この時期の話題といえばFAですね。菅野智之投手もオリオールズへの移籍が決まりましたが、メジャーでは大物から順番に決まっていくのが常です。
ただ、メジャーに関しては、そのまま所属先が決まらないFA選手がいます。期限までに決まることもあれば、シーズンが始まっても決まらない選手も。なぜかといえば、FAという制度が日本とアメリカで根本的に異なることに起因しているのかもしれません。
日本の選手移籍は、海外に比べるとそこまで活発とは言えません。日本だとFAはチームの主力となる中堅選手が移籍するイメージですよね。「FA=大物の移籍」。そう認識されている方も多いかもしれません。成績と実績が重視され、それが積み上げられていない選手がFA宣言をすることは稀ですよね。
一方でメジャーでは、FAの考え方が違います。その根本には、「どんな選手もご自由にどうぞ」といった趣(おもむき)があるのです。転職が多い外資企業と、定年までひとつの会社に勤め上げる傾向が強い日本。そんなイメージでしょうか。では、なぜそこまでイメージが違うのでしょう。
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日本では合計8シーズンに達すると「国内FA」、9年で「海外FA」を取得できます。一方でメジャーでは、契約満了した選手、自由契約を選んだ選手、解雇された選手、アマチュア選手などすべてをFA選手と呼びます。そのため、市場には各球団が欲する人材が必ずいて、それゆえFA市場がとても活発になるのでしょう。FA権という概念はなく、まるごとFA選手としてくくられてしまう。日本ではほとんど見たことはありませんが、アメリカではチームに所属できないFA選手がたくさんいます。FA選手として練習を続け、チームから声が掛かるのを待ちます。
日米問わずFAはオフシーズンの話題の中心です。今年のメジャーのFA、目玉はヤンキースからメッツに移籍したフアン・ソト選手でした。ヤンキースとメッツが最後まで争っていたのですが、わずかな差でメッツが上回り、ソト選手本人も「いかにこのチームが優勝に飢えているかということが決め手になった」と話していました。
もちろんヤンキースも慰留に努めました。球団の顔となる選手には、いい契約を提示する。その結果、選手の年俸は高騰します。FAはアメリカンドリームを体現する近道なのかもしれません。
大物はもちろん、それ以外の選手も多く入れ替わるのがメジャーです。メジャーを常に見ている身からすると、選手が入れ替わるのがメジャーであり、刹那的だからこそ「この1年を戦うんだ」という気迫を感じるんですよね。
一方で、日本は頻繁な入れ替わりを想定していません。私が愛するヤクルト戦士が頻繁に移籍していたら、ちょっと寂しいような気もするんです。でも、これはきっと日本のプロ野球的感覚なんでしょう。
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FA権を取得しても、球団に忠誠を誓う選手もいます。先日は中村悠平捕手が「生涯ヤクルト宣言」をしました。ファンからしたら、これ以上うれしいことはないのですが、ある意味で「日本的だな」と思う方もいるかもしれません。
ファンとしてはうれしいけれど、選手がもっと自由に、よりよい環境を求めて移籍できる風土を作るのもひとつのありかたかな、と思います。ただ、FA宣言をせずに球団に残ることで、ずっとその球団でプレーしやすくなるといったメリットもあるのかもしれません。
さて、今年のFA戦線ですが、ヤクルトは元楽天の茂木栄五郎選手を獲得しました。FA選手をめったに獲得しないヤクルトの本気を感じると、やはりワクワクしますし期待せざるを得ません。
そして、FA選手を獲得するのは日米問わず、やはり球団の積極的な姿勢を感じます。補強に動いたという事実がファンだけではなく、選手にとってもライバルが増えることで意識が高まり、チームを活性化させます。
FA選手を獲得することでチームは活性化する。特に近年成績が低迷していたヤクルトには"カンフル剤"が必要でしたから、期待をしないほうが無理というもの。FA選手を獲得した各チームから目が離せませんね。
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それではまた来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作