【写真】有村架純&坂口健太郎の美しきソロショット
■誰もが共感できる物語ではないからこそ
――脚本を読んだ時はいかがでしたか?
有村架純(以下、有村):誰もが共感できる物語では決してないと思います。でも、一説では、リアルに体験されてる方もいらっしゃるということで、完全なフィクションではないというか、リアリティーを持たせながら演じていかなければいけないなと思いました。
ただ、成瀬さんには奥さんがいるので、普通に演じてしまうと不倫の物語と見られてしまいかねないのがちょっと怖いなと。愛されたこと、愛したことの記憶って永遠に残り続けるし、そういったことの純度を高くして演じ切ることが大切になるだろうなと思いました。
坂口健太郎(以下、坂口):今、架純ちゃんも言ってくれた通りなんですけど、僕は最初に台本を読んで、プロデューサーの方とお話をした時、「めちゃくちゃ難しいことをやろうとしているんだな」と思いました。日頃からラブストーリーの難しさを感じていて、多くの人が経験したことがあることを共感を持った状態で見てもらうのって、すごく難易度が高いことだと思うんです。本作では、成瀬に移植された心臓が雄介の記憶を持っていて、さえ子にどこかひかれてしまう…。さらに成瀬自身「なんでこんなことが起きるんだろう」ということの繰り返しで、何が正解なのかが分からないという難しさも加わりました。だからこそ、すごく細かく話し合いながら作っていきました。
有村:実は台本をいただいた時点ではタイトルが決まっていなくて「みんなでどういうタイトルがいいか」を考えたんです。その時に岡田(惠和)さんが「さよならのつづき」という言葉を出してくださって、すごくしっくりきました。
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有村:ちょっと途中、大喜利みたいになってましたよね(笑)。
――かなり初期の段階から作品に携わっていたのですね。普段からそういうことは多いのでしょうか?
有村:そこのバランス感はすごく難しいんですよね。踏み込みすぎると良くない時もあれば、みんなで話し合うのがクリーンな時もある。今回は、Netflixの制作サイドさん側から「どうですか?」と聞いてくださったので、とても考えを言いやすい環境で携わることができました。作品を作っていくことで自分自身も同じ熱量をもって取り組むことができるから、プラスでしかないのかなと思いました。
坂口:僕は、いつからか脚本に対してしゃべるようになっていました。もちろんある程度、番手がしっかりした役をやると聞いてくれるというのもあるからなんですけど。でも、昔は与えられたものを100%やるっていうことがすごく大事だと思っていて、気が付いたらそこにプラスして自分に責任が出てくる立場にもなってきて、自分のニュアンスだったり考えがちょっとでも反映されるようになっていった気がしています。
――お二人の役柄は表現するのが非常に難しいキャラクターのように思えました。役作りの際、意識したことや苦労したことはありますか?
有村:今回は、今まであまり挑戦してこなかったような表現方法ができたらいいなと思いました。具体的に言うと、物語に登場する人物が、どこか日本人らしくないような海外に住んでる方のような身振り手振りをして表現する感じ。その範囲がいつもより広めな感じが魅力的なのかなと。いろいろトライしてみて、ちょっとやりすぎたかなとか、ここは引こうかなとか考えながら、喜怒哀楽を表現することに挑戦したんです。
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――お互いから見て、坂口さんが演じられたからこその成瀬の魅力と、有村さんが演じられたからこそのさえ子の魅力を教えてください。
■二人が考える“ラブストーリーの意義”は?
有村:坂口さんって声色が柔らかいじゃないですか。だから圧がなく、成瀬さんを演じる上での空気みたいなものが、すーっと体になじんでいっていて、生田さんが演じられた雄介とはまた別の柔軟剤のような存在になってたのかなと思いました。
坂口:さえ子っていろんな側面があると思うのですが、どこかにちゃんと芯があって、でも柔軟性もある…。それは架純ちゃんがいろんな役を演じられてきたからこそできたことなのかなと感じました。
――先ほど、坂口さんがラブストーリーは難しいと言っていたことが印象的でした。それはなぜですか?
坂口:100人見たらきっと100人が経験してきた愛の持ち方があるだろうなって思うからです。そういう意味では、すごく怖い男の人の役や、サイコパシーを感じる役を演じる時の方が、経験してないからこそ、ちょっと飛ばして演じてみることができちゃうんですけど、ラブストーリーはそれができないんですよね。
――有村さんは、昨今ラブストーリーでつらい目に遭う役が続いていますが、そこで意識されていることはありますか?
有村:描かれていない部分の方が多いので、どの役も余白の部分を想像して、シーンとシーンをつなげていくという作業を一番重要視しています。その中で、どうしても「ん?」って思うことがあれば、監督やプロデューサーさんに相談ベースで話をして、答えを導いていただいたり、新たな折衷案を一緒に考えていただいたりしています。自分の中で腑(ふ)に落ちれば、そのセリフをそのまま言うこともありますが、できるだけ、どんな役に対しても柔軟に話し合って作品に取り組むようにしています。ラブストーリーに限らずですけど。
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坂口:やっぱり普遍的なものではあると思うし、言葉が通じなくても共通するものでもあると思います。国が違えば社会や法律が違うけれど、愛情は恋人同士という関係にとどまらず、共通認識として持っています。だからこそ、ラブストーリーはつむがれていくべきなのかなと思います。
あと僕自身、ラブストーリーというジャンルがとても好きです。台本を読む時にどこか愛情みたいなものが見える役にひかれてしまう。その愛の対象は、仕事でも、師弟関係みたいな関係でも、なんでもあると思うんですけど。
有村:私は愛情は、男女の関係だけでなく、家族や子どもといった人に触れた瞬間にそこに生まれるもので、人生全てがラブストーリーだと思っています。ラブストーリー以外のジャンルの作品にも、恋の要素があるのって、多くの人が共感できるポイントであり、感情移入できるからなのかなって。たしかに、ラブストーリーは難しいです。でも、相手を思うから怒ったり泣いたりするということは、改めて尊いことだなと思うので、これからも携わっていきたいです。
(取材・文:於ありさ 写真:松林満美)
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