プリキュア変身バンクのセリフを毎回収録する理由とは? いつもと違う「いっしょに遊ぼ♪」、わんぷり第45話で描かれた「相互理解」

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2024年12月26日 18:08  ねとらぼ

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ねとらぼ

わんだふるぷりきゅあ!

 プリキュアの変身シーンのセリフは、毎回収録しています。


【画像】お鶴さんと、老犬フクちゃん


 毎週同じセリフなのだから使い回せばよいじゃないか、と思う方もいるかと思いますが、それでも毎回収録するのです。


 「わんだふるぷりきゅあ!」第45話で、敵幹部トラメと「いっしょに遊ぶため」に変身した4人のプリキュア。その変身セリフの発声がいつもと少し違っていたことに気付いた人も多いと思います。なぜ、毎回変身シーンの声を収録するのか? その答えがそこにあるのです。


●第44、45話で描かれた「どうぶつの命」


 物語も終盤に入り、ますますの盛り上がりをみせる「わんだぷるぷりきゅあ!」。


 2024年12月8日放送の第44話「たくさんの幸せ」では、老犬の寿命を取り扱いました。老衰により虹の橋を渡っていった犬のフクちゃんとその飼い主、鶴さんの絆が描かれ、プリキュアが「ペットの寿命」に踏み込んだことで大きな反響となりました。


 翌週、15日放送の第45話「ずっとずっと友達」では、その「ペットとの悲しい別れ」に対し、どのように接すれば良いのかの「わんだふるぷりきゅあ!」なりの答えが提示されました。


 老犬フクちゃんを亡くしたお鶴さんは「ペットロスはとてもつらいけど友達が支えてくれるから大丈夫」と友達の大切さを語り、いろはの飼い犬・犬飼こむぎは「お天気悪くても、ケンカしても、悲しいことあっても、いっしょに遊べばわんだふる、だよね」と、一緒に遊ぶことの大切さを示唆します。


 そんなときに対峙(たいじ)した敵幹部トラメの「誰かといっしょにあそびたい」という思いを悟ったいろはちゃんは、トラメとも友達になろうとします。


●一緒に遊ぶために変身


 そして、4人のプリキュアは敵幹部トラメと「いっしょに遊ぶため」だけに変身したのです。


 これまでのプリキュアシリーズでは「大切な人を守るため」「世界の平和を守るため」「なりたい自分になるため」に変身してきました。


 そんな中、今作では「敵といっしょに遊んで、友達になるため」に変身したのです。


 そのアクションシーンは、ずっと追いかけっこを楽しむプリキュアとトラメの姿が描かれ、みんなニコニコ楽しんでいます。


 「いっしょに遊んで楽しかったら、もう友達だよ」というキュアフレンディ。


「戦い」による解決ではなく「いっしょに遊ぶこと」による相互理解という、「わんだふるぷりきゅあ!」を象徴するようなシーンとなったのです。


●毎回収録している「変身シーン」の声


 プリキュアの変身シーンのセリフは毎回収録しているといいます。


 これは「プリキュアが変身に至るまでの感情は毎回違うから」という理由からだそうです(このことはキュアハッピー役の福圓美里さんのインタビューなど、さまざまな媒体で言及されているので、古いプリキュアファンには周知のことかもしれませんね)。


 この第45話で「戦うため」でも「守るため」でもなく、ただ「いっしょに遊ぶため」に変身したシーンの4人のプリキュアのセリフは、これまで変身の声とは明らかにニュアンスが異なっていました。


 キュアワンダフル「いっしょに遊ぼ♪」 キュアフレンディ「あなたの声をきかせて」 キュアニャミー「仕方ない、構ってあげる」 キュアリリアン「こわくない、こわくない」


 それはトラメ個人に向けた、やさしく温かい言葉。


 一緒に遊ぶことにより、敵をもニコニコ笑顔にして友達になりたい。そんな感情のこもった4人の変身。まさに「わんだふるぷりきゅあ!」を象徴するかのような慈愛に満ちたそのセリフ。


 同じ言葉でも、言い方ひとつで子ども達に違う感情を伝える。


 プリキュア声優さん、ひいてはプロの声優さんの「表現の力」は本当にすごいのだな、とあらためて実感したのです。


 キュアニャミー役の声優・松田颯水さんも「いつもよりさらにあたたかい温度が伝わるように発声していました」とXでつぶやいています。


・お友達になれたばかりなのにと思わずにはいられないけど。登場人物みんなピュアで、こんなにあたたかい作品だからこそエターナルキズナシャワーが決め技なんやなぁ。変身バンクも決め技バンクも、いつもよりさらにあたたかい温度が伝わるように発声していました。(松田颯水さん)


