皆さんは“ダンダダン黒人化問題”をご存じでしょうか? 「ダンダダン」は「少年ジャンプ+」で連載中の龍幸伸さんによる人気マンガで、現在放送しているアニメは配信などを通じて海外でも人気を博しています。しかし一枚のファンアートをきっかけに、海外で大論争が起きました。
ファンアート、いわゆる二次創作ですが、ある黒人女性がダンダダンの主人公であるオカルンとモモを黒人のように改変したファンアートをXに投稿しました。
さらに北米版ダンダダンのアニメでオカルンの声を当てている黒人声優が、このイラストをXのアイコン(アカウントの画像)に使い、歓迎する投稿をしました。この行動に批判が殺到し、彼はXのアカウントを閉じてしまいます。その後、この声優のものとみられるBlueskyのアカウントは、Xで批判してきた人たちを「レイシスト」と非難しました。
個人的には、今回のファンアート自体はそれほど問題ではないと思っています。ただ、個人の思想や主張のためにアニメや二次創作を利用したという点が人々の反感を買うのは理解できますし、ボクも好きではありません。
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またSNS上の議論を見ていると、原作やアニメの権利を軽視するような雰囲気を感じたのも残念でした。例えばアニメからキャプチャーした画像をトレースし、改変したものを自分の作品として販売する、といったことに抵抗を感じない人が海外にはけっこういる印象でした。
一方で、声優の方は仕事として携わっていながら、作品のイメージを毀損するような言動をしたり、ファンに喧嘩を売ったりと、その行動はボクたち日本人からしたら理解に苦しむかもしれません。そんな人もいるくらい、米国の人種問題は複雑で深刻なのかと想像するしかないです。
2020年ごろ、黒人男性が白人警官に理不尽に殺されたことをきっかけに、黒人差別に対する抗議運動「BLM(Black Lives Matter)運動」が起きました。その影響なのか、それまでの反動なのか分かりませんが、近年は映画やアニメなどのエンタメ業界で元々別の人種であったキャラクターに黒人を起用する、いわゆる「ブラックウォッシュ」が目立つようになりました。現在も様々な場面で物議を醸していて、今回の論争も根っこは同じに見えます。
もちろん、ほとんどの海外アニメファンは純粋に作品を楽しんでいて、一部声の大きな人たちが騒いでいるだけという見方もありますし、実際そうなのでしょう。それでも漫画家の端くれとしては、エンタメ業界が委縮して自由に表現できなかったり、見る人々がストレスを感じたりするような状況は残念です。
そしてなにより、ファンアートのような活動は、元の作品へのリスペクトを持って行ってほしいと感じました。
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●著者紹介:サダタロー
1998年にテレビ番組「トロイの木馬」出演をきっかけに漫画家デビュー。代表作は「ハダカ侍」(講談社、全6巻)、「ルパンチック」(双葉社、1巻)、「コミックくまモン」(朝日新聞出版、既刊7冊)など。現在、熊本日日新聞他で4コマ漫画「くまモン」を連載中。Pixivはsadataro、Twitterは@sadafrecce。
●連載:サダタローのゆるっと漫画劇場
漫画家のサダタローさんが、世界初の電脳編集者「リモたん」と一緒に話題のアレコレについてゆる〜く語るまんが連載。たぶん週末に掲載します。連載一覧はこちら。過去の連載はこちらからどうぞ。
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