ロッテ3位指名の東洋大・一條力真が吐露した苦悩の4年 「もし高校からプロに行っていたら、今ごろクビになっていたかも......」

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2024年12月11日 10:11  webスポルティーバ

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東洋大→ロッテ3位指名 一條力真インタビュー(後編)

 モデルになる夢をあきらめ、再び野球と向き合うことを決心した一條力真だったが、大学3年になっても事態は好転せず、むしろ悪化した。

 テイクバック時に「腕が出てこない」という違和感がある。そのため、筋力を使って無理やり右腕を振るのだが、上腕二頭筋など今まで意識したこともない部位に痛みが出るようになった。次第に上半身と下半身の連動も崩れ、一條のフォームはバラバラになった。

【自分には野球しかない】

「投げていて、全然気持ちよくないんですよ。高校までは力を入れなくてもいいボールが投げられたのに、大学ではずっと変な力が入っていて、抜くところがない感じで......」

 そんな逆境でも一條が野球に踏みとどまれたのは、それなりに結果を残せていたからだ。3年秋には6試合に登板し、防御率1.04。本来のストレートの威力は失われていた反面、フォークの精度が見違えるように上がっていた。

「フォークにはだいぶ助けられましたね。フォークでカウントを取って、フォークで勝負して......みたいな、フォーク頼みになっていました」

 周囲の支えも大きかった。元プロ投手の乾真大コーチ(元日本ハムほか)は、下半身の使い方をアドバイスしてくれた。高い志を持ったチームメートたちの存在も、一條に刺激を与えた。

 そして、一條は腹を決める。

「自分には野球しかない」

 プロ野球でも社会人野球でも、どちらでもいい。本気で野球にしがみつく覚悟を決めた。3年秋のリーグ戦終了後にテイクバックをコンパクトに微修正したところ、「リリースのタイミングが合ってきた」とかすかな好感触を覚えた。

 それでも、大学最終学年も綱渡りは続いた。春のリーグ戦開幕直後には、左太もも裏の肉離れを発症。春はわずか1登板に終わり、チームも東都2部リーグ3位と低迷した。

 一條は「チームに迷惑をかけて申し訳ない」と思いつつも、過度な焦りはなかった。秋のリーグ戦では等々力球場での試合で156キロを計測した。ただし、同球場はかねてよりスピードガンの数字が大きめに出ることが指摘されており、一條は「実際には150キロくらいだと思います」と最速に認定していない。

【今の力で通用するほど甘くはない】

 秋のリーグ戦は6試合に登板し、防御率0.00。有終の美を飾ったかに見えたが、やはり一條のなかで納得のいくボールは投げられなかったという。

「練習ではスムーズに投げられて、リリースがバチッと決まる日もあるんです。でも、公式戦になって力が入ると、変な感覚になることもあって」

 インタビュー中、高校時代よりも右腕を振る位置が斜めになっている印象を伝えると、一條は「やっぱりそう思いますか?」と身を乗り出してきた。普段は質問に対して淡々と答える一條だけに、逆質問してくるのは珍しい。本人のなかでそれほど切実な問題ということが伝わってきた。

 一條は、こんな思いも語っている。

「誰かに(腕の振りを)下げろと言われたわけでもないですし、自然と下がっていったのだと思います。でも、自分としては高校時代みたいに上から投げたいんですよね。上からしなやかに、叩くようにリリースしたい。150キロ後半から160キロに届く、伸びるような真っすぐを投げて、手がつけられないピッチングをするのが理想ですね」

 一條が思い描く「理想」がかなったら、おそらくプロの一軍クラスどころか、侍ジャパン級の存在になっていることだろう。それは、この逸材に夢を見たすべての人間にとっての悲願でもある。

 一部報道によると、一條は「即戦力リリーフ」として高い期待を受けているという。ドラフト3位指名の22歳ならば、必然的な期待なのかもしれない。

 それでも、一條は「急がば回れ」の精神でプロの世界に挑もうとしている。

「即戦力と思っていただけることはうれしいんですけど、自分のなかでは今の力で通用するほど甘くはないと考えています。特にフォームはもっとよくなると思うので、スタートから焦らず取り組んでいきたいです」

 悩み続けた4年間。その過程だけを見れば、高卒でプロに進むのではなく大学進学を選んだのは英断に思える。そんな感想を伝えると、一條は笑ってこう答えた。

「本当ですね。大学でも終わりかけていたくらいなので、もし高校からプロに行っていたら今ごろクビになっていたかもしれませんね。支えてくれた方もいっぱいいましたし、東洋大学に来てよかったと感じています」

 近い将来、もし一條力真が真価を発揮する日が訪れたとしたら。プロ野球ファンはきっと、「なぜこの選手をドラフト3位で獲れたんだ?」と驚くに違いない。


一條力真(いちじょう・りきま)/2003年2月10日、茨城県生まれ。常総学院高時代から好投手として注目されるも、甲子園出場経験はなし。プロ入りも期待されたが、志望届は提出せず東洋大に進学。大学では1年からリリーフで登板する。4年秋は東都2部リーグに優勝に貢献。24年ドラフトでロッテから3位指名を受けた。身長192センチ、体重90キロ、右投左打

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