残忍かつ凶悪な手口で世間を震撼させている「闇バイト」の数々。実行犯は若者ばかりと思いきや、自覚の有無にかかわらず中高年も手を染めている。その裏には、若者とは違う彼らならではのニーズがあった。
◆孤独な心を利用され、たどり着いてしまった「受け子」の仕事
高橋明さん(仮名・51歳)は親戚の家をたらい回しにされるような複雑な家庭環境に育ち、仕事も長続きせず、40代後半にはギャンブルで大きな借金を作ってしまった。
生活保護を受給していたため融資を受けられず、Xで「高額アルバイト募集」と掲げたアカウントに連絡を取ったのが闇バイトのきっかけだった。
DMを送ると身分証と親族の住所氏名の提示を求められ、すぐにテレグラムに誘導された。
請け負ったのは、オレオレ詐欺の電話を受けた老人の家に出向いてお金を受け取り、指定された駅のコインロッカーに入れる「受け子」という仕事。
騙し取った200万円のうち、報酬は経費を含めた20万円程度だった。
「指示された老人の家に赴く間も、罪悪感に耐えきれず、精神安定剤を大量に飲んで意識を混濁させていました」
◆「必要とされてる感覚がして嬉しかった」
一方で、闇バイトは高橋さんの“誇り”を多少なりとも取り戻してくれたという。
「こんなクズでも信頼してやり取りしてくれるのが嬉しかったし、孤独感をごまかすことができたんです」
ほかにも10件以上の案件を紹介されたが、指示役にやめたい旨を申し出ると「実家に火をつける」「こっちは足がつかないからお前だけ通報してやる」などと脅されたため家族に打ち明けて自首。
詐欺罪で2年3月の実刑判決を受け服役した。今年の春に出所したが、最近も闇バイトに加担しかけたという。
「4〜5年前と比べて、Xで窮状を呟くと勧誘が群がってくる速度が速く、手口も多様化しています。時には『一緒に闇バイトを撲滅しませんか?』という謎の誘いが来るんです。話を聞くとだんだん口調が荒くなったので、警察に相談して電話をかけてもらったところ、それも善意に見せかけた闇バイト勧誘でした」
取材・文/週刊SPA!編集部
―[中高年[闇バイト]の実態]―