OPPOが3年ぶりハイエンド「Find X8」を投入する真意 カメラはライカと競合せず、折りたたみはキャリアとの協業がマスト

0

2025年01月16日 11:21  ITmedia Mobile

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia Mobile

日本では約3年ぶりのハイエンドスマートフォンとなる「OPPO Find X8」

 OPPOのスマホやタブレットなどを日本で手掛けるオウガ・ジャパンは、約3年ぶりとなるハイエンドモデル「OPPO Find X8」を発売した。日本市場では、Reno Aシリーズを中心にしたミッドレンジモデルやローエンドモデルを多数展開していたOPPOだが、ハイエンドモデルは「OPPO Find X3 Pro」以降、投入を見送っていた格好だ。その間も、OPPOはグローバルでハイエンドモデルを継続的に投入し続けており、老舗カメラメーカーのハッセルブラッドとの協業も始まっていた。


【その他の画像】


 海外市場の動向を見たユーザーからのハイエンドモデルを待ち望む声は、日増しに大きくなっていた。こうした期待の高まりを受け、オウガ・ジャパンは満を持してFind X8を発売した経緯がある。とはいえ、なぜ3年ものブランクが空いてしまったのか。3年という期間が空いただけに、Find X8の次がいつになるのかも気になるところだ。


 また、Reno Aシリーズなどとは異なり、Find X8はグローバル仕様に近く、日本向けのカスタマイズは施されていない。日本市場で日本人向けのカスタマイズされたモデルを展開してきたオウガ・ジャパンだが、Findシリーズはこれまでの端末と方針が異なるのか。こうした疑問を、オウガ・ジャパンの専務取締役を務める河野謙三氏と営業推進部プロダクトマネージャーの中川裕也氏にぶつけた。


●ハッセルブラッドとライカはそもそも競合していない


―― Find X8は、約3年ぶりとなるハイエンドモデルになりました。お休みしていたハイエンドモデルを再び投入することになったきっかけを教えてください。


河野氏 どのメーカーも同じだと思いますが、今後3年、5年の中でどの方向に向けて製品を開発するのかという経営方針があり、OPPOはAIに経営資源を投入することを決めていました。その一環として、24年のMWCではブースこそ出していませんでしたが、AI研究者を集めたレセプションをやったりもしています。研究者を集めて、オープンしたばかりのAI研究センターやOPPOの開発する「Andes GPT」の説明をしていまいた。


 スマホメーカーとしてAndes GPTを組み込むにあたり、どういう方向性に特化すればいいのかは長年議論してきました。LLM(大規模言語モデル)といっても、どこに特化していくかの方向性はさまざまです。文系に強いものもあれば、理系に強いものもある。そうではなく、文と文のつながりに強いものもあり、性能評価は多岐にわたります。その方向性が決まったのと、Find X8が出るタイミングがほぼ重なったことで投入に至りました。“におわせ”は1年ぐらい前からしていましたが(笑)、ちょうどいいタイミングだったと思います。


―― ハッセルブラッドと協業したカメラが載っていたことや、他社がライカブランドを冠したスマホのラインアップを強化していたこともあり、どちらかといえばカメラ性能で決めたのだと思っていました。


河野氏 ハッセルブラッドとの協業は2年前からで、Find Xシリーズには標準で入っています。カメラを推しているのは今に始まったわけではありません。ただ、ハッセルブラッドと協業したのは日本市場では初めてだったということもあり、そこもフィーチャーしました。


―― AIの方向性が見えてきたからというのが少し意外でした。


河野氏 OPPOのAIは、ハイエンドからローエンドに至るまで同じ性能のものを搭載できるのが強みになっています。ハイエンドだからAIを推したいというのではなく、たまたまこのタイミングではこの製品のバランスが一番よかった。画面サイズもそうですし、バッテリー容量もそうですし、もちろんカメラもそうです。テクノロジーのショーケースとしてベストということもあり、この製品で導入しています。


―― とはいえ、シャープやXiaomiからライカブランドのスマホが出ている中、対抗軸としてのハッセルブラッドというようなことは意識したのではないでしょうか。


河野氏 ブランドのことなので僕が言うべきではないのかもしれませんが、ハッセルブラッドとライカはそもそも競合しているのではなく、目指しているものが違うと思っています。一般的にはライバルとみられるかもしれませんが、そうではないということです。車に例えるなら、スポーツカーとSUVぐらい用途が違う。


 ハッセルブラッドはもともとプロフェッショナルの現場で使われていたもので、製品写真を撮るようなプロ用のスタジオには必ずありました。壁面一面に引き伸ばさなければいけないような写真を撮るので、ハッセルブラッドを使うといったような用途ですね。一方のライカはストリートスナップなどに使われていて、ファインダーも独特です。街中で記憶に残るものをスナップしたいという使われ方をしていたと思います。


