【思わぬアクシデントに「やばい、落ち着け」】
今季、初出場のGPファイナルで2位に入った千葉百音(木下アカデミー)は、全日本選手権を前に「これまでの結果は関係ない。自分を過信せず、ほどよく信じて、今の自分ができる一番いい演技をしたいです」と冷静に話していた。
12月20日のショートプログラム(SP)は、スタートの位置を間違えそうになるアクシデントがあり、演技後に「自分で思っていたより緊張していたらしく、『やばい、落ち着け』って感じでした」と苦笑した千葉だが、伸びのある安定した滑りを見せた。
ノーミスで国際スケート連盟(ISU)公認の自己ベストを3点以上上回る74.72点を獲得。女王・坂本花織と、トリプルアクセルを投入した島田麻央に次ぐ3位に入った。
11月のNHK杯から4試合目というハードスケジュールで臨んだ全日本。千葉は「今季は2週間ごとの試合が4連続だけど、帰ってきて1週間で次の試合へ行くというパターンが自分なりにだんだんつかめるようになってきました」と前向きなコメントをしていた。
【坂本花織のように強いスケーティングを】
しかし、22日のフリーでは少しほころびが出てしまった。最初の3回転フリップ+3回転トーループは軽やかで安定感もあったが、「昔から苦手なジャンプ」という2本目の3回転サルコウは回転不足の判定で転倒した。
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その直後は立て直しながらも、終盤には疲れが出て、得点源である後半3本のジャンプがすべて回転不足の判定に。スピンとステップはオールレベル4と丁寧に演じたが、フリーの得点は130.97点で7位。合計も205.69点にとどまり、SP4位の樋口新葉に逆転されて総合4位という結果になった。
赤い目をしてミックスゾーン(取材エリア)に現れた千葉は、「泣かないと思っていたけど、テレビのインタビューで少し涙がこみ上げた」と言ってから、フリーの演技を次のように振り返った。
「公式練習でもけっこう足に疲労がたまっていて、曲かけ練習もあまりのびのびと滑ることができなかったです。それに比べると本番は滑れたほうではあったけど、スピードはまだ足りなかった。足腰の強さというか、どんな氷でも坂本選手のようにいつでもグライドの大きいスケーティングができないといけないと思いました。試合が続くなかで疲労を取りながら、強さも保たないといけないなと気がつきました
GPシリーズやGPファイナルはいい演技でいい結果を残してきたからこそ全日本のフリーのミスは心に響いて、率直に悔しい気持ちがすごく強かったです。でも、スケート靴を脱いだり着替えたりしている間に気持ちは次の試合に向かっている感じがしてきて。来季は絶対に4回転を入れてやるぞという気持ちも芽生えてきました。悔しさから得る強さも本当に大事だなと思いました」
【4回転も入れていかなければいけない】
全日本とほぼ同じ日程で開催されていたロシア選手権をニュースでチェックしていた千葉は、4回転への意識も高まったという。
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「(ロシア勢は)4回転をポンポン跳ぶ選手が出てくると思うので今は勝てる自信がないけど、1年後には日本代表として胸を張って、目標とする試合に出場する自信が常に備わってないといけないと思います。もちろんケガをしないように練習すること、他の3回転ジャンプを安定させることが本当に大事だけど、やっぱり4回転も入れていかなければいけないというのは強く感じました。
4回転を入れるからには、3回転も余裕のあるジャンプにすることが大事。着氷に耐えられる筋力ももっと鍛えていかないといけないです。今季のオフからトレーニングを見直したことで少し強くなったところはありますが、4回転を降りてプログラムに入れるためにはもっともっと強くなっていかなければと感じるので、明日から鍛え直します」
千葉は「もっと強くなりたい」という思いを胸に、次を見据える。