“アート”としても注目のスケートボード…仕掛け人は「メイドインジャパンのデッキを世界に届ける」と意気込み

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2024年12月30日 16:21  日刊SPA!

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 東京・パリオリンピックでの日本人選手の活躍で、一躍話題になったスケートボード。このスケートボード界隈で、選手のほかに注目を集めている企業がある。
◆日本で唯一のスケートボードデッキへのプリントサービス

 2021年にスケートデッキにオリジナルデザインを1枚からプリントできる、日本で初めて本格的なスケートボードのプリントサービスをスタートさせたシルクマスター。1982年に静岡で創業したTシャツのシルクスクリーンを得意とする会社だ。

「2019年に訪れたロサンゼルスのザ・ブロードという現代アートの美術館で、芸術作品がプリントされたスケートボードが売られていました。そのプリントの仕上がりが、見たことがないぐらい非常にきれいだったんです。感銘を受けた私は、スケートボードのプリントの研究をやろうと決意しました」

 そう振り返るのは、シルクマスター社長の戸塚明氏。同氏が中心となり、2021年に始めたスケートボードデッキへのプリントサービス、「シルクマスターSB」の新事業は右肩上がり。2024年は約5300万円の売り上げを見込んでおり、軌道に乗りつつある。

◆東京・パリオリンピックの日本人選手の活躍が人気を後押し

 新事業が堅調に成長している理由を、戸塚氏は「うちはTシャツのプリントサービスを長年手掛ける中で、アパレルブランドとの付き合いがあったから」と説明する。

「アパレルブランドには、スケートボードのカルチャーから発生したブランドも多い。そういったところから“シルクマスターSB”をほかのメーカーにご紹介いただければ、なんとかやっていけるだろうという目論見はありました。

 あと、うちは2011年頃からアニメやマンガのTシャツのプリントサービスも手掛けています。『ポケモン』や『遊戯王』などの人気コンテンツが、キャラクターをプリントしたスケートボードを制作して人気を博していたので、アニメ業界でも需要が見込めると考えました」

 さらに、東京・パリオリンピックでの日本人選手の躍進も新事業の追い風となった。

「息子がスケートボードの選手だったので、スケートボードが魅力的なスポーツであることは以前から知っていましたが、世間の一般的なイメージは、やんちゃな男の子がやる遊びといった感じで、正直、あまりよくなかったと思います。

 ですが、東京・パリオリンピックで男女ともに金メダルを獲得したことで、スケートボードがスポーツとして認知された。スケートボードへのイメージが変わったことで、うちでも作ってみようかなと興味を持ってくれた取引先が増えた印象です」

◆スケートボードのプリントは苦難の連続だった

 「シルクマスターSB」の2025年度の売り上げは、6000万円以上を見込んでおり、さらなる成長が期待されるが、サービスを始めるまでは「苦労の連続だった」という。

「日本でスケートボードのプリントサービスを行っているのは、うちだけしかありません。国内に生産工場が1つもないので、懇意にしている資材屋にあたっても、一切情報がないんです。そこで、YouTubeで『スケートボード』『プリンティング』といったワードを検索して、海外の工場の動画を観察するところから始めました。

 でも、本当に肝心なところは企業秘密なので、動画では見せてくれない。研究を始めた2019年はコロナ前だったこともあり、アメリカや中国の生産工場を見学させてもらい、印刷方法や仕入先のヒントをいただくことができました」

 こうして本格的な研究がスタート。これまで培ってきた技術もあり、「半年でスケートボードへのプリントのクオリティは、感銘を受けた作品レベルに近づけた」と自信をのぞかせた。

「そこからが苦難の連続でした(笑)。きれいにプリントできたものの、耐久面で満足のいく仕上がりにならなくて……。当初は爪でこすっただけで、プリントが剥がれてしまうような状態でした。

 スケートボードは、ご存じの通り激しいスポーツなので、プリントの強度も求められます。スケートボードのプリントサービスをやるからには、自信のあった装飾はもちろん、強度にも手を抜きたくはなかったんです」

◆メイドインジャパンのデッキを世界に届けたい

 強度の研究に約2年の時間を要し、2021年にサービスを開始した「シルクマスターSB」。日本で唯一のスケートボードデッキへのプリントサービスとして、戸塚氏には大きな夢がある。

「『シルクマスターSB』では、日本のアーティストの方たちに作品を提供してもらい、スケートボードのデッキにプリントしてSNSで公開する施策を1年近く続けています。これまでに50名以上のアーティストにご協力をいただき、60以上もの作品が完成しました。

 現在は、OEMの仕事がメインですが、今後はオリジナルブランドを立ち上げて、日本のアーティストの作品や、アニメ、マンガなどのデッキをメイドインジャパンとして海外で販売していきたいですね。そして、オリンピックを夢見て頑張っている選手たちに愛用してもらえるような、魅力的なスケートボードを作りたいです」

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