「少しうまくいき過ぎている……」と不安になることがある

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2024年12月27日 07:11  @IT

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32歳になりました!

 国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。今回もUiPathカナダで「Generative AI Solutions Architect」として働く隈元大樹さんにお話を伺う。


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 ホームステイで世界と出会い、ワーキングホリデーで「いつかは世界で」と心を固めた隈元さん。だが新卒で入社した会社での海外との接点は、中国の同僚とたまに英語で会話する程度だった。彼は、なぜカナダに移住することになったのか。常に周囲に感謝し続ける彼は、自分のことを「幸運」だと分析するが――。


 聞き手は、AppleやDisneyなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。


●コロナ禍で妻の母国カナダに移り、グローバルなチームへ


阿部川“Go”久広(以降、阿部川) その後、どのようなきっかけでUiPathに転職したのですか?


隈元大樹(以下、隈元さん) ワークスアプリケーションズに入って2年目ぐらいに、ひょんなことからUiPathのことを知りました。当時はRPA(ロボティックプロセスオートメーション)を知りませんでしたけど、調べてみたら面白そうだと感じました。


 ワークスアプリケーションズを通じてERP(統合基幹業務システム)システムを会社に導入するチャレンジを認識していたからです。ERPを導入するお客さまの目的は情報の一元化だと思います。しかし各種の社内システムが残った状態で導入するので、システムを連携させなくてはいけない。それがチャレンジになります。


 RPAは人間の作業をソフトウェアのロボットに教えて自動化します。このテクノロジーがシステム間のデータ連携を(人間がやるように)実行するので、とても面白いテクノロジーだと思いました。


阿部川 最初はUiPathの日本オフィスに入社したのですよね。どのようないきさつで、カナダで働くことになったのですか?


隈元さん 僕が入社した2019年には日本法人があり、スタートアップみたいな状態でした。僕は200人目ぐらいに入社した従業員で、テクニカルパートナーマネジャーという、UiPathをお客さまに導入するパートナー企業の技術担当者にUiPath製品の細かい操作方法やベストプラクティスを教えるロールでした。後にセールスエンジニアにロールを変えました。


 コロナ禍になると妻が「そろそろカナダに戻りたい」と希望したので、「カナダオフィスってあったっけ?」と調べ始め、社内「Slack」で調整を進めました。妻の配偶者ビザで移住できることになり、2021年2月にUiPathカナダに移籍しました。


阿部川 とんとん拍子に進みましたね。


●今までの全てに感謝しかない


隈元さん 将来的に海外で仕事をしたいとキャリアを積んできましたが、まさかこんなに早く実現するとは思っていませんでした。ワークスアプリケーションズは技術の基礎を作るチャンスをくれて、UiPath Japanでは、スタートアップのようなスピード感を持ちながら、日本国内やグローバルなメンバーと協力して仕事を進める貴重な経験を積むことができました。


 ユニコーンスタートアップで貴重なキャリアを積み、最終的には「カナダで働く」という目標を達成できました。それも、ただの職ではなく、毎朝起きるのが楽しみになるようなエキサイティングな仕事です。改めて、今まで関わってくださった全ての人への感謝の気持ちでいっぱいです。


阿部川 それは隈元さんにずっとその意思があったから、そういう巡り合わせになったんだと思います。


隈元さん 確かに「必ず人生のマイルストーンを実現する」という意思はありました。その意思を常日頃から意識することで、機会があったときにすぐにアクションが取れるように準備していましたし、周りの人たちにも結構相談していました。


阿部川 みんなに希望を公言するのは大事です。意識していると、自然と「将来カナダに行きたい」「プログラミングをやりたい」などと話しているものです。今、幸せそうですね。仕事も私生活も。


隈元さん 素晴らしい親、家族、職場の方に助けられながら希望が実現してゆくので、「本当に自分は恵まれているな」と感じます。同時に「少しうまくいき過ぎている……」と感じることも多々あります。


阿部川 それ、どうしてだと思います?


隈元さん 多分、僕は自分に対して期待値が低いんです。子どもの頃からどんくさかったし、運動神経もないし、勉強ができるわけでもなかった。ただ、自分が持っているものは受け止めていたので、子どもの頃から結構腹をくくっていました。だからこそ「では、いま自分ができることは何なのか」をひたすらやる。そしてサポートが必要なときは周りに助けてもらい、感謝を忘れない。


 たまたま僕はプログラミングが向いていて楽しいと思えましたが、もしプログラミングに興味を持てなかったら、違うことをやっていたと思います。自分が「好きなこと」と「やりたいこと」を組み合わせればいい方向に進むんだなと思いました。


阿部川 好きなことができると人は強くなれますね。


隈元さん ワークス時代、UiPath Japan時代共に私が関わった全ての上司や同僚が、そろいもそろって「仕事を楽しくやらないと意味がない」と仕事に前向きな方たちばかりでした。そのような人たちに囲まれて働けたことも幸運だったと思います。


阿部川 そういうふうに隈元さんが感じられるからこそ、そういう環境になるのです。


●ラッキーになれる場所に身を置くことは非常に大事


編集部鈴木 海外で働いてみて、想定外だったことはありますか?


