過去5万本の記事より大反響だった話をピックアップ!(初公開2022年1月14日 記事は取材時の状況) * * *
◆帰省、両親との再会でイライラ
年末年始の帰省ラッシュを耐え、実家で過ごす人も多いこの時期。
しかし、故郷でようやく両親や親戚との再会に喜んだのも束の間のこと。帰省も2日目、3日目と日を重ねると、その昔に感じていた実家の嫌な部分、世代や地域による価値観の違いを目の当たりにしてしまい、「早く自分の家に帰りたくなった」という人もいるのではないだろうか。
今回はそんな久々の帰省で、新年早々に両親の金銭感覚にイライラしてしまったという人のエピソードを紹介していく。
◆金銭感覚の違いに愕然
「両親はいわゆるしらけ世代なんですが、私たちの世代に比べて金遣いが荒すぎると感じています。根本的な金銭感覚の違いに愕然とさせられることが多いです」
北海道大学の同窓で結婚したという両親に対する不満を吐露する山本恵里さん(仮名・35歳)。この年末年始に20歳を過ぎるまで暮らしていた札幌市へ約2年ぶりに帰省した。
「私が小さい頃から両親ともにバリキャリで、いまで言えばパワーカップルみたいな夫婦でした。母は保険関係の会社役員で休日は地元の百貨店通いが趣味。いろいろなブランド品を買い漁っていて、実家には一度も使っていない高級化粧品や服、家電などが溢れています。私が使っていた子供部屋も完全な物置と化しているような状況です」
◆母親からのプレゼントが不満のタネ
山本さんは大学進学を機に上京し、そのまま東京で就職。7年前に結婚もして32歳のときには都内にマンションも購入している。親子仲は基本的に良く、母親からファッション用品や美容品、食料品などをよくプレゼントされるそうだが、それが不満のタネだという。
「確かに自分では買いにくい流行の調理家電や高級化粧品をもらえるのは有難いんですが、私の家庭には必要ないものが圧倒的に多いんですよ。東京の自宅は60平米弱でスペースに余裕があるわけでもない。捨てるには惜しいものも多く、母の代わりに不用品をメルカリで出品し、お小遣い稼ぎをさせてもらっています。
ただ、無駄な手間もかかるし、自分が好きな買い物もできるように、最初から現金でもらえたら一番嬉しいのに……と思わずにはいられません」
30歳を過ぎた現在も毎年のように数万円のお年玉をもらっているそうで、何とも贅沢な悩みにも聞こえてしまうのだが、山本さんが母親の買い物に不満を強く感じている背景には、それなりの理由がある。
◆高級車を買う余裕があるなら「奨学金の返済にまとめて充ててほしい」
山本さんは高校を1年で中退。実は地元で2年ほどのひきこもり生活と3年ほどのフリーター期間を経験し、高卒認定試験を受けて、私立大学の理系学部へ進学・卒業したという経歴を持つ。
「ちょうど大学進学のタイミングで、父が大手家電メーカーを早期退職した関係もあって、私は大学卒業までに600万円以上の教育ローンを借りたんです。母はずっとバリバリ働いてきたし、父も地元の小さな工務店に再就職して、いまの実家に経済的な余裕があるのはわかるんですけど。
奨学金などの返済がまだ半分近く残る私としては複雑な気持ちですよ……。この帰省で車をBMWに買い替えていたことが判明したんですが、どう考えても私の借金の利子が無駄じゃないですか。そんな買い物する余裕あるなら、私の奨学金の返済などにまとめて充ててほしいです」
◆金遣いが荒い両親に「節約しろ」と言われても…
折に触れて数万円単位のお小遣いやお年玉をもらえるのは、あくまで奨学金返済のためのお金という名目のようだが、山本さんの両親は両親で我が子の金遣いに不安を抱いているらしい。
「買い物依存症的な傾向がある母に、節約や貯金について口うるさく言われることが個人的には一番何だかなあ、と感じる部分です(笑)。我が家は2年前に子供も生まれ、額面はともかく可処分所得の感覚的には20代半ばからほとんど変わっていない。奨学金などを返済しながら毎月5万円に満たない額を地道に貯金しているのに、そういう金遣いを見せつけられると、そりゃあイラっとしちゃいますよね……」
娘が独り立ちして経済的にも余裕ができた物欲高めな両親と、思うように給料が上がらないなかで奨学金返済に追われる子育て世代の娘。両親の老後など一人っ子の山本さんの不安は尽きない。
「両親ともにいまは健康で働いているからいいんですけど、実家の資産状況などに関してはイマイチ信用できないところがあって、実際にその心配は伝えています。当人たちは笑って「大丈夫、大丈夫」「迷惑はかけない」と言うだけですけど……。本当に大丈夫であることを祈るばかりです」
<取材・文/伊藤綾>
【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii