高木豊「2024年の助っ人通信簿」
パ・リーグ編
(セ・リーグ編:4段階で最高評価・低評価だったのは?>>)
パ・リーグの外国人助っ人は、ピンポイントで活躍する選手がいた一方で、全体的に見ると苦しんだ選手が多い印象がある。セ・リーグに続いて、高木豊氏に【◎、〇、△、×】の4段階で評価してもらった。
◆ソフトバンク【野手×/投手◎】
4年ぶりにリーグ優勝を果たしたソフトバンクでは、先発に転向したリバン・モイネロが最優秀防御率のタイトルを獲得。ダーウィンゾン・ヘルナンデスは勝ちパターンのセットアッパーとして活躍するなど優勝に大きく貢献した。
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「アダム・ウォーカー(退団)は、巨人時代に見せていたパンチ力をほとんど発揮できず、期待外れでした。ジーター・ダウンズは打席数が少なく評価が難しいですが、バットの芯でボールを捉えるのがうまい。初球から簡単に合わせられたりと、大崩れしないタイプですね。ポストシーズンで川瀬晃が活躍した翌日にダウンズを起用するなど、首脳陣からの評価は高いんでしょう。
モイネロは立ち上がりに少々難がありましたが、そこを切り抜けたら安定感がありましたし、先発転1年目でふた桁勝利は評価できます。あと、カーター・スチュワートは真っすぐの制球がよくなりました。時折フォアボールを出して自滅しそうになるのが気になりますが、それでも踏ん張れるようになりましたし、来季はふた桁勝利が期待できます。
ヘルナンデスはクロスステップするフォームが大きな武器で、左打者はボールが背中側からくるように見えるんじゃないですか。ボールの力もありますし、ほとんどが真っすぐなのにあれだけ三振が取れる。モイネロが先発に回った穴を忘れてしまうほどの絶対的な存在だと思います。
ロベルト・オスナは春先の状態が悪すぎました。"ソフトバンク唯一のアキレス腱"と言われた時期もありましたね。最終的には調子を上げて帳尻を合わせた感もありますが、彼の実力を考えると物足りなかったです」
【主な助っ人外国人の成績】
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(野)ウォーカー<退団> 20試合 打率.169 1本塁打 3打点 出塁率.182 OPS.443
(野)ダウンズ 7試合 打率.273 1本塁打 2打点 出塁率.385 OPS.794
(投)モイネロ 25試合 11勝5敗 防御率1.88
(投)スチュワート 20試合 9勝4敗 防御率1.95
(投)ヘルナンデス 48試合 3勝3敗21ホールド3セーブ 防御率2.25
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(投)オスナ 39試合 0勝3敗5ホールド24セーブ 防御率3.76
◆日本ハム【野手〇/投手△】
2年連続最下位から2位へ浮上した日本ハム。フランミル・レイエスは期待されていた長打力をいかんなく発揮し、躍進の原動力となった。また、アリエル・マルティネスは不振の時期が長かったが、主軸として一定の存在感を示した。
「マルティネスは、春先はすごく悪かったですが、悪いなりに粘ってフォアボールを選んだり印象的なホームランがあったりしたので、評価が難しいです。8月頭あたりまでは4番で期待に応えられなかった部分が多く、歯がゆかったでしょうね。
そのマルティネスに代わり、打線の中心で働いてくれたのがレイエス。レイエス個人は◎です。ファームに落とされたりと最初は全然ダメでしたが、日本のピッチャーの攻め方をよく勉強し、チームの雰囲気に馴染もうと前向きでした。彼のホームランでベンチの雰囲気が変わることもありましたね。
ドリュー・バーヘイゲンは、(9月に)プロポーズに成功したことが報じられた頃はすごくよかったんです(笑)。ただ、あまりにも試合数が少なすぎますし、勝率5割では困ります(2勝2敗)。多少ブランクはありますが、日本での登板経験もあるわけですし、もっと登板数と貯金を殖やしてほしいピッチャーです。
パトリック・マーフィー(退団→テキサス・レンジャーズとマイナー契約)はボールに力はあったのですが、コントロールに難がありました。ブライアン・ロドリゲス(退団)は7年在籍しましたが、近年は成績が下降気味でしたね。クイックが苦手ですし、走者を出した時の対応が苦しかったです。
アニュラス・ザバラ(再契約)は160キロ超えの真っすぐが魅力ですが、コントロールにまとまりがないので、そこを解消できれば化けそうです。登板数が少ないですし、イニング途中からの登板が多かったので評価が難しいのですが、走者がいないイニング頭から投げさせるといいかもしれません」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)マルティネス 126試合 打率.234 13本塁打 57打点 出塁率.336 OPS.740
