相手が善意でやってくれていることが、自分にとっては不快や迷惑でしかない。そんな経験をしたことはないでしょうか。さらに、自分の意思を伝えにくい相手であったなら、ストレスや不満もひとしおかもしれません。今回紹介するのは、茂木亜美さん(仮名・20代後半)のそんな体験です。
◆お義母さんとだけは絶対にモメたくない
亜美さんは毎年、夫や子どもたちとともに年末年始を夫の実家で過ごしていました。消極的でモメごとが苦手な亜美さんとは違い、夫の母は何でも口にするタイプ。
サバサバとした明るい性格ではあるのですが、亜美さんには理解できないことで怒り狂うこともありました。
「だいたいは、お義父さんとのケンカのときなのですが、たまに夫と大ゲンカになることもります。私はケンカしたりするのは苦手だし、仲直りしても気まずくなるのが嫌なので、お義母さんとは絶対にモメたくないんです」
◆賞味期限切れの牛乳に、カビの生えた餅
そんな亜美さんの悩みは、義母の感覚が自分と違いすぎていること。とくに子どもが生まれてからの帰省は、恐怖となっていました。理由は、衛生面や食品に対する考え方の違いです。
賞味期限内の食品しか使用しない亜美さんに対し、義母はたとえ数か月過ぎていても平気。
「モノにもよりますが、レトルト食品や冷凍食品などは数か月が過ぎていても平気です。豆腐や牛乳も2〜3日過ぎているぐらいなら使うので、本当に怖くて……。
また、年末に私たちが行く前にお義母さんたちが餅つきをしてくれるのですが、お餅の保管先が納屋なんです」
母屋の隣にある、すきま風も入るエアコンも冷蔵庫もない納屋、つまり倉庫。農機具や母屋で使わなくなったモノが放り込まれ、ホコリや土が舞っているそうです。
そんな場所に保管されたお餅は、亜美さんたちが訪問する頃にはカビが生えていることがほとんどでした。
◆嘘でしょ?! ネズミがかじった餅も雑煮にIN
「でもお義母さんは、『あ、カビ』『やだやだ、こっちにも』と、カビをほじくって調理します。
それはまだマシなほうで、お餅を何かがかじったような跡をみつけたときには、『ネズミかも。やだやだ、ネズミだわ』と、その部分だけを包丁で切ってお雑煮に投入したのです」
夫の実家で食べるお餅は、1個か多くても2個くらい。あとは帰りに持たせてくれるので、コッソリ処分して我慢することが続いていました。
それでも、賞味期限が切れた食材をバンバン調理する義母の料理を食べるたび、食あたりで体調を崩さないか心配だった亜美さん。
「家の中で大きなホコリの塊や、何かがササっと走っていくのを見つけたこともあります。でも、感覚が違うだけで悪気がないということもあり、何も言えない状況。
ただ、子どもたちが大きくなってお義母さんの料理を食べるようになり、ますます心配になりました」
◆決死の思いで夫に相談。本気で立てた作戦とは
蓄積していたストレスも限界を超え、夫に真剣相談。
その結果、「いつもは愚痴を吐き出すだけでウジウジと悩む私が真剣に相談したことで、夫も真摯に受け止めてくれたようです。そして、2人でいろいろと案を出し合いました」と亜美さんは言います。
「そして、誰もが嫌な思いをしないよう、私が『たまには、お義母さんとゆっくり話したいです』『今年は、子どもたちが食べたいという回転ずしや揚げ物を買って持って行くので、足湯でも行ってゆっくりしましょう』と声をかけてみることになりました」
その作戦は、大成功。義母のプライドも傷つけることなく、「亜美ちゃんが私とゆっくり話したいと思ってくれていたなんて嬉しい」「来年からも、こういう感じでもいいかも」などと大喜びしてくれたのです。
◆とはいえ根本的な解決までの道のりは遠く……
「ただ、お餅のカビについては課題が残っています。それに、同じ方法で何年乗り切れるかはわかりません。帰省のことを考えるたびにやはり気が重く、完全に解決する何か良い方法はないか思案しています」
年に一度の年末年始。それでも感覚や考え方が違う人と過ごす時間は、なかなかストレスがたまるものです。
なるべく穏やかにお付き合いしたいものですが、健康を害するような場合は話し合いも必要かもしれませんね。
<文/夏川夏実>
【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。X:@natukawanatumi5