世界的ヒットドラマ「ムービング」の原作者であり脚本を手掛けたカンフル最新作「照明店の客人たち」。第4話まで一挙配信され注目を集める本作から、韓国・ソウルで行われ、チュ・ジフンとパク・ボヨンをはじめメインキャストの7人と、カンフル、キム・ヒウォン監督が登壇した制作発表会の模様が到着した。
本作は、暗い路地裏にある照明店を訪れる、どこか変わった客人たちの物語を描いたヒューマンミステリー。「ムービング」の原作者カンフルが同作に続いて脚本を手掛けた作品で、実力派俳優が顔をそろえたことでも早くも話題となっている。
■カンフル、最終話のラストは「パンチの効いたシーンに」
カンフルは「ご覧の通りたくさんの人物が登場する物語です。その一人ひとりのキャラクターを深堀りしながら、キャラクター間の関係性を描きたいと思いました。ドラマでは、キャストの方々や監督のおかげで、僕が絵では表現できなかったことや思いつかなかったこと、表現しきれなかったところまで表現することができました」と語り、「原作ファンの方々も満足できる作品になっていると思います」と自信をのぞかせる。
そして「ネタバレになるかもしれませんが」と前置きをし、「8話(最終話)のラストシーンは、特にパンチの効いたシーンになっていると思います」と期待を持たせた。
また、シーズン2の制作が発表された「ムービング」シリーズとの差別化については「『ムービング』は特殊能力ヒーローものですが、本作はホラーやロマンス、スリラーなど、様々な要素が入っているので複合的な楽しみ方ができます。またもう少し感情に寄り添った作品なので、最後には胸を打たれると思います」とコメントした。
物語の中心となるミステリアスな照明店の店主ウォニョンを演じるチュ・ジフンは、「監督とカンフルさんと相談をし、サングラスをかけて表情が見えないようなビジュアルにしました。台本に忠実に演じようと思い、対面する人によって演技やトーンを変えたり、自分が台本を読んで感じたことが正しいのか随時確認しながら演じました」と役作りに言及。
大きな事故に遭って以来、生死の境目にいる人の姿が見えるようになった看護師のヨンジ役を演じたパク・ボヨンは、「特別な存在がみえる時の混乱など、彼女の感情を感じ取ればよかったので、大変ではありませんでした」とニコリ。今回が3度目の看護師役という話になると「実際に注射をすることはありませんが、注射の手順は覚えたので、自分が注射を打つときは、じっと針を見るようになりました」と話した。
■シン・ウンス、イ・ジョンウンに感謝「うちのお母さんは最高です」
親子役を演じたイ・ジョンウンとシン・ウンスは、実の親子のような仲の良さをアピール。イ・ジョンウンは「シン・ウンスさんは、今まで出会った娘役の中でも若い方ですが吸収が早く、実の娘のように大切にしたいという気持ちになりました」と語る。
「寒い時にはお互い抱き合うなどいい時間を過ごしたおかげで、キャラクターに合う演技が出来ました」と母心を見せると、シン・ウンスもイ・ジョンウンを「オンマ(お母さん)」と呼び「うちのお母さんは最高ですよ。撮影が始まる時や終わって休んでいる時、実のお母さんのように優しく気遣ってくださいました。(イ・ジョンウン)先輩の演技にリアクションするだけできちんとした演技になりました」と母親への愛情を明かした。
また、引っ越し先で不思議な現象に遭遇することになるシナリオライター・ソネ役のキム・ミンハは、「不思議なことに遭遇したときに感じる動物的な感覚を大事にしました。ソネのデリケートなところをどう表現すればいいのか考えました」と役作りに言及。
赤い靴を履いて路地裏を徘徊するヘウォン役のキム・ソンファは、「何かを探すために徘徊する強い女性です。路地裏以外にも現れる神出鬼没な役です」と役柄を紹介した。
スンウォン役のパク・ヒョックォンは、バスの運転手役を務めるにあたり、大型免許を取得したエピソードを披露。バスの運転手たちの御用達の食堂を使ったそうで、リアリティを追求するその姿にキャストたちから大拍手が沸き起こった。
バス停のベンチに座る謎の女性ジヨン役のソリョンは「原作を楽しく読んでいましたし、作品について(監督が)詳しく説明してくださったおかげで全ての場面がイメージできたので、新たな挑戦になると思い、やらせていただきました」と出演理由を語った。
■チュ・ジフン「“定時退社”で進めてくださった」、パク・ボヨン「いい現場でした」
本作演出を手掛けたのは、「ムービング」に出演した俳優キム・ヒウォン。カンフルの勧めで、本作で監督デビューを果たした。
「どうすれば新鮮に映るのか、世の中に受け入れてもらえるか、随分悩みました。ここにいるキャストの皆さんがいなければやり遂げられなかったと思います。気遣いのできる方々ばかりで、現場の雰囲気もとてもよかったです」と多幸感をにじませると、「全世界で視聴回数の一番高い作品になることを願っています」と期待を述べる。
