フリマアプリの「メルカリ」でウイスキーの空き瓶が数十万円の高値で出品されているとして話題を呼んでいる。なかには69万円(「マッカラン 1939年」)というかなり高額のものも見られるが、メルカリではドリンクの空瓶以外にも、セミの抜け殻、使用済みのコスメ、画面がバキバキに割れたiPhoneなど、一見すると誰が買うのか理解に苦しむ商品の出品も少なくない。こうした商品を購入する際に、気を付けるべき注意点などはあるのか。また、フリマアプリやECサイトでは、こうした“一見すると意味不明な商品”の出品は特に取り締まりがされないものなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
月間利用者数は2200万人以上、1秒間に売れる個数は7.9個におよび(2023年6月発表時点)、今や社会インフラのひとつといっても過言ではないメルカリ。創業12年目の今年は大きな転換点を迎えた。今年後半に入り、出品者が購入者からの返品要求に応じたところ、ゴミや安価な物を送りつけられたり、購入者からの返品要求にメルカリ事務局が一方的に応じて、購入者が返品をせずに出品者が物品を事実上盗まれてしまうという「返品詐欺」が問題化。被害を訴えるユーザーに対して事務局が一方的な返答を行い、ユーザーの説明を聞き入れないなどの対応に疑問が広まったことを受け、メルカリは11月、ユーザーへのサポート体制の強化や補償の拡大、不正利用者の排除に向けた施策に取り組むとの声明を発表するに至った。
そのメルカリをめぐって一部で話題となっているのが、ウイスキーの空き瓶が数多く高額で出品されていることだ。たとえばサントリー「山崎 25年」は40〜50万円台、「マッカラン 25年」は30万円台、「グレンリベット 34年」は20万円台、サントリー「響 21年」「白州 25年」は10万円台で出品されている。本数は1本のみのものから複数本まとめてのものまでさまざまで、箱付きのものもみられる。
「高額なお酒や希少性の高いお酒の瓶のコレクター向けでしょう。クラブやスナック、個人経営の飲食店などがグレードの低いお酒を中に入れて、瓶に貼られたラベルのものだと偽って販売するケースも考えられます。購入者の目的が明らかに違法性のある内容とはいえないので、運営元が取り締まることはないですし、法的にもその責任はないでしょう」(ネットサービス企業役員)
これ以外にもメルカリでは「いったい誰が買うのか」と疑問が感じられる出品は少なくない。例えば、以下のような事例がみられる。
・レトルトカレー(2袋) 999万9999円
・甲子園の土 1万1400円
・画面が割れて電源ケーブルをつないだ状態でしか使用できないアップル製スマートフォン「iPhone 6 Plus」 2999円
・「明治プロビオヨーグルトR-1 ドリンクタイプ」の空容器(10本) 400円
・セミの抜け殻(20個) 949円
・空の使用済みインクカートリッジ 1900円
・アイスクリーム「ハーゲンダッツ」の限定商品の容器のフタ 351円
・おがくず(10袋) 480円
・松ぼっくり(100個) 1150円
・トイレットペーパー芯(16本) 300円
|
|
このほか、時計やジュエリーの空箱、未開封の紙おむつ、新聞の号外、使用済み切手、つくりかけの手芸キットやアクセサリーキット、テレビやエアコンのリモコンなども多く出品されている。
「一定の販売数量が見込めず採算が取れないためメーカーが生産していなかったり、諸般の事情で一般の流通経路に乗せられないものであったり、大半の人にとってはゴミとなるものでも、欲しいと思う人は少ないながらも存在し、そういう需要を手軽に満たすことができるというのが、まさにフリマアプリの醍醐味であり存在意義といえるでしょう」(ネットサービス企業役員)
ECサイトでの出品代行やコンサルティングなどを行う株式会社ネットショップ総研の幅貴道氏はいう。
「メルカリに限らずフリマアプリやECサイトでは、牛乳瓶のフタなど、いわゆる“ネタ商品”が出品されることは珍しくなく、これは『もしかしたら売れるかもしれないので、とりあえず、なんでもいいから売ってみる』という人がいるためです。また、ロレックスの腕時計やシュプリームのパーカーなどのブランド品が定価より低い価格で出品されていますが、なかには偽の商品もあります。安い値付けを怪しいと感じながらも『身につけても周囲から偽物だとは気づかれないからいい』と考えて、あえて購入する人もいます。
今回のウイスキーの空瓶に関していえば、購入者の目的はインテリアへの活用、趣味のコレクションのため、飲食店が中に別の安いお酒を入れて売るため、中華系の業者が安いお酒を入れて定価より低い値段で売るため、といったことが考えられます」
|
|
ECサイトやフリマアプリなどで、このような商品を購入する際に気を付けるべき点などはあるのか。
「フリマアプリやECサイトのなかには、ブランド品やトレーディングカードなどの商品の真贋を見極めるサービスを有料で提供しているところもあるので、もし偽物をつかまされたくない場合は、購入を検討している商品について、そうしたサービスを利用するとよいでしょう」(幅氏)
メルカリでは
・電子チケットや電子クーポン
・偽ブランド品
・盗品など不正な経路で入手した商品
・犯罪や違法行為に使用される可能性が高いもの
・医薬品、医療機器
・許可なく製造した化粧品類や小分けした化粧品類
・法令に抵触するサプリメント類
・農薬、肥料
・現金、金券類、カード類
などは出品が禁止されている。また、法令上の取り扱いによりメルカリでの取引が困難と判断したものや、不適切と判断されるものも禁止されている。では、前述のような、一般的にはどのような目的で購入するのか分かりにくいものというのは、フリマアプリやECサイトでは取り締まりの対象にはならないのか。
「基本的には運営事業者側は個々のユーザーの購入目的までは把握しないので、取り締まりは行いません」(幅氏)
(文=Business Journal編集部、協力=幅貴道/ネットショップ総研)
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2024 Business Journal All Rights Reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。