(野)レイエス 103試合 打率.290 25本塁打 65打点 出塁率.348 OPS.912
(投)バーヘイゲン 9試合 2勝2敗 防御率3.12
(投)マーフィー<退団→テキサス・レンジャーズとマイナー契約> 40試合 1勝2敗13ホールド 防御率3.26
(投)ロドリゲス<退団> 10試合 1勝1敗3ホールド 防御率2.08
(投)ザバラ<再契約> 16試合 0勝0敗1ホールド1セーブ 防御率1.20
◆ロッテ【野手◎/投手△】
セ・リーグで2年連続本塁打王を獲得したネフタリ・ソトが、リーグ2位の88打点。2023年のパ・リーグ本塁打王、グレゴリー・ポランコとともに長打力不足の打線を牽引した。
「ソトは、独走で打点王に輝いた山川穂高(ソフトバンク)を抜いたときがありましたね。勝負所で打ってくれた印象が強いですし、試合の流れを引き寄せる先制のタイムリーも多かった。パ・リーグ1年目で十分な成績を残しました。
ポランコも頑張ったとは思いますが、2023年からの上積みがなかったですね。ちょっと勝負弱いですし(得点圏打率.238)、状態の波が激しい印象です。下位打線ならまだしも、中軸を打つ選手であれば、もう少し勝負強くなってくれないと。本塁打は23本とそれなりだったので、いい場面での一発が増えるといいですね。
投手陣は、C.C.メルセデス(退団)が投げる時に点が取れませんでした。打線と噛み合わないので白星がつかず、我慢できなくなって打ち込まれるという悪循環で不運な部分があった。
シーズン途中に入団したダラス・カイケル(退団)は力で抑えるタイプではないのですが、間の取り方や試合の作り方を知っていますし、フィールディングや牽制もいい。サイ・ヤング賞投手の片鱗を見せてくれましたね。キャッチャー陣も、いきなりカイケルのいいところを引き出すのは難しかったでしょう。日本の野球にも慣れていないなかで、数字には表れていませんがよく投げていたと思います」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)ソト 132試合 打率.269 21本塁打 88打点 出塁率.330 OPS.780
(野)ポランコ 118試合 打率.243 23本塁打 60打点 出塁率.318 OPS.778
(投)メルセデス<退団→台湾の統一ライオンズと契約> 21試合 4勝8敗 防御率2.71
(投)カイケル<退団> 8試合 2勝4敗 防御率3.60
(投)コルデロ<退団> 5試合 0勝1敗2ホールド 防御率7.20
◆楽天【野手×/投手△】
3年連続Bクラスとなった4位の楽天。元日本ハムのコディ・ポンセには先発として、元広島のニック・ターリーは勝ちパターンとして期待されたが、それぞれが結果を残せなかった。
「マイケル・フランコは、(日本ハム本拠地の)エスコンフィールドのみの成績(打率が.387)なら◎ですが、ほかで全然打てないので×です。シーズン8本の本塁打のうち4本がエスコンですし、ちょっともったいないですね。実力はあるのでしょうが、発揮できていません。
ポンセ(退団)も個人としては×です。不満を抱えながら投げていることが見え見えなんですよ。雨が降った時もそう。相手も同じ条件で投げているのですが、自分だけ不幸を背負ったかのような感じで投げていて、集中力が散漫です。DeNAのアンソニー・ケイと似ているところがあって、イライラがナインにも伝染していました。
宋家豪は2023年に比べて少し防御率が悪化しましたが、毎シーズン40〜60試合くらい投げていることを考えると疲れもあるでしょう。毎年のように安定的に投げるピッチャーはなかなかいないですし、チームに非常に貢献していることを考えれば、宋家豪は個人として〇です。
楽天の先発ピッチャーの崩れ方を見ると、中継ぎ陣にどうしても負担がかかりますし、そういう意味でもブルペンをよく支えています。それに比べてターリーは、投げてみなければわからない感じでしたし、期待外れでしたね」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)フランコ 68試合 打率.218 8本塁打 30打点 出塁率.251 OPS.596
(投)ポンセ<退団→韓国のハンファ・イーグルスと契約> 15試合 3勝6敗 防御率6.72
(投)宋家豪 41 試合 1勝2敗17ホールド 防御率3.18
(投)ターリー 17試合 0勝1敗2ホールド1セーブ 防御率2.93
◆オリックス【野手×/投手◯】
3連覇から一転、5位と低迷したオリックス。加入した外国人選手のピッチャーたちは一定の活躍を見せたが、野手が誤算だった。
「レアンドロ・セデーニョ(退団→西武に移籍)は、シーズン序盤は打点を稼いでいたのですが、尻つぼみでしたね。前を打つバッターとの兼ね合いもあるのですが、シーズン通しての打点が少なすぎる。パワーが魅力なので、心機一転、西武で頑張ってほしいですね。
