夏の全国制覇で高校卒業後の進路を変更 京都国際・西村一毅は公務員志望から野球を続けることを決意した

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2024年12月30日 07:20  webスポルティーバ

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甲子園初優勝の京都国際Wエースが振り返る激闘の夏〜後編・西村一毅

前編:中崎琉生が振り返った栄光の夏はこちら>>

 11月30日、京都国際は年内最後の対外試合を行なった。3対0とリードした7回から2番手としてマウンドに上がった西村一毅は、3回を2安打無失点に抑える好投で試合を締めた。

 今夏、チームを初の全国制覇へと導いた伝家の宝刀・チェンジアップのキレ味は相変わらずで、テンポよくカウントを整えていくピッチングに、ネット裏で試合を見に来ていた相手チームを応援するオールドファンからは「あれは打てんなぁ」とため息が漏れた。

「軸が安定して、腕がしなり、しっかり真っすぐを投げられるようになりました。前よりストレートの質はよくなっている感覚はありましたし、指にかかっていたのもよかったです。それでも、まだフォームの完成度は5割くらいです」

 言葉を丁寧に選びながら、西村は試合後そう口にした。

【新チームは秋の京都大会4回戦敗退】

 9月末に行なわれた秋の京都大会4回戦で、西村は京都外大西から18個の三振を奪うも、延長11回タイブレークの末に2対3で敗れ、来春のセンバツ出場は絶望的となった。

 その後、週末の練習試合では何度か登板するも、かねてから課題だったフォーム固めのため、1カ月以上実戦から離れていた。

「甲子園では投げる際、右肩が内に入ってコントロールが荒れてしまったので、フォームを一から見直していました」

 1年上の左腕エース・中崎琉生とは今でもともに練習することがあり、その際にアドバイスをもらうことも多いという。

「先日、ピッチングを見てもらった時、中崎さんから『肩が中に入って投げる時は、間合いがない』と言われました。またスライダーを投げる時は、手首の角度を固定して横に弾くようなイメージで投げるといいとも教えてもらいました」

 夏の甲子園では中崎とともに京都国際のマウンドを守り、西村は4試合24イニングを投げ、被安打11、奪三振11、失点は1(自責点0)と完璧なピッチングを披露した。

「夏の甲子園は......雰囲気はしっかり覚えていますけれど、あの時の細かい感覚などは、徐々にすごく前のことのように感じています」

 夏の栄光は、徐々に遠い過去になっているようだ。甲子園の決勝まで進んだため、新チームのスタートはどこよりも遅れた。小牧憲継監督は「私の指導力不足でした」と秋の敗因を挙げたが、西村自身も春から夏にかけての"勤続疲労"もあったのだろう。

 秋は表舞台から早々降りることになったが、今秋の公式戦で躍動する同世代の動向はこまめにチェックしていたという。

 11月に明治神宮大会で優勝した横浜高のエース左腕・奥村頼人は、中学時代に滋賀県選抜チームでともにプレーした間柄だ。中学時代まで外野手だった西村は、奥村が横浜高でさらに成長している姿に目を奪われたという。だが、奥村の活躍以上に注目していたことがあった。

「自分はピッチャーなので、どうしても打線に目がいってしまいます。横浜高も打線はいいですが、同じ近畿の東洋大姫路の打線はミート力が高くて、打球が強いバッターが多いなと思いました。そういう打線を抑えられるようなピッチャーにならないといけないですね」

【いま取り組んでいる新たな武器】

 11月下旬に開催された全国の強豪校が集って交流試合をする『くまのベースボールフェスタ』で、夏の甲子園の決勝で対戦した関東一高戦に登板した。久しぶりの実戦で、小牧監督が「感覚的なものがまだまだだった」と言うように、得意のチェンジアップを見切られ、痛打される場面が目立った。

「投げミスが多かったです。自分で配球を考えたり、チェンジアップの使い方をもっと考えたりしないといけないと思いました」

 フォーム改良の最中の登板だったとはいえ、まだまだ課題が多いと西村は明かす。高校入学後に本格的に投手に転向してまだ1年半。今年は甲子園優勝というこの上ない経験値が加わったが、だからこそさらなるレベルアップが必要と、最後の夏のマウンドに向け闘志を燃やしている。

「まだフィジカルが弱いですし、体力面も精神面もまだまだです。体のバランスを意識したトレーニングや筋力トレーニングはやっているんですけれど、冬場はさらに時間をかけたい」

 夏の甲子園で66キロだった体重は今もほとんど変わっておらず、現在は67キロ。食事の回数を増やすなど努力は続けており、来年の春には75キロまで持っていきたいと目標を掲げ、球質にもこだわりを持ちたいと語る。

「ストレートの球速を伸ばすことも大事ですが、球速以上に速さを感じさせられるようなボールを投げられるようになりたいです。あとは、スライダーをチェンジアップのように使えるようにしないといけないです。小さい曲がりのカットボールも練習しているので、春までに武器にできるようにしたいです」

【理想のエース像とは?】

 春の府大会、近畿大会、夏の府大会、甲子園と試合で結果を残すたびに、西村は今後の目標について何度も尋ねられてきた。そのたびに「公務員になりたいです」と平然とした表情で返してきた。

「野球に対しては無欲で何も考えていないところがある」と小牧監督は西村をチクッと"つつく"ことも多かったが、10月に入り西村は高校卒業後も野球を続けることを決意した。プロか大学進学かについては、「現時点ではまだまだ考えられないです」と話すに留めたが、この冬の成長次第でプロは"夢"ではなくなるだろう。

 理想のエース像は「誰からも信頼される、仲間がミスをしてもカバーできるピッチャー」だという。チームの柱としてだけでなく、高校野球界において西村は注目される存在である。そんな来年に向け、本人はこう意気込んだ。

「まずは全員で甲子園に優勝旗を還しに行って、夏の甲子園連覇という目標に全員で向かっていきたいです。そのために、この冬は鍛えていきます」。

 昨年の冬はセンバツを見越して、体づくりと同時進行で実戦練習にも時間を割いたが、今年は夏に向けて徹底した基礎練習に励んでいる。

「もともと今年は、ピッチャーはすごく走らされることになると聞いているので......。正直、走るのは好きじゃないけど、苦しい練習を乗り越えないと結果はついてこないので、これをすれば成長できると自分に言い聞かせて頑張っていこうと思います」

 日の当たらない場所でもがき、歯を食いしばる冬。その先に待つ未来は──西村が再びマウンド上で周囲をアッと言わせる時は来るのだろうか。その時に向けた戦いは、もうすでに始まっている。

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