この一年の総決算となるグランプリ、GI有馬記念(中山・芝2500m)が12月22日に行なわれる。
昨年のレースを制したのは、2番人気のドウデュース。今年はこのドウデュース(牡5歳)がGI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)、GIジャパンカップ(11月24日/東京・芝2400m)と連勝を飾って、古馬・秋の三冠に王手をかけて堂々の1番人気で出走となる見込みだ(注:記事配信後、ドウデュースは出走取消)。
過去10年の1番人気の成績を振り返ってみると、5勝、2着1回、3着1回と、その信頼度は高い。そうした状況も踏まえて、デイリー馬三郎の木村拓人記者はこう語る。
「ここでは、ドウデュースの能力が少し抜けているのは間違いないですよね。適性はこの舞台ではないと思っていますが、昨年も勝っていますし、(この秋)ここまで走られてしまっては、逆らうのもなかなか難しいかと......」
とはいえ、過去には断然の1番人気だったアーモンドアイも馬群に沈んでいる(2019年)。また、古馬・秋の三冠を達成した馬となると、20年前(2004年)のゼンノロブロイまで遡らなければならない。万が一、は十分に起こり得る。木村記者もこんな見解を示す。
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「ドウデュースも死角がないわけではありません。適性舞台としては天皇賞・秋、展開的には昨年の有馬記念や前走のジャパンカップのような、(勝負どころから)馬なりでまくっていって、最後はドーン(と末脚を繰り出す)という競馬が合っています。
ですが、そういった展開にならず、勝負どころで(余分な)脚を使わされて......ということになれば、苦戦も十分に考えられます。それに、今回は内枠(1枠2番)を引きました。あまり歓迎ではないと思います」
木村記者は続けて、有馬記念において重要視すべきポイントを挙げる。
「有馬記念というのは、マイラーでも立ち回りの器用さがあって内枠を引けば、距離適性とか関係なく、結果を出すことができるレースです。ですから、ちょっとクサいなと思った馬が内枠を引いたら"買い"。逆に外枠なら"消し"というスタンスでいっていい一戦だと思っています。
枠順抽選が"ドラフト方式"だった2014年、最初に枠を選んだジェンティルドンナ(2枠4番)が1着、2番目に選んだトゥザワールド(3枠6番)が2着という結果になりました。結局、この"ドラフト方式"はこのとき1回で終わってしまいましたが、陣営も枠順が重要であることをしっかり認識している、ということですよね」
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そして今年、木村記者が狙いたいと思っている馬は2頭いるという。1頭目は、3枠5番を引いたベラジオオペラ(牡4歳)だ。
「3歳時のGI皐月賞(10着。中山・芝2000m)では大きく負けていますが、前哨戦のGIIスプリングS(中山・芝1800m)は中団から抜け出して快勝。古馬になってからもGI大阪杯(3月31日/阪神・芝2000m)で戴冠。自在性があって、中山や阪神のようなコースが合っている馬です。
GI宝塚記念(6月23日/京都・芝2200m)でも馬場が悪いなか、3着と好走。前走の天皇賞・秋は、この秋初戦ということもあって6着に敗れましたが、勝ち馬からコンマ4秒差。自身、1分57秒7というタイムで走っていますから、悲観する要素はまったくありません。
今回、これといった逃げ馬がいないなか、好枠発走から好位を奪ってスムーズに運ぶことができれば、チャンスは巡ってくるはず。距離2500mは適性より少し長いかもしれませんが、先にも触れたように器用に立ち回れるタイプであれば、何ら問題ありません。
おそらく距離面や前走の着順から人気の盲点になるでしょうが、穴をあけそうな気配がプンプン。積極的に狙っていきたい1頭です」
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木村記者が注目する2頭目は、前走でアメリカのGIブリーダーズカップターフ(11月2日/デルマー・芝2400m)に参戦し、クビ差の2着と好走したローシャムパーク(牡5歳)だ。
「前走は小回りコースで後手後手に回りながら、大外から勝ち馬をかわす勢いで伸びてきました。断然人気のレベルスロマンス(英国)相手にあそこまでやれるのは力があってこそ。
大阪杯でもベラジオオペラのクビ差2着。中山の芝2200mや2500mのようなトリッキーなコースはこの馬に合いそうです。序盤はじっくり構えて、最後に伸びてきそうな気がします。
そういう意味では、この馬はやることが決まっているので、枠順は不問。それでも、3枠6番という好枠に入って、自分のペースでのびのびと走れるようなら、楽しみが膨らみます」
多くのファンが注目するドリームレース。現役最強馬のドウデュースが有終の美を飾るのか。それとも、意外な馬の台頭があるのか。豪華メンバーがしのぎを削る白熱の一戦から目が離せない。