日本にはないオプションや機能面を備える魅力的な海外スマホ。ネット通販や越境ECによって以前よりも入手のハードルが下がったが、依然として上級者向けの製品だ。今回は海外スマホを買うメリットとデメリット、合法的に使う方法をまとめた。
●海外スマホのメリット 一番はシャッター音を消せること
まずは海外でスマートフォンを買うメリットについてまとめてみよう。海外でスマートフォンを買うメリットの1つは、カメラでの写真撮影時にシャッター音が鳴らないことだ。
日本でも人気のiPhoneも、海外向け(韓国を除く)では、シャッター音が鳴らないよう設定できる。日本では販売されていない物理的なデュアルSIM仕様を求めるユーザーから、香港向けモデルが長年支持されており、高価でも輸入して使用する人もいる。一部店舗では並行輸入品として取り扱いがあるなど、人気を博している。
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iPhone以外でも、日本では販売されていない仕様の限定カラーや、大容量のストレージ容量を選ぶこともできる。もちろん、日本では販売されていない機種を選択できることも魅力の1つだ。
また、Galaxyなどの一部機種は海外版の方が日本よりも発売やソフトウェアアップデートの提供が早いこともあり、「早く最新機種を体験したい」という考えのユーザーにも好まれている。購入する地域によっては、免税などの理由によって日本よりも安価に購入することができる。海外旅行のついでにスマホを買うのも場合によってはアリなのだ。
●技適マークがなくても合法的に利用するには?
海外で購入したスマートフォンを日本で使うには、電波法が定める技術基準を満たす必要がある。技術基準適合証明を受けた端末には「技適マーク」が付与され、技適マークのない端末を国内で使用すると電波法違反になる。海外で販売されているスマートフォンのほとんどが技適マークなしだが、一部の機種では技適マークを表示できる場合がある。
例えば、台湾で販売されているシャープのAQUOSをはじめ、香港などで販売されているASUSのスマートフォンでも技適マークを表示できる。Xiaomi 14 Ultraのように「グローバル向けと同じ仕様で日本でも発売されている商品」は、一部技適マークが表示できる機種もある。ただ、これらに該当する機種はかなり少数だ。
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では、技適のないスマートフォンを日本で合法的に使うにはどうすればよいのだろうか。本来このようなスマートフォンを日本国内で利用するのは推奨できないのだが、違法にならない範囲で利用することはできる。
技適マークのないスマートフォンを合法的に使う手段として「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」がある。こちらは各種テストや実験を目的としたものであり、スマートフォンでは主にWi-Fiと Bluetooth、近距離無線通信に関して申請者が機器の仕様と海外の認証情報を確認し、簡単な申請を行うことで日本でも合法的に最大180日間利用できる制度だ。直近ではAppleのHMDである「Vision Pro」を輸入して使用する際に助けられたという声も見受けられた。
これ以外に海外で開通した携帯電話を日本国内で利用するにあたって、合法的に利用できる仕組みがある。電波法103条の6には、主に訪日した人に持ち込まれた携帯電話の扱いが明記されている。総務省のサイトには、海外から持ち込んだ携帯電話の国内における利用可否について、上記の電波法を踏まえ、下記のようなQ&Aが掲載されている。以下に引用する。
質問 他国から持ち込んだ携帯電話端末・BWA端末のうち、どのようなものが日本国内で使用してよいでしょうか。
回答 日本国内で利用される無線機器は日本の技術基準を満たしている必要があります。そのため、海外から持ち込んだ携帯電話端末・BWA端末を利用する場合は「技術基準適合マーク」が付されている必要があります。
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ただし、以下の場合は「技術基準適合マーク」が付されていない場合でも、使用することができます。
(1)日本国内の携帯電話事業者又はBWA事業者による国際ローミングサービスにより使用する場合。
(2)国際ローミング可能な端末において、海外から持ち込んだ者が日本国内の携帯電話事業者又はBWA事業者のSIMカードにより使用する場合。
つまり、日本人でも海外で購入、開設した無線機(携帯電話の場合は現地SIMを入れて通信したもの)を日本国内に持ち込んで利用する場合、他国の無線認証を確認でき、かつ国際ローミングが利用できる機種であれば問題ないと解釈できる。この解釈で認識の誤りがないことは、筆者が2023年に総務省に確認している。
ただし通販などで海外から取り寄せて、日本でアクティベートした技適のない海外スマホは、国内では使用できない。「海外で端末を購入し、現地のSIMで一度アクティベートする必要がある」ので注意したい。
このQ&Aでは(2)に当てはまる端末の場合、合法的に日本のキャリアのSIMカードを利用してモバイル通信を利用できる。昨今のスマートフォンであれば多くの機種で国際ローミングが利用できるので、問題なさそうだ。
この際にWi-FiとBluetoothについては別途電波法第4条第2項に記載があり、訪日から90日間は海外から持ち込まれたスマートフォンも技適取得端末相当として扱うことができる。いわゆる「90日ルール」と呼ばれるものであり、90日の期間が経過すると失効するため、注意が必要だ。
こちらも主に訪日外国人を対象にしたもので、電波環境を考慮しつつも90日間という期間の根拠の大部分は訪日外国人の「観光等を目的とした短期滞在期間」としている。
これらのルールに厳密に従うなら、仮にも3カ月(90日間)に1度海外に行き、当該端末を海外で使用して再度日本に持ち込んでしまえば、上述の103条の6と合わせて「技適のない携帯電話を合法的に利用できる状態」になる。海外でアクティベートする必要があるのと期間制限があるのでハードルは高いが、技適のないスマートフォンを合法的に使う方法は存在する。
●デメリットは保証面と日本での最適化不足 購入は自己責任で
続いて、海外でスマートフォン購入する際のデメリットも触れておこう。
大きなところでは保証面と言語の壁だ。基本的に海外で購入したスマートフォンは購入した国と地域の保証サービスとなる。そのため、日本での別途保証加入や修理サービスは対応できないことがほとんどだ。
仮に現地のサポートに修理などで持ち込むとしたら渡航費に加えて、翻訳アプリなどを使いながら応対するなどの心労も重なる。基本的に「保証はないもの」と考えた方がいい。
また、海外の端末は日本の通信環境に最適化されているとは限らない。日本向けの商品と比較して通信速度が出ない、通信が安定しないといったことが考えられる。通信バンドも日本では利用しにくい設定の機種もあるため、各社の対応バンドを把握しておく必要がある。
これはアプリにもいえる部分があり、動作確認の取れていない海外スマホでは国内向けのアプリは正常に動作しない可能性がある。中国で販売しているHuaweiのスマートフォンをはじめ、Googleサービスが利用できない機種もあるので、日本で快適に利用できるとはいいがたい。
一方で、以前に比べて海外ECサイトが直接日本まで発送できるようになり、フリマアプリで輸入代行を行う人もいる。翻訳アプリの精度向上やキャッシュレス決済の普及によって、以前に比べて現地購入とオンライン購入いずれも海外スマホを購入しやすい環境が整っている。
魅力的に映る機種も多くあるが、購入にあたっては法的な部分を確認し、各種デメリットや注意事項を確認した上で、自己責任で使用してほしい。
●著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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