2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。話の通じない「困った人」部門、迷惑行為の数々から第6位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月〜10月まで。初公開2024年7月29日 記事は取材時の状況) * * *
今回話をしてくれたのは、スーパー店員の佐藤司さん(仮名・43歳)。半年に一回くらいのペースで厄介な客に遭遇するという。ある日、佐藤さんがレジ対応をしていると、40代くらいの男性が来店したそうだ。
◆普通のサラリーマンのように見えたのだが…
「パリッとしたシャツを着た、一見すると普通のサラリーマンでした。でも目が据わった感じで……。『あ、この人やばいのかな』と思って、入店してきた時点で注意していました。その男性客がお会計をする際、『あれ、お金が足りないかも……』と財布のなかをゴソゴソと探し始めました。そして目を少し離した隙に、かごの中の商品を持ってそのまま逃げようとしたんです」
相手を逃すまいと、急いで相手の腕を掴んだという佐藤さん。
「慌てて相手の腕を掴みました。すると、少し爪あとがついてしまったんです。これに対し、相手は『お前!!何やってんだ!医者に行く!!』と爆ギレし、収拾がつかない状態に。腕を掴んだことは謝ったのですが、血が出ていたりアザになっているわけでもなく、明らかに怪我といえるレベルではないと思われました。しかし、『警察を呼べ!』といきり立っており……すったもんだの末、警察を呼ぶことになりました」
◆警察から事情聴取を受けるハメに
「警察官が到着するやいなや、男は興奮状態で捲し立てる始末。一方、僕は冷静に事情を説明するよう努めました。防犯カメラに映像も残っていて、こちらに非がないことは明らかだったので……」
話を聞き、警察官も男性客を宥めるモードになったそうだ。
「嫌だったのは『お前の電話番号と連絡先を教えろ』とにじり寄られたことです。絶対に付き纏われるだろうなと思ったので、『個人情報は教えられません。』と突っぱねて。あまりにも相手が憤慨していたため、警察官も私もどうしたらいいかわからなくなりました」
◆土下座を強要してきた相手に対して…
「だんだんと時間が過ぎていき、このままでは収拾がつかない雰囲気に。頭によぎったのは、明日以降も尾を引くのは面倒くさいなぁということです。一刻も早く解放されたい気持ちで。にっちもさっちもいかなさそうだったので、『どうすればいいんですか?』と率直に聞いてみたら、こう言われたんです。『お前がやったことを償うには土下座しかない!』と。その頃はちょうど半沢直樹のドラマが流行っていた時期でした(笑)」
なんと、男性客は佐藤さんに土下座を要求したという。
「普通の人は当然土下座に抵抗があると思います。でも私は『どっちが面倒くさくないか』を考えました。今土下座をしたら目の前のよくわからない人と縁が切れる。だったらそれでいいのではないか。ここで断ったら、この先面倒事が増えてしまい結果的に損なのではないか、と。
そういうわけで私は土下座をしようと思いました。すると、隣にいた警察官が『そんなことしちゃダメです!』と、ものすごい勢いで制止してくれて。『いや、私が土下座すれば済む話なので』と警察官を振り切るのが大変でした。さながらその場はコントのような状況です」
結局、佐藤さんが土下座したそうだ。
「謝罪後、『これでいいですか?』と男性客に言うと、『わかりました』と一言。要望が通ったことにより、相手は帰っていきました。自分の要望が通ったので、その部分では満足したんじゃないのかなと思います。それにしても、親身になって土下座を回避してくれようとした警察官の方には感謝しかありません(笑)」
男性客が帰っていき、佐藤さんはこの場で済んでよかったと胸を撫で下ろしたという。それにしても、男性客の目的は一体何だったのだろうか。
「日頃の憂さ晴らしをしたかったんじゃないですかね」となかば呆れた表情で佐藤さんは振り返る。彼の受け流し力はぜひ見習いたいものだ。小心者の自分がその場にいたら……と思うと、背筋が寒くなった。
<TEXT/おせりさん>
【おせりさん】
下北沢に住む32歳。趣味はポーカーとサウナ、ホラー映画鑑賞。広告代理店・制作会社を経てフリーランスのブロガー兼ライターに。婚活ブログ『アラサー女の婚活談義』と生きることをテーマにした『IKIRU.』を運営中。体験談の執筆を得意としている。X(旧Twitter):@IKIRUwithfun