ラグビー日本代表候補の早稲田大「サトケン」涙の終幕 リーグワンで帝京大ライバル青木恵斗にリベンジを誓う

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2025年01月15日 07:10  webスポルティーバ

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 赤黒ジャージーをまとった「サトケン」の4年間の挑戦が終わった──。

 1月13日、今年で61回目となる全国大学ラグビー選手権大会の決勝戦が開催された。東京・秩父宮ラグビー場で激突したのは、17度目の優勝を目指す関東対抗戦・全勝優勝の早稲田大と、2度目の4連覇を狙う関東対抗戦2位の帝京大。チケットは完売し、19,035人のラグビーファンがスタジアムを埋めた。

 春は帝京大が60-7で大勝し、夏と秋の対抗戦は早稲田大が巻き返したため、戦前の予想は五分。しかしフタを開けてみれば、前半こそ2点差という拮抗した内容で折り返したものの、後半は帝京大がFWの接点の強さでゲームを支配し、最後は33-15という大差で幕を閉じた。

 早稲田大の107代目キャプテンとしてチームを牽引し、昨夏は日本代表にも選出された「サトケン」ことHO佐藤健次(4年)はノーサイド後、人目をはばからずに大粒の涙を流した。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

「ふがいないキャプテンだったかもしれないですけど、早稲田大学ラグビー部で主将をやれて、幸せな1年間でした。最後に自分たちが持っているものを全部出して、全員で優勝という結果をつかみたかったですが、やっぱり帝京大さんのほうが強かったです」

 記者会見の席で、佐藤は嗚咽しながら声をしぼり出した。

 昨季の大学選手権では準々決勝で京都産業大に28-65で大敗し、年内でシーズンを終えるという屈辱を味わった。新チームとなった今季はどの大学よりも早く昨年1月9日に始動し、決勝の日は本気で日本一を目指した371日目だった。

 帝京大に大敗した昨春は、主力メンバーが揃わずに苦しんだ。だが、夏からスクラムとディフェンスが調子を上げ、9月以降は関東対抗戦で全勝優勝し、決勝戦まで一気に駆け上がった。

【誤算だったスクラムでの劣勢】

 5大会ぶりの優勝を目指した佐藤は、決勝に向けて強い気持ちで臨んでいた。

「高校時代(桐蔭学園)は3年連続(花園)決勝の舞台に立ちましたが、大学では2年と4年しか立てなくて......。(ファーストジャージーの)アカクロを着られるのも最後なので、早稲田大に恩返ししたい。1年生の時から大田尾(竜彦)監督に成長させてもらったので、最後に胴上げしたい!」

 決勝のテーマは「Beat Up」。相手をボコボコに倒す、という意味を込めた。「2年前の大学選手権決勝で帝京大に負けた(20-73)借りを返したい」(佐藤)。

 前半はファーストスクラムで相手に反則を与えてしまい、主導権を握られて2トライを献上。早稲田大もラインアウトを起点に持ち前のアタックで2トライを返し、後半最初にはPG(ペナルティゴール)を決めて逆転に成功した。

 しかし、今シーズン強化してきたスクラムで劣勢となり、徐々にプレッシャーを受けるようになる。さらにはSO服部亮太(1年)を中心とした自慢の高速アタックも帝京大ディフェンスに阻まれ、後半は失トライを重ねていった。

「帝京大さんのディフェンスがよかった。後半は風上でエリアを取っていきたかったが、接点で受けてしまい、敵陣22メートル内に入ってスコアできなかったのが敗因です」(佐藤)

 早稲田大にとって一番の誤算は、やはりスクラムだったと言えよう。夏〜秋と優位だったスクラムでペナルティを繰り返してしまい、先手を取ることもペースをつかむこともできなかった。

 対して帝京大は、スクラムの強い控えPR・HOを先発させて、対抗戦ではNo.8だった体重120kgのカイサ・ダウナカマカマをLOに起用。4番のジャージーを背負いながら5番の位置で起用するなど、早稲田大のスクラム対策をしっかりと施してきた。

「ファーストスクラムでアングル(斜めに押してしまう反則)を取られ、パニックを起こしてしまった。最初のスクラムで逆にペナルティを取っていたら、自分たちの試合になったかなと思います。僕の責任なのかな。本当に申し訳ない」(佐藤)

【卒業後はリーグワン埼玉でプレー】

 大田尾監督は、4年間指導した佐藤の成長した姿を見て、こう語る。

「京都産業大学に昨季大敗し、そこから日本一を本当に目指せるのかと、半信半疑のスタートだったところも少なからずあった。しかし佐藤が、まずは自分たちがもっとやらないといけないと、1年間継続して体で示してくれた。

 持ち前の明るさで、日本一を目指せるところまで連れてきてくれたのは、仲間に対して本気で向き合う健次のキャプテンシーのおかげ。本当に、歴代でもすばらしいキャプテンだった」

 優勝できなかった大学での4年間を、佐藤はこう振り返る。

「負けっぱなしの大学ラグビーでしたが、大田尾監督のもとでラグビーができて僕は幸せでした。多くの先輩、同期、後輩とラグビーができて、すごく有意義な4年間でした。チームのみんなに頼りっぱなしでしたけど、同期や主務に支えてもらって感謝しています。でも、やっぱり結果が出なかったので、トータルして見れば悔しい大学4年間だったかな」

 帝京大のキャプテンFL青木恵斗(4年)は、ともに花園連覇を成し遂げた桐蔭学園の同期。注目のキャプテン対決は、青木に軍配が上がった。

「恵斗には『優勝おめでとう』と伝えました。恵斗がいなかったら、僕はここまでのプレーができていないです。ふたりで切磋琢磨したからこそ、大学で互いに主将として決勝の舞台でやれた。リーグワンでやり返そうかなと思います!」(佐藤)

 そして最後はサトケンらしく、トレードマークである大きな笑顔を見せた。

「大学ラグビーで得たことを、今日の敗戦の悔しさを一生忘れず、今後のラグビー人生でがんばっていきたい。2027年は(ワールドカップ日本代表として)スタメンで出ます!」

 将来の日本代表を担う「サトケン」佐藤健次は休む間もなく、大学ラグビーで優勝できなかった悔しさを胸に、埼玉パナソニックワイルドナイツで新たな挑戦を始める。

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