マーウィン・ゴンザレス(退団→引退)はケガに悩まされました。内野の守備がしっかりしていましたし、ここぞの一発も魅力的でしたが、今季の成績では厳しい。今季限りでの引退となりましたが、野球に真摯に取り組む姿勢は周囲にいい影響を与えますし、今後は指導者などでいい道を歩んでほしいです。
アンダーソン・エスピノーザは、本拠地の京セラドーム大阪だとすごくいいんですよ(5勝、防御率2.18)。ほかの球場でも同じようなピッチングができればもっと勝てます。通算の防御率も2.63と安定していますし、22試合登板は先発ローテーション投手として及第点です。
ルイス・カスティーヨは、ふた桁勝てる力はあると思うんです。ボールがよく動きますし、面白いピッチャーだと思うのですが、なかなか結果が出ない。オリックス打線が打てず、チーム全体の状態が悪かったので勝ちがつかず、波に乗れませんでしたね。
ルイス・ペルドモは途中入団でしたが、2023年にロッテでホールド王になったこともあってか、自信を持って投げているように見えました。また、アンドレス・マチャドに関しては、『クローザーは平野佳寿ではなく、最初からマチャドでよかったんじゃないか』と思うほどの安定感でした。エスピノーザ、ペルドモ、マチャドは残留するようですし、今年も期待できるでしょう」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)セデーニョ<退団→西武に移籍> 98試合 打率.260 15本塁打 37打点 出塁率.320 OPS.758
(野)ゴンザレス<退団→引退> 23試合 打率.131 1本塁打 2打点 出塁率.185 OPS.365
(野)トーマス<退団> 10試合 打率.000 0本塁打 0打点 出塁率.000 OPS.000
(投)エスピノーザ 22試合 7勝9敗 防御率2.63
(投)カスティーヨ<退団> 15試合 3勝5敗 防御率2.96
(投)ペルドモ 28 試合 1勝0敗14ホールド4セーブ 防御率0.64
(投)マチャド 53試合 5勝3敗14ホールド23セーブ 防御率2.03
◆西武【野手×/投手△】
歴史的な低迷で最下位となった西武は、打線の中軸として期待したヘスス・アギラーとフランチー・コルデロが不発。核のない打線は深刻な得点力不足を招いた。
「アギラー(退団)はバッティングに柔らかさがあって期待していたのですが、日本のピッチャーにアジャストできませんでしたね。コルデロ(退団)はパワーが売りでしたがバットに当たらない。1年目の助っ人はある程度我慢して起用していくことも多いのですが、チーム事情がよくなくて我慢できない状況でした。
7月に支配下契約した両打ちのアンソニー・ガルシアも、期待していたんですけどね......。両打ちで、打席の雰囲気がいいですし、パワーもあるので慣れたら面白いかなと。今年は育成契約になるようですが、体が大きくて若いですし、長い目で育てていってもいいかもしれません。
ボー・タカハシは先発と中継ぎ、どっちつかずだった感じですね。でも、球種は少なめなのでショートイニングのほうがいいでしょう。33試合に登板(先発は9試合)していますが、いろいろな場面で投げてくれたのはチームにとってありがたかったはずです。
ジェフリー・ヤン(退団→コロラド・ロッキーズとマイナー契約) は、勝ち負けがつかない試合でよく投げていましたが、信頼を得るまでのピッチングではなかったということでしょう。
アルバート・アブレイユ(退団)は個人としては〇でしたが、シチュエーション次第なんですよ。イニングの頭から投げさせるといいピッチングをしますけど、ランナーを背負った場面で登板するとダメ。同点の場面で出た時の負けが何回かあったと思います。ボールに力があってスライダーがいいのでクローザー候補かと思っていましたが、退団となったようで残念です」
【主な助っ人外国人の成績】
(野)アギラー<退団> 30試合 打率.204 2本塁打 10打点 出塁率.274 OPS.575
(野)コルデロ<退団> 23試合 打率.129 1本塁打 4打点 出塁率.151 OPS.351
(野)ガルシア<育成契約> 19試合 打率.131 1本塁打 4打点 出塁率.232 OPS.494
(投)ボー・タカハシ 33試合 2勝9敗 防御率3.22
(投)ヤン<退団→コロラド・ロッキーズとマイナー契約> 37試合 0勝0敗2ホールド 防御率5.58
(投)アブレイユ<退団> 52試合 2勝5敗11ホールド28セーブ 防御率2.39
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。
■元プロ野球選手のYouTuberのパイオニア
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