N/S高研究部(KdEi研)に所属する横井杏樹さん(高1)と、N/S高研究部アドバイザーで東京理科大学に所属する川村花道さんによる共著論文「Cyclic sum formula for certain parametrized multiple zeta values」は、数学の「多重ゼータ値」に関する未解決問題を解決したという研究報告である。
多重ゼータ値とは、与えられた自然数の組k=(k1,……,kr)に対して、次の画像の無限級数(項の数が無限にある数列を足し合わせた値)で定まる実数を指す。1990年代ころから現在まで、数学者たちの注目を集め続け、日夜研究が進んでいる分野である。
まず背景として、2006年に数学者の大野泰生さんと若林徳子さんが多重ゼータ値に関する面白い性質を発見した。彼らは、これらの値をある特定の方法で足し合わせると、より単純な形で表せるという「巡回和公式」を示した。
その後、数学者の五十嵐正弘さんがこの研究をさらに発展させた。元の公式にパラメータを1つ、さらに2つと加えていき、より一般的な形の公式を作ることに成功。これは、元の公式を特別な場合として含む、より広い範囲で成り立つ公式である。
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今回の論文の著者である横井さんと川村さんは、五十嵐さんの研究をさらに一歩進めた。五十嵐さんが「3つのパラメータを持つ場合はどうなるだろうか」という問題を提起していたのに対し、特定の条件下でその答えを見つけることに成功したのである。
具体的には、α、β、γという3つのパラメータを導入し、これらを使って新しい数式を定義。この新しい式に対しても、巡回和公式に似た性質が成り立つことを証明した。さらに、この新しい公式は、パラメータを特別な値に設定すると、五十嵐さんが見つけた公式と一致することも確認できた。
Source and Image Credits: Hanamichi Kawamura, Anju Yokoi. Cyclic sum formula for certain parametrized multiple zeta values.
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2
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