限定公開( 2 )
シャープが、2024年夏モデル「AQUOS R9」の進化形として「AQUOS R9 pro」を投入し、12月5日にNTTドコモが発売した。12月13日にはSIMフリーモデルとしてKDDIやIIJなど各社が発売した。
夏モデルから半年という短いインターバルでの新フラグシップモデル投入は異例だが、その個性的なデザインからして、これが単なるマイナーチェンジでないことは一目瞭然だ。実機を使う機会を得たのでレビューしたい。
●存在感のある円形カメラユニット ただし実用面では課題も
背面デザインはひと目で目を引く。マットな質感の黒を基調としながら、右側に配置された存在感のある円形カメラユニットが、このスマートフォンの個性を物語る。
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「VARIO-SUMMICRON」の刻印入りの円形カメラリングは、デジタルカメラのレンズを模したかのようなデザインだ。AQUOSとしては珍しく、横持ちを意識した背面デザインとなっており、横位置で構えたときの上下のメタルフレームの太さが異なる。
特にグリップ側となる上部は太めのフレームを採用しており、このアシンメトリーな処理が絶妙な緊張感を生み出している。スマートフォンでありながら、本格的なカメラとしてのたたずまいを感じさせる秀逸なデザインだ。
前面は6.7型の大画面ながら、画面端からサイドフレームまでの距離が上下左右とも3mm以下に収められており、端正な印象を与えている。プレミアムスマートフォンとしての品位を感じさせる。
ただし、この美しいデザインは実用面でいくつかの課題もはらむ。229gという重量に加え、大型のカメラユニットによって重心が片側に寄っているため、片手持ちでの安定感に難がある。
持ち方をいろいろ試してみたが、カメラユニットの縁を支点として持つと安定感に欠ける印象だ。レンズ部分に指が触れる持ち方が最も安定するが、レンズ部分への接触は避けたいところ。
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同じくライカとコラボレーションしている「Xiaomi 14 Ultra」では、カメラグリップとして機能する専用アダプターを用意している。AQUOS R9 proでもカメラ機能を重視するのであれば、こうした周辺機器の提供も検討の余地があったのではないだろうか。
美しさと実用性の両立は難しい課題だが、カメラフォンとしての完成度を高めるために、さらなる一手が欲しかったところだ。
●ライカ監修の3眼カメラを搭載 デジタルカメラのような操作性も光る
AQUOS R9 proのカメラについて、ITmedia Mobileでは別途詳細なレビューを掲載予定だ。ここではカメラのスペックについて軽く紹介し、いくつかの作例を示すにとどめる。
ライカの監修を続けており、背面カメラはカメラシステム全体で「バリオ・ズミクロン」というライカレンズの名称を冠している。AQUOS R9と比較すると、望遠カメラと14chスペクトルセンサーがproモデルのみの差分となる。
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カメラ機能へのこだわりは、本体右側面に配置された物理シャッターキーにも表れている。デジタルカメラで実際に使用されている部品を採用し、半押しでオートフォーカスをロックできる本格的な仕様だ。
シャッターキーの長押しでカメラアプリを素早く起動できる他、ボリュームキーでズーム操作も可能。スマートフォンでありながら、デジタルカメラさながらの本格的な操作性を実現している。
具体的な仕様としては、広角、超広角、望遠の3つのカメラを搭載し、いずれのカメラも約5030万画素のセンサーを採用している。
メインとなる広角カメラは、1/0.98型という大型センサーと光学式手ブレ補正付きのF1.8レンズを組み合わせることで、暗所でも明るく安定した撮影を実現する。
超広角カメラは122度という広い画角を生かした風景撮影に加え、被写体から2.5cmまで近づけるマクロ撮影も可能だ。望遠カメラは、光学2.8倍から最大20倍までのズーム撮影に対応する。
さらに、14chスペクトルセンサーを搭載することで、さまざまな照明環境下でも自然な色再現を実現している。
なお、本体発売に合わせて専用アクセサリーも用意される。カメラリングに装着できる専用アタッチメントを介して、市販のレンズフィルターを装着可能だ。NDフィルターやグラデーションフィルターなど、撮影者の意図に応じた表現の幅を広げられる。
また、ショルダーストラップ付きの純正ケースも用意され、カメラのように首から下げての撮影にも対応。これらのアクセサリーは、本機をカメラとして使いこなすためのこだわりを感じさせる。
●6.7型ディスプレイを搭載 映画やドラマの視聴体験が格段に向上
ディスプレイは6.7型へと大型化し、解像度もQuad HD+(1440×3120ピクセル)まで高精細化している。輝度はHDR視聴時に最大1000ニトまで到達し、晴天下でも視認性は申し分ない。
NetflixでいくつかのDolby Vision対応コンテンツを視聴してみたが、暗部から明部までの階調表現が特に優れていると感じた。暗いシーンでの細かなディテールまでしっかりと表現できており、映画やドラマの視聴体験は格段に向上している。
