婚約破棄、ハーバード大での屈辱…“王道エリート人生”から挫折した山口真由(41歳)の現在「子育ては常に綱渡りのような状態です」

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2024年12月29日 09:00  女子SPA!

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山口真由さん
 法学者であり、コメンテーターとしても活躍中の山口真由さん(41歳)。東大首席卒業→財務省官僚→弁護士→ハーバード大学留学という輝かしい経歴を持ちながらも、「自分を天才とは思わない」といいます。

 山口さんが初の著書『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』を出版してから10年、山口さんはハーバード大学への留学やテレビ出演を通じてキャリアを積んできましたが、一方で仕事の失敗や婚約破棄など多くの挫折も経験してきたのだとか。

 今回は、この10年での山口さんのライフスタイルや心境の変化、そして働く女性への貴重なアドバイスを聞きました。

◆仕事と結婚、王道エリート人生からの挫折……

――40代をむかえ、山口さんにとって大きく変わったことは何ですか?

山口真由(以下、山口):以前は「業界でバリバリ活躍しているキャリアウーマン」「30歳までに結婚しなければ」「30代前半には結婚して子どももいる」という漠然とした将来のビジョンがあり、それ以外の人生については考えたこともありませんでした。

 10年前、私は弁護士事務所に勤めていて、いわゆる王道のエリート人生を歩むつもりでいましたが、うまくいかずに初めて挫折を経験しました。そのとき、エリート人生から撤退しようと2つの方法を思いついたんです。それは、留学と結婚です。

 つまり「日本で大きな期待を背負いつつ、留学で広い世界に飛び出して価値観が大きく変わりました。帰国後は結婚して、家庭を優先します」といったパターンです。しかし、そんな期待もむなしく、留学中にパートナーから婚約破棄されてしまいました。

 ただ、留学前に本を発売したことでメディアへの出演が増え、その後も継続的に著書を出版することができました。

 帰国後は大学で教えたり、コメンテーターの仕事をしたりと、私の人生は大きく変わりましたね。酸いも甘いも経験したことで「人は何をしても生きていけるんだな」と気づきました。

◆「透明人間」として扱われたハーバード留学時代

――ちなみに、留学時にはどんなことがあったのですか?

山口:アメリカでは英語がまったく通じず、周りからは「透明人間」のように扱われていました。例えば「アンブレラ」と言っても誰も傘を貸してくれなかったりして、諸々のストレスで血尿が出たこともありました……。医療費が高くて病院にも行けず、本当に苦しかったです。

 食生活も、お菓子とインスタントラーメンのような安い食べ物でやり過ごしていたので、体調もよくありませんでした。学校でも英語を話そうとすると「I’m sorry」と言われ、授業中に英語を話せたことが一度もありませんでした。

 ですが、現在の専門である「家族法」と出合ったことで、初めて英語で話したいと思うようになりました。文献を読み込み、レポートを提出した際、先生から「エクセレント」と評価され、「ここにいていいんだ」と感じたことを今でも鮮明に覚えています。

 それまでは「勉強してるね」と言われることにコンプレックスを感じていましたが、家族法の授業をきっかけに、私は「読む」ことが得意だと再認識でき、自信につながりました。帰国後も、東京大学の博士課程でひたすら読むことに集中していました。

――帰国後、信州大学の特任教授を務めたり、ワイドショーのコメンテーターをしたりと活躍していますよね。

山口:どちらの役割も、読書を基盤にキャリアを築いてきたと感じています。以前は自分を落ちこぼれだと思っていましたが、今ではまったくそうは感じません。「私は自分の道を歩めばいい」と思えるようになりました。

◆子育ては「常に綱渡りのような状態」

――2023年にお子さんをご出産されたそうですが、それによってライフスタイルはどのように変わりましたか?

