大谷翔平の獲得後もドジャースがクラブハウスを重要視する理由 スタジアム1億ドル改修の責任者にインタビュー

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2024年12月16日 07:30  webスポルティーバ

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第2回/全4回:ドジャースタジアム大型改修の目的と背景

26年ぶりの世界一に輝いたロサンゼルス・ドジャースがこのオフ、1億ドル(150億円)の資金を投入して本拠地・ドジャースタジアムの改修を行なっている。

大谷翔平をはじめ一流の選手たちが求める最高の環境整備を行なうことが目的だが、メジャーでも屈指の高額年俸を誇るドジャースがなぜ、巨額の施設投資を行なうのか。

ドジャースタジアムの改修責任者、ジャネット・マリー・スミス氏に話を聞いた。

第1回〉〉〉ドジャースタジアム1億ドル改修に踏み切る背景と必要性

【12年ぶりのクラブハウス大型整備の理由】

 ドジャースタジアムの改修では、三塁ベース付近からファウルポールまで、スタンド側が深く掘り返されているのが確認できるが、なぜ、深く掘るのか。7月にドジャースの執行役員副社長で、球場のデザインや改築を担当するジャネット・マリー・スミス氏にインタビューをした。

 スミス氏は、1992年に開場したボルティモア・オリオールズのカムデンヤードでレトロクラシック調の球場デザインを手がけ、大きな注目を集めたデザイナーだ。これを機に、20世紀初頭を彷彿とさせる美しい懐古調の球場が全米各地で次々に誕生するきっかけを作った。その後、2002年からはボストンのフェンウェイ・パークの10年にわたる大規模リフォームを主導し、これも高い評価を受けた。そして2012年、ドジャースに招聘され、再び球場の改修プロジェクトに取り組んでいる。

 1962年に開場したドジャースタジアムはメジャーで3番目に古い。初仕事は2012年のオフでロッカールーム、ウエイトルーム、室内バッティングケージの改修を行なった。しかし、工事は決して簡単ではなかった。その理由は、ドジャースタジアムが平坦な土地ではなく、チャベス渓谷の谷間に建てられていたからである。

 スミス氏は、その理由を次のように説明する。

「12年前、『クラブハウスは1962年のままで止まっている、いいことではない』と、オーナーから注文を受けました。問題は球場の立地にあり、ホームから内野側は丘陵の斜面部分にあたり、固い岩に阻まれてクラブハウスを外側に拡張する方法が取れなかったんです。そのため、別のアイデアを実行に移しました。内野スタンドのフィールドレベルにある黄色いシートを取り外し、その下の地面を掘り下げることで、クラブハウスの床面積を倍増させることにしました。作業が終わったあと、その上に再びシートを戻し、元どおりにしました。

 オフシーズン中にすべてを完了させなければならず、ハラハラドキドキの作業でしたが、おかげでとても大きなクラブハウスができて、これで十分だと当時は思いました。

 しかしながらあれから12年たった今、それでも足りなくなった。もっとクラブハウスを広げる必要があり、また同じようにシートを取り外し、地下をさらに掘り下げ、床面積を広げることになると思います」

【最先端技術を駆使した最新鋭のクラブハウスづくり】

 筆者は1990年から取材でドジャースタジアムに通っていたので、95年入団の野茂英雄の頃の選手着替え用のロッカールームがどれだけ狭かったかはよく覚えている。記者会見場もなく、試合後の野茂はロッカールームの奥の物置のような部屋で会見をしていた。それが12年前のリフォームでロッカールームが広くなったが、それだけではない。

「クラブハウスは人によって定義が違うかもしれませんが、うちではロッカールームはクラブハウス全体の約20%。ほかに各種治療室、スプリントやスレッドトレーニング用のトラック、ウエイトルーム、カフェテリアやラウンジなどすべてを含めます」(スミス氏)

 だが、それが十分ではなくなった。スペースが足りなくなるのは、野球が年々進化し、必要とするものが増えていくからだ。室内ケージもAI打撃マシン/トラジェクトアークが置けるだけの奥行きが必要になる。

「ケージもひとつではなくふたつにという流れになっていますし、10年前であればナップルーム(仮眠室)は一部屋で十分でしたが、今では多くの選手がプライバシーを確保でき、リラックスできるスパ並みの環境が求められています。そもそもコーチなどスタッフの数も増えています」(スミス氏)

 最先端のクラブハウスを持つことは、チームの勝利にも直結する。ニューヨーク・ヤンキースのハル・スタインブレナーオーナーは2024年のシーズン中、チームの好成績に気をよくし、こんな話をしていた。

「私たちは今季クラブハウスに新技術を導入しました。レッドライトセラピー、インフラレッドサウナ、高気圧酸素チャンバーを選手たちは本当に気に入っていますし、ケガを減らすことにつながっています」

 レッドライトセラピー(赤色光療法)は、特定の波長の赤色光を皮膚や筋肉、関節に照射することで、細胞の修復や再生を促進し、痛みを軽減させ、炎症を抑える効果があると言われている。一方、インフラレッドサウナは、赤外線を使用して体内に直接熱を伝え、組織や筋肉を温めることで発汗を促進し、代謝を活性化させて体の機能を整える。高圧酸素療法室は、密閉された圧力の高い空間で純酸素を吸入する治療法で、組織修復を助け、創傷の治癒を加速させる。

 メジャーのトップチームは新しいテクノロジーを取り入れ、選手をサポートする設備でも競い合う。ドジャースは再拡張のクラブハウスでこのエリアでも優位に立とうとしている。

第3回(全4回)につづく

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