「私が主役じゃない」32歳のルーキー・桂葵がWリーグでたどり着いた境地とは?

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2024年12月27日 10:31  webスポルティーバ

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第3回(全3回):32歳のルーキー・桂葵インタビュー

桂葵が32歳でWリーグデビューを果たした。

高校、大学と全国トップレベルの選手として活躍しながら就職を機に競技から離れ、その後3x3(スリーエックススリー/3人制バスケ)の世界で選手、そして経営者として日々過ごし、今季からトヨタ自動車アンテロープス入り。自身にとって10年ぶりの5人制バスケ、しかも最高峰のリーグはどのように感じているのか。

開幕からのこと、そして今後の人生について聞いた。

第1回〉〉〉桂葵が自ら選択してきた人生の決断とその道のり
第2回〉〉〉桂葵がトヨタ自動車にたどり着いた理由

【今はチームが勝てば何でもいいという思考】

――今シーズンのチームのことを聞かせてください。トヨタ自動車は開幕から8連敗をしながら、その後、6連勝をしていますが、今の状況についてはどう感じていますか。

「去年のメンバーが5人移籍して、ルーキーが私を含めて6人いて、1人移籍してきた選手もいるので、本当に新しいチームです。なので、序盤戦はまだチームづくりの段階だったと思いますし、そこからチームとして噛み合ってきて結果にもつながってきました。成長過程をみんなとともに経験している感じなのかなと思います」

――リーグ戦の個人スタッツに目を向けると、平均で10分以上の出場時間を得ています。失礼ながら32歳のルーキーがこれだけコートに立っていることに驚いています。

「そうですね。正直、開幕戦(10月11日の対ENEOSサンフラワーズで20分33秒出場)であんなに出たのは、私もびっくりしました。(開幕前には)練習試合も1回しか参加できなかったんですよ。その時でも多分、6分くらい出させてもらった感じでしたし、あんまり自分の立ち位置はわかっていなくて。

 変な話ですけど、私が主役じゃないというのはすごく思っています。9月から加入した状況もあって、そもそも私は今季のチームづくりの構想にいた選手じゃないはずです。同じポジションの選手たちの調子がいいに越したことはないので、私のプレータイムがなくてもいいくらいには思っていました。でもファウルトラブルなど、何かあった時にちゃんと安心してつなげる選手でありたいなというのは、このトヨタでの自分の役割だと思っています」

――ご自身を客観的に見ているのですね。

「このメンタリティでトップのカテゴリーでやっていていいのかわかりませんが、Wリーグで個人的に何か成し遂げたいことは全然、ないんです。得点を取れない、試合に出られないといった悔しさというのもありません。

 最初に大神(雄子/トヨタ自動車HC)さんがオファーをくださった時に、私のこれからのキャリアを考えてオファーをしていないはずなんですよ。チームが勝つために私が役に立つんじゃないかっていう純粋なバスケ的な視点で獲ってくれたと思うので、私は本当に、チームが勝てば何でもいいんです。それは32歳で入ったからこその、特殊なモチベーションかもしれないです。

 だから、今の私でチームが勝つために役に立てることがあるんだったら、役に立ちたいなという感じですし、この先のことは全然、考えていないです」

――チームの勝利が最優先で、ご自身の今後は未定なんですね。

「3x3はやりたいです。なので、ワールドツアーには何かしらの形で出ていくと思います。ZOOS(※自身がオーナー兼選手として設立した3x3チーム)については、コミュニティとして続けていきます。ただ、ワールドツアーに出場するチームとして、というのはあくまでZOOSのなかのプロジェクトのひとつという感じ。やり方はいろいろなので、関わる人たちが必要な形で存在できればいい。私の話でいうと、許される環境で夏の間は3x3のワールドツアーに出ていき、秋冬も5人制は続けていきたいです」

【選択肢は見つけるものだし、作るもの】

――長い人生というスパンで考えた時に、今後ご自身としてはどうなっていきたいと考えていますか。

「そっちのほうが(より予定が)ないんです。本当はもっとキャリアウーマンみたいな感じで仕事をするつもりだったので、こんなにバスケに熱中するとは思っていなかった。だから、バスケを辞めた後、抜け殻のようになるかもしれないです(笑)。それも人生かなって思っていますし、人生の一部だと思って受け入れたいです。

 アスリートのセカンドキャリアって、永遠のテーマですよね。私は先に社会人をやってからアスリートをやっているからというのもあり、こんな高揚感のある日々は普通じゃないというのも心得ています。競技を終えた時にその反動が来ることも当たり前だと覚悟しています。競技を終えたあとの自分に期待しすぎたり、未来を楽しみにしすぎると、終わったあとの自分に落胆しちゃう気がするので、とにかく今のこの競技人生を楽しむことを考えています」

――そこに価値を見出したわけではないと言いながらも、32歳にしてWリーグデビューを果たした桂選手が及ぼしているかもしれない影響については、どう考えますか。

「選択肢って見つけるものだし、作るもの。だから私がやっていることは、ひとつの選択肢を作って、みんなに共有している状態で、みんなも探してくれたらいいし、なかったら作ればいいと思うんです。

 大事なのは、自分で選ぶこと。選択肢はみんなのものだけど、決断は自分にしかできない。だから私が何か世の中に影響を与えたとしたら、そういう選択肢があることを提示できたことです。だけど、それは別にたいしたことじゃなくて、人が自分の人生を選んでいく、決断を重ねていくことのほうが大きい。

 私がやっていることは別に人のためじゃないし、私のためだし、私自身にとっても自分で決断をしていることが私の人生のなかで大きいポーションを占めている。だから、私を見てインスパイアされた人がいたとしても、それ自体はそんなに大きなことじゃなくて、その先でその人がどういう選択をしていくのかが大事なのかなと思います」

●Profile
桂葵(かつら・あおい)/1992年9月2日生まれ、東京都出身。身長182cm。小学生時代からバスケを始め、桜花学園高、早稲田大時代は全国トップレベルで活躍したが、大学卒業を機に競技生活に区切りをつけ、三菱商事に就職。社業に専念にしていたが、3年のブランクを経て3x3(スリーエックススリー/3人制バスケ)の選手として競技に復帰すると、2022年には3x3チーム運営やコミュニティ運営を中心に展開する「ZOOS」を設立し、自身はZOOS代表兼選手としてプレーする一方、今シーズンからWリーグ・トヨタ自動車アンテロープスに加入。10年ぶりに5人制バスケットで奮闘している。

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