●「ハイコンテクスト」な日本語はAI対応のハードルが高い


―― AIに話を戻しますが、日本語対応が3月以降というのはAndes GPTがそのタイミングで日本語に対応するということなのでしょうか。


河野氏 はい。アップデートで対応する予定です。


―― これはOPPOに限った話ではないのかもしれませんが、GoogleでもAppleでも日本語は後回しになることが多いと思います。なぜ時間がかかるのでしょうか。


河野氏 言葉にはローコンテクストとハイコンテクストの2つがあり、例えば英語であれば、ちょっと文章がおかしかったり、「a」や「the」が抜けていたりしてもそれほど気になりません。ところが日本語は、ちょっと違っただけでも意味が通じなくなることがあります。例えば、「私はカメラが好きです」の「は」を「を」に変えると、「私をカメラが好きです」になって意味が変わってしまう。文章の組み立て方が独特で、世界唯一といってもいいぐらいです。学習のさせ方によっても、表現の幅が変わってしまいます。


 AIは上流の工程でいろいろな文献を学習させ、その中から言葉を刻んでいくのですが、その過程で六法全書を学習させるのとX(旧Twitter)を学習させるのとでは、アウトプットがまったく違う。それを均一にしていくだけでも日本語は難しいと思います。自分もMacの上でローカルなLLMを動かしていていますが、それは感じています。


―― 確かに日本語はハイコンテクストですね。


河野氏 スマホに載るものは万人が使うので、アウトプットに「○○○草不可避」とか出てきたら困るじゃないですか(笑)。独特な言葉もあって、僕もNTT(コミュニケーションズ)にいたとき、総務省に出す報告書を書く係だったのですが、そこでも使う言葉を直されたりします。会社の独自の用語もあって、例えば工程をまとめたスケジュールチャートのことを「線表」と言います。NTTの文献だけを読み込ませたら、そういう表現になってしまう。そこから不要なものを取り除いていくチューニングも必要になります。


●「Find X8 Pro」ではなく「Find X8」の投入を決めた理由


―― Find X8にはProモデルもあったと思います。日本に導入したのがFind X8になったのはなぜでしょうか。


河野氏 コスメティックな外観上の差は当然ありますが、日本に訴求したいAIやハッセルブラッド、バッテリーや軽さ、薄さがほぼ共通だったからです。あえてProを導入して価格が上がるよりも、基本性能はほとんど変わらないと言っても過言ではない無印モデルを日本に、安い値段で提供できる方が価値になると思ったからです。


―― 望遠カメラには違いもありますが。


中川氏 その反面、どうしても厚みが出てしまいますし、重くもなってしまいます。


―― ただ、価格が海外に比べて高いという声もあります。


河野氏 それはRAM16GB、ROM512GBモデルを入れているからです。海外にはRAMが8GBのモデルもあり、それと比べると少し高くなってしまってはいますが、ぜひ公平にスペックを見比べてみてほしいですね。このRAM、ROMでの価格としては頑張っていると自負しています。もっとぶっちゃけていえば、アリエク(AliExpress)価格より1万円ぐらい高いだけで、その価格差で日本の保証がついてくるので十分買いだと思っています。


―― 仕様的にはグローバル版とほぼ同じですよね。対応バンドもでしょうか。


河野氏 そこも触っていません。もちろん、技適は取っていますが(笑)。本当はドコモのバンド(5Gのn79)まで対応したかったのですが、全てのものにはお金がかかります。そういったことまで考えると、やはりバンド対応もキャリア採用が前提にないと正直厳しいですね。


●メーカーとしての方向性を見せるためにキャリアとは組まず


―― 前回のFind X3 Proはauから発売されましたが、今回はありませんでした。この点はどうお考えでしょうか。


河野氏 今回は、メーカーとしての方向性を出すアイテムとして、Find X8を発表しました。単に製品を出したいというだけではなく、方向性を見せたい、そのためのツールというのがFind X8の位置付けです。だとすると、今回はあえてキャリアと組まない方がいい。その方が、いち早く出すことができるからです。グローバル発表の1週間後に日本でお披露目するというのは、今までなかったことです。


 もちろん、2025年、その翌年や数年先までキャリアと一緒にやらないというわけではありません。ただ、OSバージョンアップをどうする、セキュリティアップデートをどうする、おサイフケータイをどうするといった話を詰めていくことまで必要になるので、キャリアモデルとして出そうとなると1週間での発表は不可能です。


