日本一TVに出るスーパー「アキダイ」が「ロピア」傘下に。買収を受け入れた理由を名物社長が語る――ニュース傑作選

1

2024年12月16日 09:11  日刊SPA!

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

秋葉弘道氏
2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。企業や業界の実態から2024年を振り返る「経済ニュース」部門、第6位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月〜10月まで。初公開2024年1月16日 記事は取材時の状況、ご注意ください) *  *  *

連日値上げラッシュが報じられるなか、小売りの雄・スーパーマーケットはいま地殻変動の真っただ中にある。近年は独身男性をターゲットにしたこだわり商品に力を入れる店舗も急増。もはや「スーパーは主婦の主戦場」という固定観念は破壊されつつあるのだ。そこで今回、男のオアシス化した業界の歩き方を指南する。

◆スーパーの「売り場」が大きな進化を遂げている

いま、スーパーマーケット界隈は激しい戦国時代を迎えている。「東」は昨年10月に銀座に進出し大きな話題となったオーケーから、「西」は天下無双の関西スーパー&イズミヤ&阪急オアシス連合まで、安さと品質を同時に兼ね備えた大型チェーンが、中小にM&Aを仕掛けるなど弱肉強食の国盗り合戦が繰り広げられているのだ。

これに比例するように、「売り場」も大きな進化を遂げている。埼玉県を中心に展開するヤオコーは、総菜コーナーにオープンキッチンを設置。“見える化”させて積極的に試食販売を行っているほか、東京・神奈川を拠点に存在感を発揮するリコスはサラダや総菜の量り売りを展開し幅広い層から支持を得ている。

「これまではスーパーの主なターゲットといえば主婦層でした。ですが、ここ数年は男性客も頻繁に利用するようになっています」

そう語るのは、年間テレビ出演本数300本を数えるスーパーマーケットチェ―ン「アキダイ」の名物社長・秋葉弘道氏だ。

「コロナを機にテレワークが増え、男性も家事を分担するのが当たり前になった。スーパー側も独身男性やタイパを求める人が増えたことで、利益率がよくオリジナリティも出せる総菜やピザなどに力を入れており、水面下では総菜会社を買収する動きも出てきています」

◆これまで何度もウチを「買いたい」という話はありました

実はアキダイも、業界再編の大波に呑み込まれようとしている。昨年10月、破竹の快進撃を続けるスーパー、ロピアから提案されたM&Aを受け入れたのだ。

「実はロピアとは別に、これまで何度もウチを『買いたい』という話はありました。この世界は仕入れがすべて。生産者や市場担当者との信頼関係がないと成り立たないので、アキダイが長年培ってきた信頼をM&Aで手に入れれば、それをテコに参入障壁を突破できると考えてのことでしょう。ただ、アキダイの未来を担う若い従業員のことを考えると、身売りするという決断には至りませんでした」

実際、秋葉社長が’22年に出版した自伝にも、「(買収提案は)すべてお断りしている」と書かれている。この間、どのような心境の変化があったのか。

「やはり、ロピアの社長(高木勇輔氏)に惚れ込んだというのが大きい。アキダイの屋号も残したうえで、『秋葉さんの好きにやってもらえますか』と言ってくれて……。何より、アキダイで育った若い世代のコたちが思う存分活躍する場所が確保されたというのが決め手になりました」

すでに秋葉社長は、アキダイの未来のビジョンも思い描いているという。

「抜群においしいのに後継ぎがいない生産者さんから受け継いだエノキやレンコンなど、いまはアキダイのPBも育てています。今後は1年に3店舗ずつ出して、3〜4年後には年商100億円を目指しているので、今後もアキダイを末永くよろしくお願いします」

秋葉社長の飽くなき挑戦はまだまだ続きそうだ。

◆男心をくすぐる戦略を立てるスーパーが増加

バカリズムやカズレーザーらがスーパー巡りを楽しんだり料理に奮闘するテレビ朝日系『家事ヤロウ!!!』が深夜枠からゴールデン帯に移ったのが象徴的だが、コロナ以降、自炊に目覚め自宅で家事をこなす男性は思いのほか多くなった。

「外で飲めなかった時期に『居酒屋デリ』の商品開発を進めたり、つくば市のカスミ『ブランデ』のようにバーを併設する店舗が出てくるなど、差別化を図るスーパーが増加。結果、選択肢が広がり男性客も取り込む形になっています」

こう語るのは『ダイヤモンド チェーンストア』編集長の阿部幸治氏だ。当然、スーパーに求められる顧客のニーズも少しずつ変容しているという。

「“多少値が張っても高品質のもの”を重要視する層は増加の傾向にあります。弁当でいえば、“○○産” “油不使用”など、品質の良さやヘルシーさをアピールするワードがあると、高くても購買意欲をそそられます」

心を引きつけるのは、品質重視の品揃えだけではない。

「仕事帰りの最寄り駅から自宅までの動線上にある、深夜まで営業しているなど、生活スタイルの延長上にあるスーパーが望ましい。そこをうまく突いたのが最近勢力を伸ばしているイオン系の小型スーパー『まいばすけっと』。コンビニとスーパーが融合した形態で、男性客も多いです」

大型店のバラエティに富む商品ラインナップも魅力的だが、男心をくすぐる小規模スーパーが令和の主流となりつつあるようだ。

【アキダイ社長・秋葉弘道氏】
1968年、東京都生まれ。高校1年生のとき八百屋でアルバイトを始める。1992年にスーパーアキダイを創業し、現在は約200人の従業員を抱える。年間300本以上のテレビ取材にも応じる

【雑誌編集長・阿部幸治氏】
『ダイヤモンド チェーンストア』誌編集長。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。小売業に関する情報やニュースをSNSで発信

<取材・文/週刊SPA!編集部>

    ランキングトレンド

    前日のランキングへ

    ニュース設定