多機能チェアを小売業者に自社が定めた価格で販売させていたとして、公正取引委員会は19日、家具卸最大手の「関家具」(福岡県大川市)に対し、独禁法違反(不公正な取引方法)で再発防止を求める排除措置命令を出した。小売業者が販売価格を決められないのは、独禁法が禁じる「再販売価格の拘束」に当たると判断した。
公取委によると、関家具は中国のメーカーとの間で、オフィスなどで使用される多機能チェア「エルゴヒューマン」の国内での独占販売契約を締結。2005年11月ごろから小売業者に販売していた。
関家具は遅くとも20年2月以降、エルゴヒューマンを扱う小売業者約800社から、商品のタイプ別に1脚当たり9万〜15万円程度の同社が決めた「参考売価」で販売するよう同意を得ていた。各業者には「他社も参考売価で販売してもらっている」と説明していたという。
同社はインターネット上で小売業者の販売価格を確認し、同意後も値引き販売をしていた少なくとも約20社に対しては、口頭で参考売価での販売を要請。従わなかった2社には出荷価格を引き上げる措置を取っていた。一連の違反行為は元常務が指示を出していたという。
関家具はエルゴヒューマンのブランド価値を守り、業者間のたたき売りを避ける狙いがあったとみられる。業者側も、新型コロナウイルス禍で需要も伸び、人気がある同チェアは関家具からしか仕入れられないため、設定された価格に従わざるを得なかったとされる。
ホームページによると、関家具は1968年創業。23年5月期の売上高は183億円に上る。同社は「命令を厳粛に受け止めて、今後は法令順守の徹底と再発防止に努め、信頼の回復に全力で取り組んでいく」とコメントした。