東日本大震災の津波で被害を受けたアマモなどの藻場を再生しようとする活動が、宮城県で広がっている。日本三景の一つとして知られる松島湾で再生に取り組む男性は「アマモは『海のゆりかご』。温暖化による水温上昇で枯れるものもあるが、今やれることを精いっぱいやっていきたい」と意気込む。
藻場は魚類の産卵場所や稚魚の隠れ家になるほか、近年は地球温暖化対策の一環で、二酸化炭素(CO2)を海藻などに吸収させる「ブルーカーボン」としても期待されている。
松島湾では、震災による津波で藻場が震災前の10分の1程度まで減少した。魚が捕れなくなることなどに危機感を持った釣り船業者や周辺住民が中心となり、2012年2月に「松島湾アマモ場再生会議」を設立。国や専門家と連携し再生に向けた活動に取り組んできた。
今年11月にも、アマモの種まきイベントを塩釜市で開催。ボランティアや水産関係の専門学校生ら約50人が参加した。ピンセットを使って、3ミリほどのアマモの種子を一つ一つ寒天で作られた粘土に貼り付け、完成した種付き粘土を水深約2メートルの湾岸付近の海底に投げ入れた。
「長く活動を続けるために次の世代を考えている」と語るのは、再生会議会長の桑原茂さん(71)。塩釜市内の小学校での特別授業で藻場再生の重要性を伝えているといい、「子どもたちが活動を理解してわれわれの跡を継いでくれれば」と期待する。
藻場再生を巡っては、気候変動による海水温の上昇などで藻場が枯れる「磯焼け」も大きな課題だ。県によると、衛星画像を解析した調査で15年度には約2050ヘクタールだった県内沿岸部の藻場面積が、19年度に約1100ヘクタールに半減していたことが分かった。
県は21年度に専門家や漁業者らでつくる「ブルーカーボン協議会」を設立し、藻場面積把握のための技術開発や、県民への広報活動などを始めた。今年度からは、資金面に課題がある活動団体に向け、ふるさと納税型のクラウドファンディングで寄付金を募る事業も実施している。
担当者は「社会的責任(CSR)の観点から、ブルーカーボンに取り組みたいという企業から問い合わせもある。企業と県内の活動団体をつなげ、今後も支援していきたい」と話した。
アマモの種をピンセットで取り出し、寒天で作られた粘土に貼り付けるボランティア=11月9日午前、宮城県塩釜市
イベントであいさつする「松島湾アマモ場再生会議」の桑原茂会長=11月9日午前、宮城県塩釜市