●子どもたちを信頼し、表現から逃げない


 ペットを飼うことは、楽しいことだけではなく「死による別れ」を避けて通ることは出来ません。


 プリキュアは子ども向けアニメーションなのだから「ペットを飼うことの楽しさ」だけを伝えることもできるはずなのに、「ペットの死」を真正面から描いたことは、どうぶつを扱う子ども向け作品においてとても真摯な姿勢だと思います。


 「わんだふるぷりきゅあ!」は子どもたちを信頼し、表現から逃げません。


 「恋愛表現」からも逃げることなく真正面から描き、悟君といろはちゃんは恋人同士となりました。「彼氏として何か出来ることはないか」「付き合って初めてのクリスマス」など、これまでのプリキュアシリーズではなかった恋愛のセリフも描かれます。


 そしてペットを飼うことについても「陽」の部分だけではなく「陰」の部分も逃げずに描きます。


 「捨てられる犬や猫」「飼い主が高齢になりペットを手放さざるを得なくなること」「犬や猫の譲渡会の現状」「飼い主に恋人ができて関係性が変わっていくペット」「歩けなくなりおむつを着けた老犬」「人間とペットの寿命の差」「ペットの死」「一度ペットと死に別れると、もう悲しい思いをするのは嫌だから二度とペットは飼わない」。


 そういった表現から逃げることなく全て描ききったうえで、それでも「大切な存在が遠くにいってしまっても、あなたと過ごした楽しい思い出は“お互いに”残りつづけるから、だからこそ今いっしょに遊ぼう」ということを子どもたちに伝えるのです。


 「いっしょに遊ぼ♪」と1年間言い続けてきたキュアワンダフルのセリフが、この終盤にきてさらに深い意味を持つことになったその構成は本当にすごいと思います。


●わんぷり製作者の思い


 「わんだふるぷりきゅあ!」ABCアニメーションのプロデューサー・多田香奈子さんは番組の開始時に以下のようにコメントを出しています。


現実世界では、動物と人間は言葉を交わし合うことはできません。本作で語られるこむぎのセリフは、どこまでいっても想像の域を超えません。「犬はきっとこんなことを考えている」 これは人間のエゴなのかもと不安になることもあります。でも、言葉を交わせないからこそ、私達は動物の気持ちをとことんまで考える必要があるのではないでしょうか。大事なのは、相手のことを知ろうと努力すること。その先に、相手の幸せを願う「思いやり」が生まれるのだと思います。そして何より大事なのは、気持ちを押し付けず、理解し合うことです。


プロデューサー(ABCアニメーション)多田香奈子


 多田プロデューサーは「現実世界では人間と動物は言葉を交わすことは出来ず、犬はこんな事を考えているだろうと思うことは人間のエゴかもしれないとしつつも、それでも「言葉を交わせないからこそ、相手の気持ちを知ろうとする事が大切であり、理解しあうことが大事」と語っています。


 「わんだふるぷりきゅあ!」は、ペットを通して子どもたちに「相手を思いやる気持ちの大切さ」を伝えているのです。


●「いっしょに遊ぼ!」


 犬飼こむぎは言います。「お天気悪くても、ケンカしても、悲しいことあっても、いっしょに遊べばわんだふる、だよね」。


 犬飼いろはは言います。「いっしょに遊べば、それはもう友達だよ」。


 そして45話のサブタイトルは「ずっとずっと友達」です。


 虹の橋を渡っていった老犬フクちゃんも、お鶴さんと一緒に遊び、たくさんの思い出を作りました。


 人間をうらんでいたトラメも、プリキュアたちと一緒に遊んで友達になりました。


 「いっしょに遊べば、たとえあなたの大切な存在が目の前からいなくなってしまっても、ずっと、ずっと友達でいられるんだよ」。


 だからこそ「いっしょに遊ぼ♪」とキュアワンダフルは子どもたちに言い続けているのではないのかな、と僕は思うのです。


 子どもたちとずっと友達でいるために。子どもたちの笑顔のために。


(C)ABC-A・東映アニメーション


●著者:kasumi プロフィール


プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。



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  • コレは気づかなかった。毎週見てるわけじゃないからなぁ…。
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