「NBAダンサーは夢の仕事」 ウォリアーズを盛り上げる日本人女性たちに直撃インタビュー

0

2025年01月15日 07:11  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

NBAダンサー・宮野茉莉さん 高橋南保子さん インタビュー

 レイカーズの八村塁に加え、グリズリーズから河村勇輝がデビューし、日本のバスケットボールファンのNBA熱が高まっている。そんななか、NBAを盛り上げる日本人ダンサーがいることを知っているだろうか。今回、ゴールデンステイト・ウォリアーズのダンサーである宮野茉莉さんと高橋南保子さんに、本拠地チェース・センターで直撃インタビューを行なった。

【直感的に惹かれたウォリアーズ・ダンスチーム】

 宮野茉莉さんは、玉川学園高等部チアダンス部、玉川大学体育会ダンスドリルチームの出身。在学中は、全米学生選手権や世界大学選手権で優勝した実績を持つ。大学卒業後、Bリーグ専属チアリーダーなどとして活動。そうしたなか、チアリーディングの本場アメリカへの夢が膨らみ、NBAダンサーを目指した。

 そして2022−2023シーズン、ウォリアーズ・ダンスチームの難関オーディションに初めて合格すると、今季再度オーディションを通過し、2季ぶりにチームに戻ってきた。

 さらに今季、ウォリアーズ・ダンスチームのルーキーとして宮野さんの玉川学園高等部の2学年下の後輩・高橋南保子さんが仲間入りした。高橋さんは日本女子体育大学時代には世界選手権に2度出場し、優勝を1度経験している。

 大学卒業後は、日本で中学・高校の非常勤講師をしながら、Bリーグでチアリーダーとして2シーズン活動。母校のチアダンス部の指導も行なった。高橋さんは、NBAダンサーとして活躍していた先輩・宮野さんの姿を見て、「キラキラした姿に憧れた」と自身もNBAダンサーを志したのだ。

 NBAは計30チームあり、ダンスチームのカラーもそれぞれ。「言葉で表現するのは難しいけれど、ウォリアーズ・ダンスチームはダンスもチームもとても魅力的で、一瞬にして惹きこまれていきました」と宮野さんは語る。

 ウォリアーズは、サンフランシスコに本拠地があり、NBAで過去7回の優勝を誇る強豪だ。2024年パリ五輪でアメリカの金メダルに貢献したステフィン・カリーが在籍する。

 宮野さんは、大学を卒業して間もない頃、ウォリアーズ・ダンスチームのオーディション前に開催されるプレップ・クラス(準備クラス)にオンラインで参加。チームの魅力を感じ、「いつかメンバーになりたい」と英語やダンススキルを磨いてきた。

「ひとつのジャンルに捉われず、豊かなジャンルのダンスに挑戦できるのがウォリアーズ・ダンスチームの魅力で、直感的に惹かれました。私自身、学生の頃からヒップホップやジャズ、ポンダンス、クラッシックバレエを基礎とした『リリカル』を踊ってきたので、経験を生かせると感じたんです」と宮野さんは話す。

 一方、高橋さんも「初めて見た時から素敵なチームだと感じました。ダンスからチームの温かさを感じ、心が奪われました」とうなずく。

「チアリーダーは、パフォーマンスをしながら会場が一体となる空間をつくり上げ、人の心を動かすことのできる仕事。試合を見に来ているファンの皆さんからの温かい声援とともに、選手を含む全員と団結できた時は、大きな達成感があります。大学卒業後、一時期はチアリーダーとは別の道に行こうと思いましたが、Bリーグで活動するなか、あらためてチアリーダーこそが自分がやりたかったことだと感じました。

 プレップクラスに参加し、『自分らしく楽しんで!』とコーチが常に声をかけてくれたこと、大好きなダンスを通じて仲間とつながれたことで、このチームに入りたいと、さらに強く思いました」と高橋さんは話す。

【NBAダンサーはドリームジョブ】

 2024−2025シーズンのオーディション応募者は、約200人。自己紹介や振り付けのビデオ審査を通過し、ふたりは対面オーディション参加のため渡米した。

 そしてセミファイナルを突破し、グループ面接と最終オーディションに向けた振り付けを学ぶトレーニングキャンプに進んだ。宮野さんは「2022−2023シーズンを経験し、その後、人としても、ダンサーとしても成長して戻ってきたこと、それからNBAダンサーは私のドリームジョブであることをアピールしました」と面接を振り返る。