隈元さん うれしい発見は、周りの人たちの忍耐強さでした。カナダに来たばかりの頃は毎日頭をフル回転させて、みんなの言うことを理解しようとしていました。でも周囲も僕を理解しようとしてくれていて、簡単な英語で説明してくれたり、僕が理解できなかったことを別の表現に直したりしてくれました。


 礼儀と感謝を持って接すれば、向こうも合わせてくれます。カナダも米国も移民の国なので、そういうやりとりに慣れていて、社会として外部の人を受け入れる態勢が整っています。UiPathのグローバルの人たちも、日本人と変わらないくらいフレンドリーで協力的にサポートしてくれて、それも驚きでした。


阿部川 グローバルな仲間とはどのような交流があるのですか?


隈元さん 最近UiPath創業の地、ルーマニアで開催された「カルチャーチャンピオンプログラム」に参加しました。UiPathのカルチャー「Be Fast, Bold, Humble & Immersed(素早く、大胆に、謙虚に、熱中する)」を体現していると認められた人が参加できるプログラムで、世界中のいろいろな部門の人たちと交流してきました。このままグローバルな仲間やお客さまと、いろいろな問題解決をしていきたいです。


阿部川 ずっと楽しかったことや感謝していることをお話しされていますが、そうはいってもつらいこととかあったんじゃないですか?


隈元さん ありません(キッパリ)。


阿部川 即答ですね(笑)!


隈元さん いろいろな経験をさせてもらえて、ずっと楽しいんですよね。入社時はRPAを通じてお客さまの複雑な問題解決に関われることが純粋に楽しかった。RPA自体も社会に浸透してきましたが、ここに来て、RPAと生成AI(人工知能)の組み合わせでさらなる可能性が広がる時代が到来しています。毎年のように新しい経験をさせてもらい、飽き性の僕にはとても合っています。


阿部川 これからどんな仕事やキャリアを思い描いていますか。


隈元さん テクノロジーの進歩が速過ぎて、10年後が想像できないのです。ただ何らかの技術で問題解決する分野の最前線に身を置きたいと思っています。でも進化が速過ぎて、具体的には見えないですね。自分が熱中できるものを扱えるところに身を置いていたいです。


阿部川 日本の若いエンジニアにアドバイスするなら?


隈元さん 政治経済で有名な広瀬隆雄さんが配信で「ラッキーになれる場所を探せ」とおっしゃっていました。みんな何かを達成する力を持っているが、環境により何を達成できるかが変わる。もし、いまあまり良い環境にいないのであれば、成功する機会を失っているかもしれない。ちょっと広い目線で、いまいる場が自分の最終目標、人生で達成したいことに近づける場所にいるのかと常に疑問を持ち続けるといいと。


 「苦労は買ってでもやれ」という格言の通り、「ここに自分が求めるものへの機会がある」と思ったら、たとえ大変でも飛びつくこと。ラッキーになれる場所に身を置くことは非常に大事だと思います。


阿部川 ラッキーな場所に身を置きなさいということですね。


●Go’s thinking aloud インタビューを終えて


 長年インタビューを生業(なりわい)にしていると思う。人は見掛けによると。前向きに歩んでいる人は出会った瞬間に分かる。新しい出会いを楽しんでいるのが、目の輝きに宿るからだ。


 隈元さんは、作り出すことが楽しくて、図工の時間に熱中した。その思考はごく自然に、プログラミングに向かった。コミュニケーションが楽しくて、高校、大学と海外でも学んだ。英語に興味があったわけではなかったが、ブリティッシュコロンビア大学からビジネス英語の国際資格も習得した。海外に支社があったわけではないが、志願したらUiPathジャパンの仕事を、奥さまの故郷のカナダでやることになった。経営陣が具現化した“Fast”で“Bold”(※)な決断であり、Generative AI Solutions Architectという独自のポジションも与えられた。


 楽しめることを続けて、しかも結果を出していれば、必ず誰かが見いだしてくれる。リーダーとの出会いがあれば、より高いチャレンジが与えられ、それがまた正のスパイラルを産む。


 適材適所というが、何ができれば適材で、どのポジションが適所かは一筋縄では分からない。しかし確実なことは、仕事を楽しくやれて、結果が出せることだ。そんな人には、年齢性別経験国籍関係なく、機会と権限、責任を早く与えることだ。ICT業界は、AIによって大きく変わりつつあるのだから。



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