12月16日、読売ジャイアンツが田中将大投手(36、以下敬称略)の獲得に動いていることを『スポーツ報知』が報じた。東北楽天ゴールデンイーグルスを自由契約になってから約3週間、日米通算200勝を目前にしたレジェンドを拾ったのはやはり“球界の盟主”だった。
セ・リーグ優勝を果たしながらも日本シリーズ出場を逃した巨人は、チームを牽引したベテラン・菅野智之投手(35)がメジャー挑戦を表明(日本時間17日にボルチモア・オリオールズと契約合意)したことで、その穴を埋めるべくマー君に白羽の矢を立てた格好。しかし、実情は別のところにありそうだ。
「FA宣言した選手を含めて補強を進めていく方針は了承しています。こちらがお声がけした選手に関しては、ぜひ来ていただきたいと思っています」
11月20日に開催されたNPB12球団のオーナー会議で、FA争奪戦への参戦を高々に声を上げたのは巨人・山口寿一オーナー(67)。ところが、蓋を開けてみれば大山悠輔内野手(29)は阪神タイガース残留。
元福岡ソフトバンクホークの石川柊太投手(32)も千葉ロッテマリーンズへの移籍が決まり、さらにメジャーリーグからの球界復帰を模索していた上沢直之投手(30、元日本ハムファイターズ)もソフトバンク入りが伝えられた。
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甲斐獲得なら捕手は飽和状態に
12月17日になって、ようやく巨人入りが伝えられたのが甲斐拓也捕手(32)。『WBC2023』でもマスクを被った日本を代表する捕手ではあるが、巨人には小林誠司(35)、大城卓三(31)、岸田行倫(28)のレギュラークラス3人の捕手がひしめく飽和状態。
ことごとく“ねらい”を外してきた末の甲斐獲得に、人的補償として若い選手を差し出してまで獲る必要があったのか、との疑問の声も聞こえる。かつてのFA争奪戦の“主役”として球界の中心にいた巨人だったが、どこか空回りな印象は否めない。
「潤沢な資金に物言わせてFA選手を根こそぎ引き入れたのは今や昔で、近年はすっかり“蚊帳の外”状態が続いていた巨人。今年も“本当に来てほしい選手”にはフラれてしまっただけに、“巨人軍の体裁を守りたい”思惑もあったのでしょう。ファンも納得するビッグネームの獲得に動いたとも考えられます」
今シーズンの登板はわずか1試合と戦力的としては未知数だが、移籍事情に詳しいスポーツライターが指摘するように“球界の盟主”としてのプライドか、なりふり構わずに田中将大獲得に動く必要があったというわけか。
それでも菅野の退団によって背番号「18」を用意することができ、さらには幼馴染の坂本勇人内野手(36)もいるだけに、チームにフィットするのに時間はかからないだろう。仮に復活劇を繰り広げれば儲け物で、200勝を達成すれば興業面でもプラスになる。なるほど巨人にはピッタリな補強に思える。
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巨人がFA選手から嫌われる理由
それにしてもなぜ、巨人はFA選手から敬遠されるようになったのか。「主な理由は3つ考えられます」とは前出のライターの弁。
「まずは巨人や阪神以外にも、ソフトバンクやオリックス、楽天やDeNAといった大型契約を用意できる資金豊富な球団が増えたこと。2024年の総額年俸でもソフトバンクが頭ひとつ、いや、ふたつ抜けていることから、マネーゲームになれば分が悪くなるのは当然です」
また2つ目の理由として、金銭面だけでなく「環境」や「働きやすさ」を重視する選手が増えている傾向にあるそう。たとえば移籍先が出身地が近い、かつての監督やコーチ、チームメイトが在籍しているなど、移籍先の人間関係も重要なファクターになっているようだ。
「期待するファンと比例するように“アンチ”も多い球団だけに、選手にかかるプレッシャーは相当なもの。また、これまでFA移籍によって厚い待遇で迎えられる反面、結果を残せなければあっさり見切られ、容赦無く切り捨てられた選手の“末路”を目の当たりにしてか、“外様”にはドライな球団というイメージも持たれるのかもしれません」(前出・ライター、以下同)
そして3つ目は、特に投手から敬遠される「物理的」な理由だとも。
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「本拠地の東京ドームが“ホームランが出やすい球場”、つまりは“ピッチャーにとって不利な球場”との認識を持つ選手もいると聞きます」
そもそも補強に動く必要があるのか
東京ドームのフェンスまでの距離は両翼100m、センターは122mと、実はもっともホームランが出にくいとされるバンテリンドームと比較しても差はほとんどない。ところがフェアゾーンの敷地面積を比較すると両ドームで594平米、畳にすると約360畳分の差がある。
「この面積は神宮球場や横浜スタジアムと大差ない広さで、つまり左中間と右中間が狭まっている東京ドームはやはりホームランが出やすい。もちろん年俸査定では勝ち負けなどの数字以外でも査定されますが、打ち取った当たりがスタンドインする。これほどピッチャーにとってガックリくる球場はないでしょう(苦笑)」
かつてはFAも含めて、4番打者をかき集めては東京ドームでホームランを量産した巨人。当時を知る子どもたちがプロ野球選手になった今、奇しくも敬遠される要因にもなっているのかもしれない。
「そもそも今年のスタメンを張ったのは、丸佳浩(35)を除いてほとんどが生え抜きの選手ばかり。長年の課題として取り組んできた育成が身を結んだところに、田中にしろ甲斐にしろ、わざわざベテランを獲得して若手の出場機会を奪うことはない。
あえて優勝チームのバランスを崩しに来ている阿部(慎之助、45)監督。策士である彼は自分のカラーを打ち出すべく、今後はトレードを含めた大改革に打って出るのかもしれないですね」
再び“球界の盟主”に返り咲くべく、巨人はなりふり構ってはいられないようだ。