千葉県知事の「水道料金の値上げ」発言が物議をかもしたが、島根県では4割もの値上げが予定されている。さらに2046年までに全国の水道事業者の96%に値上げが必要だというのだ!
11月21日、千葉県の熊谷俊人知事が県営水道の料金を、2026年度をめどに2割程度引き上げる方針を示し物議をかもしている。
ただ、2割という値上げ幅は、実は低いほうかもしれない。本誌の調査では、秋田県にかほ市は2024年6月に37%の値上げを実施。2025年4月には、島根県津和野町が40%、愛媛県松前町が35.2%、埼玉県戸田市33.7%の値上げを予定している。
なぜ、水道料金を値上げするのだろう。水道事業に詳しい近畿大学の浦上拓也教授に聞いた。
「値上げにはおもに2つの要因があり、第一は人口減少です。 水道事業は独立採算制で運営されています。つまり収入は水道料金しかありません。人口が減り水道利用者が減ると、料金収入が減って、水道施設の維持や技術者の確保にも事欠きます」(浦上教授、以下同)
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先述の島根県津和野町は、約20年で人口が3割以上減少。水道事業は赤字が続き、値上げに踏み切るしかなかったそう。同町の一般的な家庭の月額料金は3千300円から、2027年度には4千620円になる。最終的に月1千320円の値上げだ(月20立方L使用)。
「第二の要因は老朽化です。水道施設は、1950〜1980年代の高度経済成長期に急速に普及しました。水道管の法定耐用年数である40年を超えるものが増えています」
冒頭の千葉県では60〜80年使用というものも。老朽水道管は、全国の水道管の約22%にものぼる。いっぽう、更新された水道管は全国の0.64%にすぎない(2021年度、国土交通省)。このペースでは更新が追い付かず、漏水や水道管破裂などが頻発する恐れがある。
2024年1月の能登半島地震では多くの水道管が被害を受け、一時、最大約13万戸が断水した。
「老朽水道管は、自然災害に脆弱です。耐震性の高いものに更新する必要があります」
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高品質な水道管への更新に加え、人件費や材料費の高騰もある。更新コストは年々高まっている。
さらに、驚くべき推計が2024年4月に発表された。2046年までに値上げが必要なのは、全国の水道事業者の96%にのぼるというのだ。そのうえ、値上げ率は平均で48%。月20立方m使用する一般家庭の月額料金は、全国平均で2021年度の3千317円から、2046年には4千895円になるという。月1千500円以上の値上がりだ(EY Japanなど)。
水道料金の高騰が今後も続くことは避けられないようだが、2024年は過去最多となる32道府県の82事業者が値上げを実施したそう。なぜ、いまなのだろう。
「20〜30年間物価が上がり、水道の諸費用も上がっていますが、水道料金を上げない努力が続けられてきました。人員を削減し、設備の改修を先送りにして“安い水道”を守ってきたのです。
しかし、老朽水道管による事故も目立つようになり、いまや“待ったなし”だということ。また、水道料金の引き上げに理解が進んだことも後押しになっていると思います」
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40%の値上げに踏み切る島根県津和野町では、本来72%の値上げが必要だと報告されている。
「人口減少の激しい地域では、施設更新に必要な資金を少ない人口で支えねばならず、個人が負担するコストは増大するいっぽうです。
値上げをしても資金不足が解消されない場合が多く、今後さらなる値上げに踏み切らざるをえない水道事業者も出てくるでしょう」
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