明らかに人手が足りていない職場では業務がまわらないだけでなく、人間関係もギスギスしてしまう。ITエンジニアの20代後半の女性は昨年、中途採用でSES会社の正社員として入社した。SESはクライアント企業にエンジニアの技術を提供するのが仕事で、顧客のもとに常駐することが多い。
女性も法人向けシステム開発のパートナー社員として客先に常駐し、「システムの導入支援、保守業務に従事」していた。しかし常駐先からの酷い扱いに耐えかね、約9か月でSES会社を退職したという。
「その客先では製品A・製品Bというシステムを扱っていました。まず初日に製品Aについてのマニュアルを渡され、業務のかたわら勉強して、教育係のプロパー社員が出す試験に合格すれば1人前として認められるという仕組みがありました。ただ、私が任されたのは製品Bについての業務でした」
女性は試験に向けて製品Aの勉強をしなくてはならなかったが、人手不足とトラブル続きで製品Bの業務量が膨大になり、なかなか手をつけられずにいたそうだ。(文:福岡ちはや)
「こっちはお金払って来てもらってるんだからちゃんとしてや!」
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女性は製品Bの担当として「早朝から日付が変わるギリギリまで」働いていた。そのうえ「周りのプロパー社員も全員、会議や打ち合わせでほとんど席におらず」という状況に置かれ、不明点の質問すらままならなかったという。「このままではまずい」と感じた女性は、「相談に乗ってほしい」と教育係のプロパー社員を頼ったが、
「え、じゃあいつ試験するん!」
「その相談って意味あるん?こっちはお金払って来てもらってるんだからちゃんとしてや!」
と金切り声で怒鳴られてしまった。そこまで言うなら、なぜ常駐先は女性の担当業務と試験内容を同じ製品で統一しないのか。助けを求めた女性は、ますます追い込まれてしまった。
「それ以降、社内のチャットで教育係から『私たちがかけたお金と時間を無駄にするようなことはやめましょう。あなたが試験に受からなかったら業務調整せなあかんから、みんなに迷惑がかかる』など送られてくるようになり、とてもつらかったです。今思うとその教育係も、人手が足りなくていつも遅くまで残業していたので、イライラしていたのだと思います」
「今の職場のありがたみに心の底から感謝しています」
業務の忙しさと相談相手がいないストレスから、最終的に女性は胃腸炎になってしまったそうだ。やむを得ずSES会社の担当者に相談すると、「それはひどい」と客先の課長に掛け合ってくれたが、当の課長は女性とすれ違っても目をそらして会釈をするだけだった。女性は
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「あ、課長はこの状況を改善する気はないんだ。私はこの客先から大事にされてないな」
と心の底から感じたという。そこで、「雇い元のSES会社にすぐに別の常駐先を用意してもらえるわけではないので、入社9ヶ月でしたが退職し、一からやり直すことに決めました」と、そもそもの雇用主から離れる決断をした。
「今は別の会社に転職し、心穏やかに働いています。私と同じ中途入社の社員がほとんどなので『何か悩みはない?』と気にしてくださり、とても働きやすいです。前の職場での経験はつらいものでしたが、そのぶん今の職場のありがたみに心の底から感謝しています」
職場で大切にされていないと感じたら、さっさと転職したほうがうまくいくのかもしれない。
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