 高橋さんは、練習してきた英語で、涙ながらに必死に思いを伝えたという。「あこがれたこのチームで成長したい。ダンスを通して、観客や教え子に感動や勇気、希望を届けたいと伝えました」。

 最終オーディションを迎えたのは昨年7月末。会場はウォリアーズの本拠地、チェイス・センター。一般に公開された屋外会場で、ふたりは盛大な拍手と声援を受けた。その3日後、公式ホームページで合格者が発表され、最終メンバー24人に宮野さんと高橋さんが選出された。

 高橋さんは「正直自信はなかった」と言い、合格の喜びを爆発させた。「海外挑戦は初めてだし、英語もダンスも不安だらけでした。オーディションが進むにつれ、審査も厳しくなっていきましたが、楽しむことが大事だと意識して、力を出しきれました」。

 ふたりはプレシーズンでともにコートに立った。高橋さんは、チームで円陣を組んだ時、感極まって涙が止まらなかったという。

【夢の舞台で表現するそれぞれの人生】

 そして10月27日、ホーム開幕戦を迎えた。レギュラーシーズンは82試合あるが、そのうちウォリアーズ・ダンスチームが踊るのは、ホームゲームの41試合。チームのメンバーは学校や他の仕事と両立しているため、コートに立つのは毎回16〜18人だ。

 しかし、「オープニングナイト」と呼ばれるホーム開幕戦は、全員でコートに立つことができる。この日、これまでのふたりのチアリーダー人生を全身で表現した。

「たくさん練習してきたので、気合いを入れて挑みました。メンバー同士で声を掛け合ったり、アイコンタクトをしたりしながら、いつも以上にお互いを感じてパフォーマンスをすることができました」と高橋さん。

 ウォリアーズ・ダンスチームは、週3日のチーム練習に加えて、試合のほか、チームのイベントに参加することもある。アメリカでの生活が2回目になる宮野さんは、心に少しの余裕ができ、「休日は友人とランチしたり、映画を見に行ったりしています」と話す。

 一方、海外生活が初めての高橋さんは英語を勉強中で、日々の暮らしも精一杯。「何かあればいつでも助けてくれる温かいチームメイトがいて心強いです」と語る。

 夢の舞台に立った宮野さんと高橋さんは目を輝かせながら、今季の意気込みを語った。

「ラッキーなことに2025年のオールスターゲームは、本拠地のチェイス・センターで開催されます。オールスターゲームで踊ることも私の夢だったのでとても楽しみです」(宮野さん)

「夢のチームの一員として成長し、自分らしくチームに貢献したいです。また、日々、選手のすばらしいプレーに大きなパワーをもらっています。私たちもダンスを通して、多くの人にパワーを届けていきたいです。そして、ともに全力を尽くして、プレーオフまで突き進めるよう頑張ります」(高橋さん)

 ふたりはいつも「楽しむ」ことを大切に、最高の笑顔で今シーズンを駆け抜けていく。

【プロフィール】
宮野茉莉 みやの・まり 
1997年、東京都生まれ。玉川学園高等部、玉川大学リベラルアーツ学部卒業。4歳からクラッシックバレエを始め、高校、大学で競技のチアダンスチームに所属。2018年にポーランドで開催された世界大学チアリーディング選手権大会ではチームポン部門で優勝。2022−2023シーズンにウォリアーズ・ダンスチームとして活動。2024年に同チームのオーディションに再び挑戦し、2シーズン目を迎えた。趣味は旅行とスポーツ観戦。

高橋南保子 たかはし・なほこ 
1998年、東京都生まれ。玉川学園高等部、日本女子体育大学舞踊学専攻卒業。高校、大学で競技のチアダンスチームに所属。ICUチアリーディング世界選手権に2度出場し、2018年Cheer Jazz部門で優勝。大学卒業後は母校で体育教師として働きながら、チアリーダー・ダンサーとして活動。2024年にウォリアーズ・ダンスチームのオーディションに合格。趣味はおいしいものを食べること。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定