自民、公明両党は20日、2025年度与党税制改正大綱を取りまとめ、中小企業に対し、生産性向上に向けた投資や、地域経済に波及する賃上げを促す姿勢を打ち出した。政府が目指す「成長型経済」への移行でけん引役を期待される中小企業に対し、法人税の軽減税率特例の延長や設備投資の税優遇追加で、支援を強化する。
大綱には明記されなかったが、次世代半導体の量産化支援のための税制措置についても、関連法案の通常国会への提出を踏まえ、調整を進める。
中小向けの投資促進は、「中小企業経営強化税制」の特例期限を26年度末まで2年延長するものの、対象要件を厳格化。その上で、売上高100億円超を目指し、売上高が年平均10%以上増える計画の企業への優遇を拡充。具体的には生産設備の導入に必要な建物を新設・増築する際、賃上げ率の計画に応じ税優遇を上乗せする。5%以上の賃上げなら、税額控除2%か特別償却25%を選べる。建物が設備投資の税優遇の対象になるのは異例。大型設備などへの大胆な投資につなげるのが狙いだ。
中小の軽減税率特例も、期限を26年度末まで2年延ばす。人手不足で「防衛的賃上げ」を余儀なくされる中小の状況などに配慮した。通常税率23.2%の法人税は、中小に19%の軽減税率を適用し、年間所得800万円以下の部分は特例で税率15%としている。
一方、これまで特例の対象だった約100万社のうち、0.2%(約2000社)に当たる所得10億円超の企業は軽減税率の特例を17%に引き上げる。大綱では今後の法人税の在り方について、「税率を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施する」としており、特例の対象見直しはメリハリ付けの試金石となる。
半導体産業を巡っては、先端半導体の国産化を目指すラピダス(東京)を念頭に、政府は公的出資などを可能とする法案整備を急いでいる。量産を進める上で多額の資本が必要になることから、負担増が見込まれる登録免許税への軽減措置など税制面での支援も検討している。