坂本花織の武器は爆速のスケーティング 全日本直前の逆境を乗り越えて積極的なトライが奏功

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2024年12月21日 14:00  webスポルティーバ

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【大会直前に胃腸炎でダウン】

 12月20日、大阪。フィギュアスケートの全日本選手権、女子シングルのショートプログラム(SP)では、4連覇を狙う坂本花織(24歳/シスメックス)が78.92点で首位に立った。トリプルアクセルを成功させ、台頭目覚ましい島田麻央を抑えた格好だ。

「全日本では、勝つつもりで。誰かに勝つよりも、自分に勝つ。欲張りに、全部いい方向へつなげていきたいなって」

 坂本は言うが、その思考に至る伏線はあった。

「(3位だった)GPファイナルは、連覇を目標にしなかった結果で、それが悔しくて。やっぱり、強気で挑んだほうがいい成績は残せているんですよね。これは、いろんな大会を経験して気づけたところもあって。だからこそ、今回はファイナルから全日本に向けた期間で、強気で勝ちにいくって思い返せました」

 攻めの姿勢に転じた女王は、氷上で圧倒的な風格を漂わせているーー。

「山あり谷あり」

 坂本は、GPファイナルから日本に帰ってきた当時を振り返る。実は全日本への道のりは平坦ではなかった。

「帰国後、胃腸炎になって完全にダウンしてしまって。筋力とか落ちた状態で、ゼロからのリスタートでした。夜練で復帰したんですが、全然踏ん張れなくて、1週間後(の全日本は)大丈夫かなって。力が出なくて......今までのように滑っているはずなのに、人の顔がはっきり見えてしまうくらい遅くて」

 坂本はピンチだったはずだが、はしゃぐように振り返る。その明るさが彼女の強さだろう。そして、災いを転じて福となした。

「必要な体幹やハムストリングを重点的に鍛えることによって、筋肉が働き出したなっていう実感がつかめてきました。それで今週は、だいぶ調子も上がってきて。逆に疲れを残さずに挑むことができたので、今のコンディションはファイナル前よりいいです!」

 逆境でこそ、真の女王は底力を見せる。

【強気の姿勢でつかんだ答え】

「6分間練習が終わっても緊張感があって......いまだに肩に力が入ってしまう感じはします」

 坂本は言うが、少なくとも全日本のSP前の6分間練習では風格すら漂っていた。真っ赤な衣装で、手袋まで赤。そこに金髪がなびき、何やら彼女そのものが福音のようだった。

 そして、冒頭のジャンプは雄大なダブルアクセルを完璧に着氷している。次に高難度の3回転ルッツも難なく成功。そして、3回転フリップ+3回転トーループのコンビネーションでも高得点を叩き出した。

「ひとつのジャンルだけではなくて、どんな曲でも滑れるように」

 坂本は以前から語っている。その順応性こそ、彼女の才能なのかもしれない。プログラムを自分のものにして、作品にできるのだ。

 最高速度27.4kmのスピードが、スケーティングを支える。その爆速があるからこそ、緩急も出せる。プログラムコンポーネンツは、37.26点と他を寄せ付けなかった。

「ファイナルまでは3・3(3回転フリップ+3回転トーループ)が不安だったんです。決まる時はあるけど、失敗のイメージがあって......それが跳べるコツを1週間でつかめて、練習成果が出てよかったなって思います!」

 つまり、劣勢に追い込まれる中で、新たな境地を見出したわけだ。

「フリップのコツっていうのが......左回りのカーブでいくんですけど、これで中に入ってしまうと、左の腰が回りすぎてバランスが取れなくなってしまうんです。流れに乗りすぎてしまうよりも、むしろ(対角線上に)逆らったほうがいけるなって。ファイナルから帰ってきてから練習で、それを実践していたら確率が上がってきたんです」

 坂本はそう説明したが、フリップひとつをとっても、積極的なトライが功を奏した。強気の姿勢が導き出した「答え」と言える。成功に対するイメージの強さだ。

「私は、どの試合でも勝っていきたいという気持ちが人一倍強いので。ファイナルは3位になってしまって......優勝を目指して取り組んで、自分に勝っていこうっていう気持ちが大事なんだなとあらためてわかりました。だから、全日本は強気でいきたいなって」

 彼女はそう繰り返す。戦いの覚悟は決まっている。女王は貪欲だ。

「(スコアが)自己ベストに近づいてきているのはうれしいですね。ただ、まだ取りこぼしているので、伸びしろがあると思うとやりがいがあります!」

 12月22日、フリー。坂本は最終滑走で4連覇に挑む。

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