ブンデスリーガ日本人選手 前半戦レポート 前編
ブンデスリーガは昨年末からのウインターブレイクを経て、1月10日からの第16節で再開する。今季は日本人選手の活躍が目立っているが、現地ドイツで取材を重ねるライターの林遼平氏に、各選手のシーズン前半戦の模様をレポートしてもらった。
【最高の前半戦 フライブルクで絶対的な存在】
堂安律(フライブルク/MF)
フライブルクで3年目のシーズンを迎えた堂安律にとって、今季前半戦は、結果だけを見れば最高のスタートを切ったと言っていいだろう。
最終ラインの選手を除けば、全試合に出場しているのは堂安とヴィンチェンツォ・グリフォのみ。加えて、5得点はチーム最多と、ユリアン・シュスター新監督の下で始動した新生フライブルクにおいて絶対的な存在となっている。
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昨季からの変化という点で見れば、攻撃面での関わりが大きくなったことが挙げられる。昨季はウイングバック(WB)のポジションでのプレーが多く、どうしても守備にかかる負担が大きかった。ただ、今季は4−2−3−1の右MFでプレーする機会が増え、前線に飛び込んでいける機会が増加。
開幕戦のシュツットガルト戦で決めたゴールや第8節ライプツィヒ戦で決めたゴールのように、逆サイドからのクロスに対してファーサイドで詰めたりヘディングしたりと得点パターンが増えていて、明らかな変化としてピッチに表われている。
もちろん第4節ハイデンハイム戦や第6節ブレーメン戦のようなカットインからの強烈なミドルを突き刺すシーンもあり、相手にとって警戒すべき選手となっているのは間違いない。
また、攻撃面に目が行きがちだが、昨季WBを経験して守備面での貢献度が高まっていることも忘れてはならない。相手のビルドアップに対して細かいポジショニング修正でスペースを消し、時には1対1のデュエルで奪いきる。カウンターを受けた際にはいち早く戻って相手ボールをカットするなど、どの試合でも光る守備を見せているのだ。そんな堂安に対するドイツ国内メディアの評価も高く、シーズン途中から移籍話が出るなど、確かな注目を浴びている。
それでも、まだまだ"絶好調ではない"というのが楽しみなところだ。本人もブレーメン戦やライプツィヒ戦こそ「手応えのあるパフォーマンスができた」と語る一方で、他の試合ではコンディション面を含めてあまり満足感を得ていないと明かしている。ここから自分自身が満足できるレベルのプレーを、どれだけ出していけるか。
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キャリアハイとなるシーズン7点まであと2点となっているが、後半戦ではすぐにその数字を飛び越え、10点以上という記録を残してほしいところである。
【最終ラインの中心で影響力のあるプレー】
板倉滉(ボルシアMG/DF)
今季、ブンデスリーガで戦う日本人選手たちのなかで、唯一全試合フル出場を続けているのが板倉滉だ。
ボルシアMGに加入して以来、これまではケガもあってなかなかフル出場するシーズンがなかった。ただ、今季はここまで大きなケガもなく、最終ラインの中心としてプレー。ピッチに立ち続ければその影響力は絶大で、近年下位争いが定番化していたチームをヨーロッパカップ戦出場権が狙える位置にまで押し上げている(第15節終了時点で8位)。
特に今季のボルシアMGは、板倉が出場し続けていることのメリットが大きいように感じる。昨季も後方からのビルドアップを目指していたが、板倉不在の時期は、なかなか完成度が高いものになっていかなかった。
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しかし今季は、板倉を中心にスムーズなビルドアップが可能になっており、まだ完璧ではないものの、チームとしてやろうとしていることがきちんとピッチ上で表現されている。その結果、昨季以上にチャンスの数が増えており、勝ち点奪取につながっているのだ。
また、守備的な観点でも、板倉はGKや相方のセンターバックが変わったりするなかでも、チームを鼓舞する言葉を投げかけながら最終ラインを統率。要所でのボール奪取や最後のところで体を張るなど、細かいところでも気の利いたディフェンスを続けており、チームの守備を引き締めている。
実際、昨季は15試合を終えて失点33だったチームが、今季はリーグ4位タイの数字となる失点20となっており、板倉の守備面での奮闘が明確に数字に出ていると言っていいだろう。
後半戦に向けてポイントになるのは、やはりケガをせずに1年間を戦いきることだ。ブンデスリーガの舞台では、まだ1年間試合に出続けた経験がない。ここでハイパフォーマンスを続けながらフル出場できれば、評価はさらに高まることになる。最終ラインをまとめつつ、自身のパフォーマンスに磨きをかけて、チームをさらに上へと押し上げていきたい。
後編「驚きの成長を見せる佐野海舟、チェイス・アンリらの活躍」へつづく>>