広岡達朗が語る村上宗隆と清宮幸太郎への期待と不安 「打率2割4分台でメジャー挑戦なんて馬鹿げている」「監督が新庄じゃなかったら...」

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2025年01月15日 07:20  webスポルティーバ

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 同世代のライバルというのは、いつの時代も見る者を熱くさせる。村上宗隆(ヤクルト)と清宮幸太郎(日本ハム)──言わずと知れた、同世代のライバルである。

 高校時代は通算111本塁打を放った清宮に注目が集まったが、プロ2年目以降は村上がリード。そして2022年に村上が史上最年少で三冠王を獲得すると、その差は決定的となった。だが昨年、清宮は規定打席未到達ながら打率3割をマークし、15本塁打を放つなど、才能を開花させつつある。

 はたして、ふたりの差は縮まったのか? ヤクルト、西武の指揮官として三度の日本一に輝いた広岡達朗に、来シーズンのメジャー挑戦を明言している村上と、ようやく覚醒した感のある清宮について語ってもらった。

【圧倒的な成績を残してメジャーに行くべき】

「昨シーズン、村上がホームランと打点の二冠王を獲ったからといって、打率2割4分台でメジャー挑戦なんて馬鹿げている。村上は22年に史上最年少で三冠王を獲ってから、なんだかやりきってしまったように見える。ここ1、2年は目標を失って、過去の自分と戦っているような気がしてならない。

 メジャーに挑戦することがモチベーションアップにつながるのはいいことだが、ピッチャーと違って野手は日本で圧倒的な成績を残して行かないとすぐダメになるぞ。吉田正尚や鈴木誠也を見れば、日本であれだけ活躍したのに、メジャーでは不動のレギュラーになれていない。それが現実だ」

 村上は、2024年が.244、23年は.256と三冠王に輝いた22年以降、特に打率の面で苦労しているのがわかる。巨人からヤンキースに移籍した松井秀喜も、渡米前の4年間は3割を超えていたし、井口資仁も移籍前の2年間は3割超えだ。

 メジャーは、155キロ以上のストレートを高めに投げるハイファストボールが全盛で、高めの速いストレートと鋭い変化球を低めに投げ、高低差でバッターを打ちとるのが主流となっている。

 村上がその攻めに対応できるかどうかはやってみなければわからないが、オリックス時代に二度の首位打者を獲得し、7年間の通算打率.327の吉田正尚(レッドソックス)でさえ、1年目こそ140試合に出場し、打率.289(リーグ5位)、15本塁打、72打点と健闘したが、2年目の昨季は108試合の出場にとどまった。

 その理由のひとつとして、球団が求める数字に達していないこともあるが、守備での貢献度の低さもある。昨季はおもにDHでの出場で、外野の守備についたのはわずか1試合だけ。吉田にもう少し足と肩があって、守備範囲が広ければもっと高い評価を受けていたはずだ。村上にしても、ただ打つだけじゃなく、それ以外の部分も必要になってくる。

「村上のポジションはサードだが、2021年から3年連続最多失策を記録し、昨年も15失策。お世辞にもうまいとは言えないどころか、下手な部類に入る。外野に転向とか言われているが、外野手のレベルは日本とは比べものにならないほど高い。どのポジションにつくのか、現時点ではわからないが、相当苦労するのではないか」

 かつてマニー・ラミレスや松井秀喜が、外野でワーストグラバーに選ばれたことがあったが、ラミレスはホームラン王争いするほどの長距離砲だったし、松井にしても100打点を稼ぐクラッチヒッターとして重宝された。

 つまり、守備に不安のある村上がレギュラーとしてやっていくには、打撃タイトルを獲得するほどの成績を残さなければいけないわけだ。

【清宮幸太郎の変化】

 一方の清宮は、7年目の昨季、キャンプ前に左足首を負傷し二軍スタート。4月中旬に一軍昇格を果たしたが、思うような結果を残せず5月上旬に二軍降格。この頃はメディアでも、環境を変えることが清宮にとって一番の良薬といったように、トレード候補に挙がっているという報道がなされていた。

 ファームで調整後、6月に再昇格し、しばらくは打率1割台と低迷していたが、7月9日の西武戦でバックスクリーンに今季第1号を放つと、月間打率.383、3本塁打と活躍。8月も打率.320、7本塁打と好調を維持。最終的に規定打席には到達しなかったが、打率.300、15本塁打、51打点の数字を残し、チーム6年ぶりAクラス(2位)入りに貢献した。

 後半戦の打棒により、ようやく覚醒したと報道されているが、広岡の意見はこうだ。

「この程度の数字で、メディアは何を褒めちぎっているんだ。高校時代に100本以上のホームランを放ち、入団会見では『世界の王貞治選手の記録を塗り替えたい』と豪語したにも関わらず、ここまでこれといった結果を残せていない。監督が新庄(剛志)じゃなかったら、これほど辛抱強く起用されていたかどうかもわからない。高校時代に金属バットでいくらホームランを打とうが、プロに入ったらそんな実績など関係ない。もともと清宮は大器晩成型だと思っていたから、オレは早稲田大学進学を勧めていたんだ」

 厳しい言葉が並ぶが、昨シーズン後半のバッティングについては成長も認めている。

「打てるようになったのは、まず間(ま)が取れるようになったこと。バッティングというのは、突き詰めれば、タイミングの取り方とスイング軌道だ。この2つがしっかりできていれば、自ずと結果はついてくる。一流の打者というのはタイミングと軌道をチェックポイントにしていて、好不調の波を少しでも小さくするよう努力している。

 もうひとつ清宮の大きな変化は、状況を見極め、この場面で自分がすべきことは何かを理解してプレーできるようになったことだ。いつも自分が決めてやろうと思って打席に入るのではなく、次の打者につなげることもチームプレーであり、勝利を呼び込むのだ。清宮のバッティングを見ていると、それがほんの少しだけわかってきたんじゃないか。でもまだまだだ」

 いずれにしても、今シーズンどれだけチームの勝利に貢献できるか、またどれだけの数字を残せるのかが重要である。

「昨シーズン後半の打席の感覚を忘れず、今シーズンにつなげられるかは、このオフの取り組みにかかっている。『もうあとがない』と気持ちでやらないと、いよいよ危ないぞ!」

"投高打低"の状態が続いているプロ野球界。それでも次代のスラッガーとして入団してきた村上と清宮には、圧倒的なバッティングを見せてほしいという願いがあるのだろう。ふたりにとって、今シーズンが野球人生のターニングポイントになることは間違いなさそうだ。

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