山口:とても変わりました。時間の使い方が完全に変わりましたね。

 今、子どもは保育園に通っていますが、朝になると「食欲がない」とか「体温が37度を超えている」といったことが頻繁にあり、常に綱渡りのような状態です。

 自分の時間を自分でコントロールすることが難しくなりました。一日の大半を中腰で子どもを追いかけながら、保湿をしたり、寝かしつけたりしています(笑)

――常にお子さんのことを考えながら生活するのは大変そうですね。

山口:仕事中はあまり考えないようにしていますが、子どもが体調を崩すと気になりますし、そのときはかなりの時間と手間がかかりますね。

◆使える時間が短いからこそインプットの濃度は上がった

――時間が少ない中でも、時間を有効に使うコツはありますか?

山口:時間が取られるからといって、インプットの時間がなくなるわけではありません。

 子どもがゲームをやめても勉強時間が増えないのと同じように、子どもに時間を取られても仕事の精度が下がるわけではなく、むしろインプットの濃度が高くなりました。「この2時間で絶対やる」といったプレッシャーが、逆に効率を上げてくれることもあります。

――山口さんは「外圧を利用して目標を管理する」そうですが、時間がないほうがかえって燃えるタイプのようですね。

山口:おっしゃる通り、私はスケジュールを埋めたいタイプなので、予定を入れすぎて子どもが風邪をひいて大変なことになることもありますが、そんな毎日を楽しんでいます。その過程で、自分の生活を管理する能力が向上したと感じていて。

 緊急事態でもパニックにならず、優先順位に沿って行動できるようになり、それ以上のことは他人に頼らないと生きていけないので、人に対しても寛容になりました。

 例えば、予定をキャンセルされても「体調不良だったのかな?」とか「急な介護があったのかな?」と思い、すぐ次のプランに切り替えるようにしています。

◆1日30分の趣味で自分を保つ

――過密スケジュールの中で子育てをするのはストレスが溜まりそうですが、おすすめのストレス軽減方法はありますか?

山口:リラックスするのが得意なタイプではありませんが、自分だけの時間を意識的に取るようにしています。小説を読むのが好きで、子どもが寝て家事などを片付けた後、22時頃から30分ほど読書をしています。この時間だけは大切にしています。

 最近、弁護士時代の同期が「子どもが2人いるけど、書斎を持っている」と言っていたのですが、確かに自分だけの時間がないと精神的に疲れるものです。

 今は大変ですが、その30分の読書で自分を保っています。私は読書が好きですが、人によってはコーヒーやお酒をゆっくり飲む時間でもいいと思います。とにかく、自分のための時間を持つことが大切なんですよ。

――山口さんの活躍の背景には、こうしたナイトルーティンがあったのですね。では、モーニングルーティンはどうでしょうか?

山口:朝は子どものことで頭がいっぱいです。子どもが起きる前に自分の準備を済ませるようにしていますが、出演などがある日はメイクも必要です。

 まず子どもにご飯を食べさせ、歯磨きをさせてから、日焼け止めを塗らなければなりませんが、これがなかなかうまくいかないんですよ(笑)。

◆プロフェッショナルとして、80%の及第点を出し続ける

――最後に、今後の人生の展望について教えてください。

山口:家族法は私の専門分野であり、人生のテーマでもあります。この分野の学びは今後も続けていきたいと思っています。

 私は長期的な目標を立てるのではなく、日々を大切にし、毎日自分と家族の健康を守りながら、仕事では常に80%以上のパフォーマンスを出せるようにがんばっています。そのためには、自分の健康状態が良好であることが前提になります。

 もちろん、100%、120%のパフォーマンスを発揮できるときは全力を尽くしますが、それは周りの状況や体調に左右されることが多いです。だから完璧主義にとらわれず、プロフェッショナルとしての及第点を常に維持することが私のモットーですね。

――かつて山口さんが東大を首席で卒業できたのも、成績1位を取っていたからではなく、常に上位3分の1に入り続けた結果だと伺いました。

山口:そうです。昔から変わらないですし、今後もこのスタンスを貫いていくつもりです。

<取材・文/西脇章太(にげば企画)>

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