびやかな人間と接触していくわけですが、興玉が群を抜いて変わった存在であるからこそ、視聴者に近いリアクションを自然に演じられる方が必要でした。加えて、後半には実は天宇受売命であり、室長だったことが分かってくる。広瀬さんは、自然体の演技はもちろん、演じ分けの器用さがすごくある方だと思います。

黒岩:小夢は途中から確変というか覚醒するんですよね。自分の持っているものや、自分の大事さ、周囲の大事さといったもの、そして世界の構造の違いに気づいていく。全く違う人間になっていくんです。しかも最後は神に戻れるのか人間になるのかというところも含めて、最初から出来上がっている神様キャラクター(興玉)と、変わっていく人(小夢)が組むのが面白いと思いました。

■第1話撮影時点では、7話のエピソードゼロの脚本はキャストにわたっていなかった

――黒岩さんが「この物語は7話から始まります」とコメントされた7話でのエピソードゼロ展開も大きな反響がありました。私も1話を見直しました。

黒岩:キャストのみなさんたちすごいですよね。視聴者は7話の放送あとに1話を見直して、そう感じただろうけれど、僕は最初に1話を見たときから「すごい」と思ってました。しかも1話の撮影時は、口頭でキャストのみなさんに展開を説明していただいていたものの、7話の脚本自体はまだできていない状態だったわけです。それがみなさんの演技が本当に深くて。猿田毘古神(迫田孝也)が小夢を迎えに行ったときも「何千年も見守ってきた夫です」みたいな感じにちゃんとなってたから、僕はひとり泣きそうになってました。みなさん、本当に理解度が高い。

――視聴者の反応はどうお感じに。

黒岩:僕は普通にSNSもチェックします。やっぱり視聴者さんに見てもらうために作っているので。ホッとしました。7話に関してはテクニカルな部分が大きくて、回想どころかほぼ全編が昔の話になる。分かってもらえるかなと不安もありましたが、「ここが1話に繋がるのか」と視聴者はちゃんと分かってくれていて、自分のなかで消化してくれた。「伝わった」と感じてすごく嬉しかったです。

――7話まで見てからの、1話冒頭の興玉と小夢の“実は再会”のシーンはエモさMAXでした。

黒岩:興玉が1話で久々に迎えたときの感じはすごかったですね。そして、7話で小夢が全部を噛みしめたあとに、室長代理の興玉を見る。

――1話での興玉登場シーンの妙な間は、そのときは単純に変わったキャラクターなのかと思ってました。

黒岩:改めて不親切なドラマですね(笑)。だから5話まで見続けていただいたみなさんには本当に感謝です。

大野P:9話、10話は、今までの驚きをさらに凌駕するような展開になっています。ここまで見てきた方はもちろん、今からでも、ぜひ見ていただきたい作品です。日本の神々についてのお話を連ドラでやる、過去に例をみない作品だと思っています。

(取材・文:望月ふみ)

 ドラマ『全領域異常解決室』は、フジテレビ系にて毎週水曜22時放送。
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