東京女子大学女性学研究所は、1986年から女性史研究の優れた業績を表彰している。第39回目の「女性史青山なを賞」受賞作は、平井和子氏(一橋大学ジェンダー社会科学研究センター 客員研究員)の『占領下の女性たち ―日本と満洲の性暴力・性売買・「親密な交際」』(岩波書店)が選ばれた。
これまで、さまざまな切り口から女性たちを見つめた研究が表彰されてきた同賞。平井氏の受賞作は、オーラル・ヒストリーの手法を駆使し、敗戦と占領の状況下での女性たちの生きざまと生きのびる力を解き明かした優れた作品ということが評価された。
12月11日には東京女子大学女性学研究所で、東京女子大学の森本あんり学長から表彰状および副賞の贈呈が行われた。講評者として、国立歴史民俗博物館名誉教授・横山百合子氏、大阪公立大学名誉教授・田間泰子氏、そして、受賞作の第3章で「満洲」体験を語った北村栄美さんとその家族も参加した。
贈呈式後には、「不可視化から、ひっくりかえ史へ」と題した公開講演会が行われた。平井氏が女性史研究の道に進んだきっかけ、多くの当事者から戦争と性暴力について直接話を聞きながら考え続けた日々などが語られた。講演の最後には、新宿での「たちんぼう」や「現在のからゆきさん」を生み出しているのは、現代にも続いているジェンダーに基づく性搾取構造であることを忘れてはならないと締めくくった。講演後には、約120人の聴講者(オンラインでの参加者含む)からの質問や活発な意見交換が行われた。
◎東京女子大学女性学研究所「女性史青山なを賞」とは、女性史研究に先駆的業績を残した青山なを氏が遺贈した基金に基づき、1986年に創設された。日本語で著され出版された女性史研究の単行本(前年に公刊)を対象とし、学内外の選考委員による厳正な審査を経て、女性史研究の優れた業績に対して同賞を贈呈(副賞20万円)。詳細は東京女子大学女性学研究所ホームページ内。
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