そんなキム・ヒウォン監督にチュ・ジフンは、「“定時退社”など事前に約束をしたルール通りに進めてくださったので、演じる側としては、こんなに素晴らしい現場が他にあるかと思うほどでした」と評価。パク・ボヨンも「いい現場でした。監督の本職は俳優なので、自ら実際に演じてみて、動線が複雑だったり、動きながらセリフを言うのが大変そうだと思ったりすると、その場で修正してくださいました」と俳優ならではの演出に驚いた様子も。
「毎日(現場の)帰りに、『今日は大丈夫だった?』と電話をかけてきてくださる姿に、繊細な方だと思いました」とビハインドストーリーを話すと、隣に座っていたチュ・ジフンは、すかさず「僕には1本もなかったですよ?」と少し拗ねたような表情に。
さらにキム・ミンハが「のびのびやれと、やりたいことを思う存分できる環境を作ってくださいました。私も何本かメッセージや電話をいただきました(笑)秋から冬にかけて寒くなった時にも気を遣ってくださったので、家に帰る時に胸がいっぱいになって心が温かくなりました」と話し、オム・テグが周りに気を遣いながら「ぼくもいただきました」と話すと、イ・ジョンウンは「私は、自分から(電話を)かけましたよ?」とオチをつけ、会場が沸いた。
■「本当に長くて暗くて怖い」…路地裏セットにも注目
バス停でヒョンミン(オム・テグ)とジヨン(ソリョン)が出会うシーンをはじめ、原作漫画の場面をそのまま映像にしたかのようなシーンは、見どころの1つ。キム・ヒウォン監督は「私の基準では、どの場面もシンクロ率が高いと思います」と話したが、カンフルは「原作と俳優たちのプロポーションが違う。私が恥ずかしくなりました」と笑わせるひと幕も。
暗い路地裏の一角を明るく灯す照明店、という設定を具現化するための工夫も披露された。「リアリティとファンタジーの間のちょうどいいラインを見つけたいと思いました。町そのものを作るために町全体をデザインしたシミュレーションを作り、距離と動線を確認したりもしました」とキム・ヒウォン監督。
路地裏を歩くシーンが多かったシン・ウンスも「路地裏の入り口に立つと、本当に長くて暗くて怖い感じがしました」と語っており、リアリティのある「路地裏セット」にも注目だ。
記者との質疑応答では、ある疑惑が持ち上がった。ソリョン以外のキャストが、普段キム・ヒウォンの懇意にしている俳優たちということで、“キム・ヒウォンカルテル”ではないかという指摘があったのだ。それには俳優たちも大笑い。
キム・ヒウォン監督は焦ったように「私が実力者の様ですが……。皆さんもご存じの通り、ここにいる皆さんは本当に演技が上手いんです。カルテルではなく、演技の実力で自然にこの皆さんに頼むことになりました」と、あくまで実力で判断したと強調。
「どんな作品になっているか」という質問には、キャストの7人が回答。「最初から最後まで一気見をしてほしくないです。感情が沸き上がったら、一時停止して感情を落ち着かせてほしいですし、そうならざるを得ない作品です」(パク・ヒョックォン)、「今回はこの人物をメインで観よう、と何度も繰り返して観たくなる作品です」(キム・ソンファ)、「たくさんの方にご覧いただきたいですし、作品を観て、大切な人、恋しい人に連絡しようと思っていただけたらうれしいです」(キム・ミンハ)、「この作品を観て、(両親が)そばにいる時、優しくしようと思いました。みなさんが自分の両親に連絡をするきっかけになるといいと思います」(シン・ウンス)、「老若男女が楽しめる感動のある作品だとおもっていただきたいです」(イ・ジョンウン)と、それぞれ感情が動かされる作品であることをアピール。
「おもしろい。その一言です」とチュ・ジフン、「どこに行っても本作の話が聞こえてくるような作品になったらいいなと思います。12月はこの作品の話題でいっぱいになってほしいです」とパク・ボヨンはコメント。
「僕が演じるヒョンミンとジヨンの相性が良かったので、二人の感情やどんでん返しがそのまま届いてほしいです」とオム・テグは語り、「本作には様々な愛の形が出てきます。ユニークなジャンルを通じて愛が届くと思うので、注目してほしいです」とソリョンと思いを述べた。
最後はステージの天井から垂れた6つの電球に9人が手を添えると暗転したステージに灯りがともり、幻想的な雰囲気に。ミステリアスでありながら温かなドラマに迷い込んだような演出で、1時間半の会見の幕が閉じた。
12月4日から第4話まで一挙配信になるやいなや、“「世にも奇妙な物語」みたい!”と日本でも話題の本作。まだストーリーの全容が見えてこない中、本日12月11日配信の第5話と第6話では、生と死の間をさまようキャラクターたちの物語が大きく動きだす。
「照明店の客人たち」はディズニープラス スターにて毎週水曜日2話ずつ独占配信中(全8話)。
(シネマカフェ編集部)