限定公開( 1 )
メガネやサングラスの製造販売を手掛けるオンデーズ(東京都品川区)が2024年11月に、遠近両用レンズの追加料金を無料にしました。
一般的なメガネは「フレーム+レンズ込み」のセット価格を採用する店が増えていますが、同社はこれまで、遠近両用レンズを6000円で販売していました。無料化にしたことで、どのような変化が生まれたのでしょうか。
遠近両用レンズの特徴は、レンズの上から下にかけて境目のない設計で度数が変わるので、メガネをかけ替えることなく、遠・中・近が見えること。ただ、視界のひずみや視野の狭さなどを感じるので、慣れていない人からは「使いにくい」といった声もあります。
ネオマーケティング社が行った調査によると、40代の約7割が「自分は老眼かもしれない」と回答していますが、遠近両用メガネを保有しているのはわずか18%。その理由として「高価だから」「使いにくそうだから」といった答えが上位にランクイン。この結果を受け、同社は「まずは試してもらいたい。そのために、追加料金を廃止するのはどうか」と考え、この企画を進めたそうです。
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ただ、大きな不安が2つありました。「0円」にすれば売り上げの減少が考えられるので、業績が低迷するのではないか。遠近両用レンズの原価は高いので、採算がとれないのではないか。
この不安を解消するために、同社は実証実験を行いました。いきなり全店で導入するのではなく、エリアを限定して「追加料金なし」で販売してみることに。春には中部地方、夏には九州や沖縄などで実施したところ、売り上げが2〜3倍に伸びたそうです。
もう1つの原価については、売り上げが2〜3倍になれば、レンズを大量に発注できます。となると、いわゆる「規模の経済」が働き、仕入れコストを抑えられます。販売数が増えた→仕入れ原価を抑えられる→価格改定に踏み切ったという流れのようです。
●過去最高の数字を記録
遠近両用レンズを「0円」にしたことで、どのくらい売れたのでしょうか。2024年11月の販売数は前年比2.4倍で、過去最高の数字を記録したそうです。ただ、もう1つ注目すべき数字があります。年代別に見ると、40代が同3.4倍も増えていたのです。
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40代といえば「手元が見えづらくなってきた」といった人がじわじわ増えてくる年代だと思いますが、この伸びについてどのように見ているのでしょうか。
「老眼は症状が進行するので、2年に1度ほどのペースで買い替える人が多いんですよね。リピーターになる割合も高いので、長くお付き合いができるファンをたくさんつくれたかなと受け止めています」
こう語るのは、オンデーズで取締役を務めている明石拡士さん。
しかし、ここで気になるのは競合他社の動向です。筆者が調べたところ、大手メガネチェーンで「無料」をうたっているのは、オンデーズと眼鏡市場だけ。
「無料にすれば、お客がたくさんやって来て、売り上げも伸びた」というストーリーが広まれば、いわゆる”0円競争”が過熱するかもしれません。この疑問に対して、明石さんはきっぱりと否定しました。
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「単焦点レンズ(一般的なレンズ)が無料だったのに有料にしたり、『レンズは無料にしない』という方針を掲げているところもあったり。0円競争が過熱するのではなく、無料と有料の二極化が進むと思っています」
遠い将来と近い将来、この市場はどうなっているのでしょうか。遠近両用メガネをかけても未来は見えませんが、ゼロ戦略が「これからのこと」を少しずつ鮮明にするかもしれません。
(土肥義則)
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