帰省する前には、しばらく会っていない家族と「どんな話をしよう」などと楽しい妄想をしながら計画を立てる人も多いのではないでしょうか。今回話を聞かせてくれた深瀬柚希さん(仮名・30代)も、帰省を楽しみにしていたひとりでした。
柚希さんの両親は昔からラブラブだったのですが、お父さんが死去。お母さんの悲しみようは半端なかったといいます。
しかし、父親を亡くした年の年末年始は柚希さんが仕事で帰省できず、お母さんは「寂しい」と毎日のように連絡してきました。
まさかの出来事が起こったのは、その翌年のことでした。
◆一人になった母を心配し、サプライズ帰省することに
「父が亡くなった年に帰省できなかったことは、後悔しかありません。母から毎日のようにあった連絡が、途絶えがちになっていることも心配でした。
そういった事情もあって、父が亡くなって2回目となる翌年は帰省できるように、少し無理をして調整したんです」
柚希さんはちょうど彼氏と別れたばかりだったこともあり、年末年始は2人でささやかながらも楽しもうと考えました。お母さんが好きなワインを買い、お土産も買い、驚かせようとサプライズ帰省を計画したのです。
「母は家で過ごすことが多い人だったし、たとえ留守でも合鍵を持っていたので、あまり深く考えずに連絡もせず実家へ。何気なく玄関ドアに手をかけるとスッと開いたので、そのまま家の中へ入ったのですが、それが間違いでした」
◆ドアを開けたら驚きの光景が
なんと、母親が見知らぬ男とベッドインの最中! しかも男性は、柚希さんとあまり年齢が離れていない30代半ばぐらいの男性だったのです。
柚希さんが思わず「キャーッ!」と声を上げると、男性とお母さんが驚いた勢いで、わずかに肌にかかっていた布団がベッドから滑り落ちます。
◆母親に“女性”を感じたのは初めてだった
「しばらく、何を見てしまったのか理解が追いつきませんでした。母に“女性”というものを感じたことはなかったし、父とラブラブだったときも、そういう性的な印象は受けたことがありません。
もう、どう接していいかわかりませんでした」
そして柚希さんは、「お母さん……何してるの……?」と言葉を漏らしてしまいます。そのとき、「びっくりさせてしまってごめんね」と気まずい空気をほぐそうとしたのは、さっきまで母とベッドにインしていた男性でした。
◆あまりの年の差に、まず詐欺を疑った
「その男性は、『娘さんの柚希さんですよね?』『実は僕、お母さんとお付き合いさせていただいている、Tといいます』と自己紹介。
なんと、付き合ってすでに一年近くが経つというんです。それは、母が『寂しい』と毎日のように連絡してきていた、すぐあとのこと。驚きました」
2人の年齢が離れていることもあり、最初は詐欺の可能性も疑っていた柚希さんですが、デート代はすべて男性もち。さらには、家の掃除や母の買い物の面倒まで見てくれていることが判明します。
そう、男性はとても気が利く、すごくいい人だったのです。
「実家に突然帰ってきて2人の営みを目撃した私にも親切で、疲れているだろうと夕食まで作ってもてなしてくれました。しかも、私の存在を嫌がる素振りなど一切なし。
私が混じりやすいような話題を選んで話を盛り上げてくれるなど、配慮もすごかったです」
◆目を覆いたくなるほどのラブラブぶり
唯一イヤだったのは、2人のイチャイチャっぷりを見せつけられ続けたこと。
母に「こういう人がいるなら、無理して帰省しなかったのに」と愚痴ると、「ごめんね、連絡するとかそういうのが頭になくて……」と、悪びれる様子もなくあっけらかんと答えたそうです。
「母が幸せそうなことはよかったですが、恋人とラブラブすぎて私に連絡する頭もなかったと聞き、少し呆れてしまいました」
◆気まずいだけでなく「胸が苦しかった」ワケ
「それに、彼氏と別れたばかりの私にとって2人のラブラブぶりを見続けるのは、まさに傷口へ塩を塗るような行為。2人には申し訳ないけれど、私にとっては胸が苦しい帰省になりました」
そして、「一度実家を出たら、それぞれの生活があるのだと実感しました」と柚希さん。
子どもにとって実家はいつまでも自分が暮していたときと同じ印象だという人も多いようですが、お互いのためにも帰省時の連絡や配慮は必要だといえるでしょう。
<文/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。