第103回全国高校サッカー選手権大会・決勝戦が13日に行われ、前橋育英(群馬)が流通経済大柏(千葉)をPK戦の末に下して7年ぶり2度目の優勝を果たした。
決勝戦としては歴代最多の5万8347人が詰め掛けた“名門対決”は、12分にカターレ富山内定の技巧派ドリブラー亀田歩夢がネットを揺らし流通経済大柏が先制するも、前橋育英が31分に柴野快仁のヘディングシュートで試合を振り出しに戻す。その後は両チーム一歩も譲らず、1−1のままPK戦へ突入。10人ずつの蹴り合いを9−8で制した前橋育英が、初優勝を果たした7年前の決勝戦と同一カードとなった一戦を制し、2度目の全国制覇を成し遂げた。
惜しくも敗れた流通経済大柏の榎本雅大監督は「相手のチームも含めて、自分たちも含めて、非常に素晴らしい決勝戦だったと感じています」と激闘を振り返りつつ、「PK合戦というのは非常に複雑な一つの勝敗を決める方法ではあるんでしょうけど、難しいし、一人にこれだけのものを背負わせるのはどうかなと個人的には思いますが、それがゲーム形式なので仕方ないと思います。選手たちは最後まで流経らしく戦ってくれたと思っています」と率直な思いを語った。
今大会の流通経済大柏は、3回戦でプレミアリーグWEST王者にして“高校年代最強”との呼び声もあった大津(熊本)を撃破。その後、上田西(長野)を8−0で粉砕し、準決勝では初出場で快進撃を見せていた東海大相模(神奈川)を退け、決勝戦への切符を掴み取った。榎本監督はここまでに至る過程を次のように振り返っている。
「様々な試行錯誤をしながら、選手にとって何が良いか、どうすれば成長を促せるのかということを取り組んできました。選手と対話をしながら今年は今年らしくということに取り組んできて、選手は非常に成長したと思っています。それを選手権の5試合で披露できたということ、今日の決勝戦も含めて、高校サッカー界やU−18という年代に対して、育成の重要性と育成と強化の両輪ということを、おこがましいですが示せたんじゃないかと思います」
かつて流通経済大柏を5度の全国制覇に導いた本田裕一郎氏から2020年にバトンを引き継いだ榎本監督。就任5年目での決勝進出に「自分の手腕に関しては、人に恵まれたと思っています。特に選手たちは流経らしく戦ってくれる人に恵まれたと思います」と語りつつ、「前任の本田先生が5つの星をつけたので、そこに1つでも足していけるようにと思っていますが、あくまで自分らしく、新しい流経というのをこれからも作っていこうと思いましたし、そういう意味では少し手応えを感じました」とコメント。その上で、共に戦ってきた選手たちには次のようなメッセージを送った。
「選手たちは見たくないと思いますが、今日のゲームをもう一度振り返って、どうするべきだったか、どうやったら強くなれるのか、上手くなれるのか、勝てるのかということを自問自答していくことが先につながると思います。この悔しい思いを糧にステップアップできる選手たちだと思っているので、それを期待したいです」