リーグ・アン前半戦総括「日本人選手4人」の現状
南野拓実(モナコ)&オナイウ阿道(オセール)
4人の日本人がプレーする今シーズンのリーグ・アンも、年内の試合日程が終了した。
1試合消化の多い首位パリ・サンジェルマンと暫定3位のモナコを除き、各チームが15試合を戦った。ここまで日本人4選手はそれぞれどのようなパフォーマンスを見せ、どのような状況に置かれているのか。
今回は、モナコの南野拓実と、オセールのオナイウ阿道のふたりをクローズアップする。
まず、加入3年目を迎えた南野は、大活躍した昨シーズンにモナコで確固たる地位を築いたことで、今シーズンもチームの重要戦力としてプレーしている。その期待に応えるように、サンテティエンヌとの開幕戦ではチームの今シーズン初ゴールをマークし、それが決勝点となってチームの勝利に貢献するなど、幸先のいい滑り出しを見せた。
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ここまで16試合を消化したなか、南野はリーグ戦14試合に出場。そのうち11試合に先発して出場時間は967分を記録するほか、リバプール時代の2021−22シーズン以来の出場となったチャンピオンズリーグ(本戦)でも6試合のうち5試合に出場している(先発3試合、出場時間314分)。
その一方で、ゴールとアシストについては、昨シーズンよりもペースダウンしている。
ここまでリーグ戦では開幕戦の1ゴールにとどまり、アシストも第5節のル・アーヴル戦で記録したのみ。チャンピオンズリーグではリーグフェーズ第3節のツルヴェナ・ズヴェズダ(レッドスター・ベオグラード/セルビア)戦で2ゴール1アシストを記録してその節のベストイレブンに選出されたが、その試合以外ではゴールもアシストもない。
もっとも、それによってアディ・ヒュッター監督からの信頼が低下しているかと言えば、そんなことはない。たしかに数字の面だけを見れば物足りなさは否めないが、南野のパフォーマンス自体は上々で、実際、開幕から10月までは不動のレギュラーとしてリーグ戦とチャンピオンズリーグでフル稼働した。
【数字に表われない南野の貢献度】
ただ、誤算と言えるのが、リーグ戦、チャンピオンズリーグ、そして日本代表戦と、連戦と長距離移動によって、南野が疲弊してしまったことだった。
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今シーズンのモナコは、ヒュッター監督がハードスケジュールを乗りきるためにローテーション制を採用している。だが、序盤戦はアレクサンドル・ゴロヴィンの負傷欠場が続いたことで、前線の戦力で南野だけは休ませることができなかったという事情があった。
それにより、11月に入ると少しずつパフォーマンスが低下し、とりわけ代表ウィーク以降は負傷の影響もあって出場時間が減少。しかも、疲労蓄積によってフォームを崩したことで、昨シーズンに南野が活躍したバックボーンとも言えるプレーの正確性が失われ、シーズン序盤戦と比べると明らかにミスが目立つようになった。
その象徴とも言えるのが、第15節のスタッド・ランス戦だろう。その試合で3度のゴールチャンスを迎えた南野だったが、いずれもフィニッシュを決めきれず。トップフォームであれば確実に1、2点は決めていたはずの決定機を逃し、結局、チームも勝てた試合でゴールレスドローを演じることとなった。
もうひとつ、ゴールが減少した理由を挙げるとすれば、南野が昨シーズン途中からプレーの幅を広げ、ボックスの外でも重要な役割を担うようになった影響もある。
以前の南野は、ペナルティエリア内が主な仕事場だった。しかし現在は、ミドルゾーンから攻撃の起点となってチャンスメイクの部分で貢献するようになっていて、ペナルティエリア内でプレーする回数は減少している。
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もちろん、これは南野にとっても、チームにとってもポジティブな側面であり、サイドMFとしても南野がナチュラルに機能できるようになったポイントでもある。数字としては表われないが、それがあるからこそ、ヒュッター監督はフォームを崩しているとわかっていながら、南野を起用し続けている。
そういう意味では、現在の南野に必要とされているのは、しっかりと休養をとってフォームを取り戻すことになる。ここまでは、マグネス・アクリウシェとエリース・ベン・セギルの若手コンビが攻撃を牽引してきたが、これからも連戦が続く後半戦は、南野がトップフォームを取り戻せるかどうかが、チーム成績を大きく左右するはずだ。
【分岐点は不運なファウルでの一発退場】
対照的に、昇格組のオセールで2年目を迎えたオナイウ阿道は、一昨シーズンのトゥールーズ時代を再現するかのように、自身2度目のリーグ・アンで苦しんでいる。
昨シーズンはリーグ・ドゥで15ゴールを記録し、オナイウはチーム内得点王としてリーグ・アン昇格に貢献した。だが、今シーズンはここまで2ゴール。
ゴール数としてはそれほど悪くはないが、レギュラーとして活躍することを期待されていたにもかかわらず、現在は控えに甘んじているのが実情だ。しかも、チームは下馬評を覆す大躍進を見せ、15節を終えた時点で8位。オナイウは、そのなかで完全に乗り遅れた状況にある。
分岐点となったのは、開幕戦に続いて先発出場した第2節のナント戦で、不運とも言えるファウルで一発退場を喫したことだった。それにより、第3節でローン加入の新戦力ハメド・トラオレが代わりに先発すると、第5節からゴールを量産してここまで6ゴールを記録。チーム浮上の立役者となったことが、オナイウの立場を大きく変えた。
しかもその間に、クリストフ・ペリシエ監督は基本布陣を昨シーズンから採用していた4-2-3-1から3-4-2-1(5-4-1)に変更。FWの枚数が4人から3人減ったこともあり、オナイウは控えFWに格下げされてしまった格好だ。
それでも、リーグ戦ではここまで14試合に出場し、そのうち先発は5試合。出場時間は492分にとどまっているが、そのなかで途中出場した第5節のモンペリエ戦と第10節のレンヌ戦でゴールを記録するなど、それなりに爪痕を残すことはできている。
現状、前線のレギュラーは、1トップのラシヌ・シナヨコ、2シャドーのトラオレと10番のガエタン・ペランの3人。オナイウは後半途中から出場する4番手だ。
チーム内得点王のトラオレと、ここまで5得点を記録するペランのレギュラーは安泰と言える。しかし、シナヨコはまだオナイウと同じ2ゴールしか記録していない。数字だけを見れば、オナイウがつけ入る隙はまだ十分に残されている。
【オナイウのよさは発揮できていない】
そのためにも、オナイウがこれから解決しなければならない課題は、いかにして新システムにフィットできるかだ。
昨シーズンは4-2-3-1のウイング、もしくは1トップでプレーするなか、サイドからのクロスに点で合わせることでゴールを量産した。だが、現在のチームの攻撃は縦に速いカウンターがメインとなっており、オナイウがゴール前でクロスに合わせる機会が減少している。
第7節以来のスタメン出場となった第15節のRCランス戦でも、2シャドーの一角としてプレーしたオナイウにゴールチャンスは少なく、シュートも後半に入って55分に放った1本のみ。まだ新システムのなかで自分のよさを発揮する兆しは見えてこない。
今後、オナイウがスタメンを取り戻して昨シーズンのようにゴールを量産できるかどうかは、まずはこの問題を解決できるかどうかにかかっていると言っていいだろう。