話題のアニメ『メダリスト』原作からどう変化?  声優・春瀬なつみが“心の叫び”で表現した学校生活

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2025年01月16日 08:20  リアルサウンド

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『メダリスト』(つるまいかだ/講談社)
■『メダリスト』大きな話題に

 2025年冬アニメ『メダリスト』が1月4日より放送スタート。第1話からX上で日本のトレンド1位に輝くなど、大きな話題を呼んでいる。  


  同作はつるまいかだによる大ヒットマンガを原作としており、フィギュアスケートを題材として、スポ根的な“熱い”ストーリーを描いているのが大きな特徴だ。今回はその魅力を紹介しつつ、アニメ版と原作の違いについても触れていきたい。  


 『メダリスト』の物語は、スケーターとして挫折続きの人生を送ってきた明浦路司が、フィギュアスケートの世界に憧れる少女・結束いのりと出会うところから始まる。コーチと教え子という関係になった2人は、それぞれの才能をぶつけ合いながら“メダリスト”への道を駆け上がっていく。


  幼い少女がフィギュアスケートに挑戦する物語……という風にまとめると、一見華やかでハートフルな作品のようにも見えるだろう。しかし作品の本質はそんな印象とは真逆だと言える。というのも同作は少年マンガにも負けていないくらい、熱血でスポ根な展開が目白押しだからだ。


  そもそもいのりは、生半可な気持ちでスケートの世界に飛び込むわけではない。彼女の出発点にして原動力となるのは、“自分にはスケートの他に何もない”という絶望の感情だ。


  学校では成績が悪いだけでなく、他人と同じことが上手くできないため、周囲からキツくあたられる日々。母親は表面的にはいのりのことを思いやっているものの、実際には彼女の本心と正面から向き合わず、最初から諦めているような態度でスケートをやることを止めようとする。


  そしていのり自身、自分が不器用にしか生きられないことを誰よりも痛感している……。そこで一筋の光明としてすがりつくのが、フィギュアスケートなのだ。いのりにとってスケートはたんなるスポーツではなく、いわば“人生をかけた戦い”に近い。だからこそ彼女は楽しむだけでなく、勝利することによって自分の存在価値を証明しようとする。


  そこでライバルとして立ちはだかるのは、自分より先にスケートを始め、技術を積み重ねてきた選手たち。最終的な目標は、同じ年ですでに大会で華々しい活躍を見せている天才少女・狼嵜光であり、いのりは大きく出遅れてしまったという焦燥感を抱えつつひたむきな努力を重ねていく。


原作とアニメで変わった描写は? 

  人生をかけた戦いを繰り広げるのは、いのりだけではない。もう1人の主人公であるトレーナーの司も、ハードな過去の持ち主だ。全日本を目指すなら5歳から始めるべきだとされるスケートを中学生から始め、クラブに入れず必死にアルバイトしながら練習。20歳になってからシングルの夢を諦め、アイスダンスに転向するも、その後大きな挫折を経験した……という過去をもつ。


  すなわち、司はいのり以上にハンディキャップが大きな環境でスケートを続けてきた人物なのだ。だからこそ司は、いのりの気持ちに寄り添い、夢を叶えさせるために全身全霊を尽くしていく。『メダリスト』とは、いわば2人分の人生をかけた挑戦の物語だと言える。


  アニメ版では、こうした原作の熱さがしっかり表現されているのだが、いくつか改変されているポイントもある。たとえば第1話では、いのりの学校生活に関する描写が若干マイルドになっていた。


  小学校のグループ発表を描いた場面。アニメでは、いのりはクラスメイトから気を遣われ、「何もしなくていいよ」とやさしく声をかけられていたが、原作ではまったく態度が違う。はっきりと邪険にされており、「もううんざり」「一緒のグループ嫌だった」といったキツい言葉を浴びて落ち込む姿が描かれている。


  さらに別の場面では、他の生徒たちが自分の陰口や心ないウワサ話をしているところを耳にして、思わず落涙するいのりの姿も。悪意の有無は分からないものの、イジメに近い雰囲気を感じるシーンだ。どちらも衝撃の強い描写なので、アニメではより多くの人が視聴しやすいよう改変を行ったのかもしれない。


  また原作の第1話では、短い回想シーンを挟みながら司の人生における挫折が暗示されていたが、アニメではほとんど省略されている。おそらく視聴者が付いてきやすいように、序盤は“いのりが主役の物語”として構成する意図があるのだろう。司の過去については、今後まとめて描かれるのではないだろうか。


  こうした構成の変更によって、ともすれば物足りない展開となってしまいそうだが、それを補っているのがメインキャストによる魂のこもった演技。いのり役の声優・春瀬なつみは、気弱さと意志の強さという矛盾した性質を表現しつつ、悲壮感が漂う“心の叫び”によって視聴者の心を震わせている。この演技のおかげで、絶望感を伝えるエピソードが減っても物語の説得力が損なわれずに済んでいるのだ。


  また司役の声優・大塚剛央は、コミカルなシーンでは頼りなげな声を出しつつ、いのりと対峙した際には力強く迫力のある発声を行っている印象。それによって、司の胸に燃え上がる情熱や過去の重さを伝えることに成功している。こちらの場合も、声優の演技によって原作で削られた要素が上手くフォローされていると言えるだろう。


  元々評価の高いマンガだった『メダリスト』だが、アニメではいのりと司の物語をどんな風に描いていくのだろうか。メインキャストの演技も含めて、注目していきたいところだ。



このニュースに関するつぶやき

  • 原作は読んでないけどアニメは中々いい感じ。今期の中じゃかなりベストかな。今後も見ていきたい。
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