ペットとして国内に持ち込まれた外来種が自然界で繁殖し、各地で被害が広がっているという話は聞いたことがないでしょうか。ミドリガメも1990年代半ばに年間100万匹も輸入され、飼育されていた個体が野外に放たれたことで、北海道から沖縄まで全都道府県に分布している外来種です。
漫画家の常喜寝太郎さんのX(旧Twitter)では、そんなミドリガメにまつわる話を「実際にある カメの保護の話」として紹介しています。同作はWEB漫画アプリ『マンガワン』(小学館)で連載中の『全部救ってやる』の中からエピソードを抜粋した作品です。
カメの保護活動をしているカメニキさんのところへ訪れ、ミドリガメを飼育している様子を見て回る主人公の久我。動物保護をおこなっているにも関わらず、カメニキさんのSNSアカウントには、ボランティアに否定的なコメントが寄せられている状況を目にします。原因はミドリガメが外来種だからです。
作中でも「父親の作るレンコンを食い荒らす」と子供がカメをいじめる1コマが描かれています。実際に、ミドリガメによるレンコンの新芽食害や農作物被害などが報告されており、ミドリガメの捕獲、駆除をおこなう自治体も増えているのが現状です。そんな現状が描かれた同作について、作者である常喜寝太郎さんに詳しく話を伺いました。
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−カメの保護活動エピソードは、何か体験や取材をもとに描かれたものなのでしょうか。
以前、骨董品屋で5000円で売られているスッポンを見つけて購入し、生息地を調べて自然に返してあげたのを目にしたことがきっかけで、カメを意識しはじめました。作中では、車にひかれそうなカメを主人公の久我が川へ逃すシーンがあります。この場面を描くにあたり、「そもそも外来種のカメを自然に放していいのか?」を調べたところ、外来種問題の深刻さに気づきました。
青森県でカメの保護活動をされている「カメのおうち」さんに取材させてもらい、エピソードを参考にさせていただきました。
−外来種のカメを保護することに対して賛否両論があると思いますが、常喜さんは同作をどのような視点で描かれたのでしょうか?
外来種が問題視されるのは、生態系を崩すからだと思います。そのため、メディアなどでは、「悪」として描かれることが多いですよね。でも、外来種のカメはそもそも人間が日本に連れ込んだものです。そして、ペットとして飼われてるカメのほとんどが外来種です。
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久我もそうですが、私自身、「命」として彼らを見たとき、人間とカメがお互いにとってどのように関わるべきかを考えました。ただ難しいのは、生き物を「命」として捉えない人との意見の違いです。その部分で相違が生まれることを感じています。
−カメ以外の動物の保護活動についても「全部救ってやる」では描いていますが、制作にあたって何かきっかけはあったのでしょうか?
知人の保護活動者が、保健所の話をしていたことが大きなきっかけです。当時高校生だった僕は猫を飼っていたこともあり、動物の裏側も知っておきたい気持ちはありましたが、「殺処分」という言葉のイメージが怖く、見ることを避けてきました。大人になった今、あの頃の自分と同じ気持ちの人が多いことを知り、勇気を出して描いてみようと思いました。
もう一つのきっかけは、別の保護活動者の方とのエピソードです。その方とカフェでお話してる最中に、突然その方が外に飛び出し、窓に張り付いていたカマキリを捕まえて林にリリースしてたのを見たことです。そのインパクトある行動を見た瞬間、「多くの人の興味を引く漫画が描けるかもしれない」と感じました。
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このミドリガメのエピソードの続きは、「全部救ってやる」で読むことができます。その他、飼育崩壊現場から犬や猫を救い出すエピソード、救った動物の里親を探すエピソードなど、興味深いストーリーが描かれています。ぜひマンガワンや発売中のコミックスなどで読んでみてはいかがでしょうか。
(海川 まこと/漫画収集家)
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