めっきり気温が下がり空気が乾燥し、乾燥による肌トラブルが気になる季節になった。乾燥対策のスキンケアコスメがしのぎを削る中、BCLカンパニーの『乾燥さん』シリーズが、ブランド誕生から3年にしてベストコスメを20冠受賞するなど、大きな躍進を遂げている。大手ブランドも参入しては撤退する、入れ替わり激しい中価格帯のスキンケアコスメの中で、『乾燥さん』シリーズはいかにして現在の地位を開拓してきたのだろうか、同社担当者に話を聞いた。
【写真】半顔メイクの結果がエグイ…「目の大きさ2倍」「加工かと思った」■”乾燥だけ”に特化した下地…意外となかった穴場を攻めて大ヒットに
現在、化粧水から保湿クリームまで、多くの商品ラインアップを持つ『乾燥さん』は、化粧下地からスタートしたブランドだ。最初に企画が立ち上がったのは2021年春。当時、毛穴崩れ防止や皮脂対策といった多機能型の下地やカラー下地が流行っていたものの、”乾燥だけ”に特化した下地は、他社を含めて作られていなかった。開発担当の齊藤久美子さんは、そこに活路を見い出したという。
「当時はコロナ禍で、マスクによる肌荒れが促進するなど、肌によくない環境がありました。私自身も乾燥が気になり乾燥対策の下地を選ぼうとしたけど、意外とないことに気づいたんです。そこで『保湿に特化した下地を作ろう』と思ったのがスタートでした。メイクしてマスクして外出すると、パリパリして肌が荒れるので、とにかく”日中の不快感をなくす”ことに振り切ったイメージでした」(スタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー 商品開発本部 副本部長 齊藤久美子さん/以下同)
2021年11月、第1弾として保湿特化の化粧下地『乾燥さん 保湿力スキンケア下地』を発売。「保湿の持続性が担保できれば、よりカバー力があった方がユーザー層も広がるだろう」との考えから、無色の下地に加え、カバー下地も発売された。
「カバー下地の開発は、正直難しかったです。肌色を補正、気になる部分をカバーすることを考えると、粉を入れなければなりません。質感が重たくなりますし、どうしても化粧くずれや乾燥を招きやすくなりますから。モニター調査などを行って、『ここまでならギリギリ保湿感を感じられる』というラインに落ち着きました」
■群雄割拠の中価格帯スキンケア、割り切ったコンセプトが新しさに
この保湿に特化した下地シリーズは発売されるや販売数200万本(保湿下地シリーズ累計)を超える大ヒット商品に。乾燥に悩んでいたユーザーから熱いコメントが寄せられた。齊藤さんは「売れて良かったというよりは、『やっぱりそうだよね。みんなそう思っていたよね』という感覚でした」と当時を振り返る。
下地を手にとってもらえたことで、”メイク中に保湿されている環境を作ること”、”日中の肌が乾燥しないこと”をユーザーに体感してもらうことができた。その上で、乾燥の根本を対策するために”スキンケアライン”を作る必要性も感じたという。
「乾燥している肌は、すべてのトラブルやエイジングの元にもなります。なので、大元の肌を改善していくケアをブランドとして持っていた方が、『乾燥さん』シリーズをもっと信頼してもらえますし、ブランドを通して『肌の乾燥がいろんなトラブルの原因になるなんだよ』と啓蒙できたらと思い、スキンケアにも着手するべきだと考えました。この頃、『乾燥がすべてのトラブルの原因である』とメインに謳っているブランドはありませんでした。『乾燥さん』はブランド名自体が特徴的で、“乾燥ケア”に特化するコンセプトの基盤がすでにできていました。だからこそ、中価格帯のスキンケアラインのなかでも“新しさ”を提案することができたのだと思います」
■「自分の肌が乾燥していることに、実感が伴わない」夏の期間が長くなることの弊害
こうしたアイテムから乾燥ケアの重要性を発信しているが、「肌トラブルが“乾燥”に起因することは、まだまだ伝えきれていない現状がある」と齊藤さん。春夏秋冬それぞれの季節で肌が乾燥する原因は様々ある。春は花粉、PM2.5による乾燥、夏は紫外線や冷房による乾燥、秋は夏に受けた肌ダメージの表面化、冬は湿度・気温が低くなることから乾燥しやすくなっている。特に昨今では“夏”の期間が長くなっていることも、乾燥の症状を強める要因になっている。
汗をかいたり、皮脂がたくさん分泌されたりすることで、肌自体は潤っているように見えても、実は乾燥している“インナードライ”の状態となり、夏〜秋の間に溜まったダメージが、今どっしりと押し寄せるケースも多い。「自分の肌が乾燥していることに、実感が伴わないんです。肌がベタついていると、乾燥しているとは思わないですよね。そうした”実感が伴わない乾燥”のケアも大切だと思います」。
次なるフェーズとして、こういったシーズンごとの悩みに特化した商品も発売を予定している。メイクの上からでもひと吹きして、花粉、PM2.5から肌を守る『水分バリアミスト』、乾燥肌の人のための顔・身体用のUVエッセンス『保湿力UVエッセンス』、乾燥によるシミ、肌荒れを防ぎ、肌の潤いを保つ『薬用水分力ブライトニングエッセンス[医薬部外品]』の3商品だ。
「花粉やUVなど外部環境によるものは乾燥を引き起こしやすいです。特に、UVエッセンスは、春以降の日焼けも気になり出す季節に必要なアイテムです。からだ用として塗れるものがほしいとユーザーさんから声があり、発売にいたりました」と話す齊藤さん。さらなる今後の展望としては「“乾燥さん”というキーワードが、スキンケア商品を選ぶ軸となるように商品ラインアップを充実させていきたい」と語る。
■スキンケアを“成分軸”で選ぶことに疲れも…「身近に感じられる親近感や遊び心も大切」
スキンケアラインを選ぶ軸は、人それぞれ異なる。近年ではSNSの発達から、「○○の成分がいい」という情報が拡散されたり、ユーザーがマニアックな保湿成分や美容成分まで熟知していたり、含有成分を比較検討してから購入することが前提となっている部分もある。
「今は“成分で選ぶ”に寄っているからこそ、商品を企画する時も成分名を強調する設計にせざるを得ません。でも私は一周まわって、ブランドのコンセプト自体に着目する流れがまた来るのではないかと考えています。そこまで選び抜くことに、疲れを感じている人も実際にいらっしゃるからです。もっと気軽に『コンセプトは、乾燥。スキンケア大変だけど頑張りましょうね』とコミュニケーションしていきたい」
ブランドの親しみやすさを伝えるという意味では、「乾燥さん」という思い切ったネーミングや、おなじみの「乾燥守子さん」のキャラクターの存在も大きいという。
「パッケージに必ず載乗せているキャラクターは、私たちと同様に肌悩みを抱える等身大のキャラクターで、『乾燥さん』というブランドを想起させることにも繋がっていると思います。信頼感や品質も満たしたうえで、身近に感じられる親近感や遊び心も大切かなと。今、世の中がそういうムードになってきていると感じますから」
文・水野幸則