音響では、上部スピーカーBOXのフルメタル化による効果が際立つ。従来機種と比べて低音の厚みが増し、映像視聴時の立体感が向上している。「地面師たち」のような重厚な劇伴音楽が特徴的なドラマでは、低音の響きと空気感の違いが顕著に感じられた。大画面と相まって、スマートフォンとは思えないシアター体験を提供してくれる。
●Snapdragon 8s Gen 3でパフォーマンスも強化 AQUOSらしい実用機能も
プロセッサはAQUOS R9より一段階上のSnapdragon 8s Gen 3を搭載。12GBの潤沢なメインメモリに加え、内部ストレージも512GBへと倍増することで、高画質な写真や4K動画の撮影にも余裕で対応できる環境を整えた。
ただし、R9で搭載されていたmicroSDスロットは廃止されている。512GBという大容量ストレージの採用は、この変更を補う意図があるのだろう。
ベンチマークテストでの性能を見てみよう。Geekbench 6ではシングルコア性能が1954点、マルチコア性能が4884点を記録した。これはSnapdragon 8 Gen 2搭載のGalaxy S23シリーズと同等以上のスコアだ。
3DMarkのWild Life Extremeテストでは2996点(平均17.94FPS)という結果を示した。最新のSamsung Galaxy S24シリーズと比べると若干の差はあるものの、実用的なパフォーマンスは十分に確保できている。
生体認証は、従来のproシリーズ同様にQualcommの3D超音波式指紋センサーを採用している。20×30mmという広めの認識範囲と高速な認証が特徴のセンサーだが、初期設定では認証に失敗するケースが散見された。
ただし、何度か指紋を再登録することで正常に動作するようになり、その後は快適に利用できている。認証精度に不安を感じた場合は、指紋の再登録を試してみることをお勧めする。
「Payトリガー」と呼ばれる機能も搭載されており、指紋センサーを長押しすることで決済アプリなど任意のアプリを起動できる。起動までに若干の待機時間は必要だが、会計時にすぐアプリを呼び出せるのは便利だ。
日常的な使い勝手を向上させる工夫も見られる。例えば「テザリングオート」は、位置情報に基づいてテザリングのオン・オフを自動制御する機能だ。自宅や職場ではオフ、外出先では自動的にオンにするといった設定が可能で、ノートPCを持ち歩く際の通信環境をより手軽に整えられる。
●AI機能も強化 Googleのかこって検索やGemini、シャープ独自の電話アシスタントも
2024年のフラグシップスマホの例にもれず、AQUOS R9 proも最新のAI機能を搭載している。画面上の対象物を囲むだけで検索できる「かこって検索」は、商品やランドマークの特定に便利だ。
また、電源キーの長押しでGoogle Geminiにアクセスでき、画像を含む複雑な質問にも対応できる。これらのGoogle提供のAI機能は、日常的な情報収集やクリエイティブな作業をサポートしてくれる。
その中で、シャープ独自の機能である電話アシスタントは、特に実用性が高い。留守番電話の内容をAIが要約してくれるため、用件を素早く把握できる。
さらに、通話中の会話からキーワードを自動抽出してメモ化する機能も搭載。商談や約束事の記録に便利で、通話後にメモを見返すことで重要な情報を見逃さない。オンデバイスAIを活用しているため、プライバシーにも配慮されている。
シャープの看板機能である「エモパー」は、のんびりと時間や天気を教えてくれる。Googleカレンダーと連携しており、予定が近づくと声でお知らせしてくれるほか、旅行や出張の予定があれば目的地の天気予報も教えてくれる。「深呼吸してリラックスしましょう」と試験前に声をかけてくれるなど、独特の愛嬌も健在だ。
しかし、生成AIが急速に進化している現状を踏まえると、エモパーの進化はもっと進むはずだ。より高度な対話や実用的な提案ができるようになると機体したい。例えば、カレンダー上の会議予定から関連資料を自動で探してくれたり、健康管理データと連携して生活習慣の改善を提案したりといった、より積極的なアシスタント機能があれば、日常生活での活用の幅が広がるだろう。2025年以降のアップデートでの進化に期待したい。
●まとめ:AQUOS R9は明確な個性を持つフラグシップスマホだ
AQUOS R9 proは、明確な狙いを持って開発されたスーパーフラグシップモデルだ。多くのユーザーにとって、パフォーマンスとデザイン、価格のバランスが取れたAQUOS R9で十分な性能を得られるだろう。
実際、229gという重量や重心バランスは、R9と比較して日常的な使用感では劣る面もある。しかし、このスマートフォンが真価を発揮するのは、カメラを積極的に活用したいユーザーの手に渡ったときだ。物理シャッターキーやレンズフィルター対応など、カメラとしての使い勝手を徹底的に追求している。
大型の6.7型ディスプレイと強化された音響性能は、撮影した写真や動画の確認作業でも優れた体験を提供する。
同じくライカとのコラボレーションモデルであるXiaomi 14 Ultraという選択肢も存在するが、AQUOS R9 proはより日本市場に最適化されている。おサイフケータイへの対応や、ドコモ網の5G周波数帯への最適化など、グローバルモデルでは省略されがちな機能を確実に実装している点は、実用面での大きなアドバンテージとなる。
税込み19万円台前半という価格設定は決して安くないが、カメラ機能を重視し、アクティブに活用したいユーザーにとっては、その投資に見合う価値を提供できるモデルといえるだろう。
(製品協力:シャープ)
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