―― ユーザーのハイエンドモデルを求める声が多かったともうかがいました。これも投入を決めた理由でしょうか。


河野氏 それはうそ偽りなく、本当にありがたいですね。おっしゃるように、出してほしいという声は非常に強かったです。中には日本に来られて、「『Find X7』がすごくよかったので次も欲しい、日本でもFindが買えるようになればいいのに」という方までいました。


―― ただ、今の市場環境を考えると台数が少ないハイエンドモデルを発売するのはなかなかハードルが高かったのではないでしょうか。


河野氏 そうですね。100万台ぐらいしか売れないので(笑)


―― いやいやいや。そこはうそ偽りがありますよね(笑)。


河野氏 まず当然ながら1台からは買えません。まとまった数がなければ導入はできませんし、そこは経営上の交渉になります。日本でどうしても売りたい、だから最低ロットを減らしてほしいということは伝えています。ただ、OPPOも日本は最重要拠点と位置付けているので、導入に関してはかなり柔軟に対応してもらえました。


―― 逆に、これまでのFind Xシリーズでそこまでしなかったのは、AIの方向性が完全に定まっていなかったことが大きかったのでしょうか。


河野氏 まず、グローバル対応しているかどうかが大きな理由としてあります。OPPOには、中国限定モデルとグローバルモデルの2つがあり、グローバルモデルとして発売されるかどうかが1つ目のハードルになります。今回、本社がFind X8シリーズをいち早くグローバル発表したのも、彼らが今後見据えるべきものがAIだと捉えているからです。


 また、今回の発表では周辺機器の拡充に力を入れていくというメッセージを出しました。マグネット式の充電器などを一緒にお見せするためにも、Find X8はメーカーとして重要です。


●iPhoneユーザーにOPPOならではの体験価値を提供していきたい


―― 周辺機器に関しては、OPPOに限らず使えるものというアナウンスがありました。これはiPhoneなどで使えるものをサードパーティーとして出していくということなのでしょうか。


中川氏 アクセサリーのご要望は非常に多くいただいていたので、OPPOに限らず、iPhoneでもお使いいただけるようなものは拡充していきたいと考えています。AndroidとiOSの垣根を超えたものを出していきたいですね。


河野氏 充電器もそうですし、モバイルバッテリーもそうです。海外だと、携帯電話ショップの中に自分だけのスマホケースを作れるようなコーナーがありますが、グローバルではそういうこともやっています。


―― なぜそこまで広げていくのでしょうか。単純にもうかるからというだけではなさそうですが。


河野氏 1つには、iPhoneからの乗り換え需要が高まっていることがあります。私どもの製品にもiOSからの移行アプリがありますが、iPhoneからAndroidに乗り換えたいというニーズがあり、その中で候補として知っていただくためにはOPPOを“どこかで見たことがあるメーカー”にする必要があります。モバイルバッテリーを使っていたので、だったらスマホも触ってみようといったきっかけになればいい。


 もともとOPPOのスマホを使っている方に、より使いやすくなるようなアクセサリーを提供する目的で開発していたものですが、そこから一歩踏み出し、iPhoneをお使いの方にもOPPOならではの体験価値を提供していきたい。その1つにソフトウェアがあり、もう1つとしてハードウェアに踏み込んだ形になります。


●折りたたみスマートフォンをSIMフリー単体で売ることはない


―― 実際にFind X8を出してみて、反響はいかがでしたか。


河野氏 2つあります。1つは、既にOPPOというメーカーを知っていた方からの反響です。Reno AシリーズやAシリーズを使っていた方に、「OPPOにはこんなスマホもあるんだ」と喜んでいただけました。「Reno7 A」から「Reno9 A」で目立つようなスペックアップをしなかったこともあり、「OPPOがいいよ」とReno9 Aをご家族などに勧めた人の中には、あまり変わっていなかったことにガッカリされた方がいます。これはFind X8を日本に持ってきた目的のほんのごく一部ではありますが、この端末を見て「こういう製品もあるんだ」と認知していただけたのは非常に大きかったと感じています。


 もう1つはカメラ好きの方々からの反響です。発表会でも「ライカ対ハッセルブラッド」のような質問が出ましたが、先ほど申し上げたように方向性が異なるため、万人がライカ好きというわけではありません。確かにライカで撮れる絵はエモいですし、個人的にもすごくいいなとは思います。こういうように撮れていたらいいなという絵作りをしてくれる。ただ、それとは違う絵がほしい方もいます。Find X8を見たそういう方々からは、「ハッセルブラッドなら触ってみたい」「買ってみたい」という声をいただいています。


―― ちなみに、前回のハイエンドから3年たちましたが、次回はさすがに3年待つことはないですよね。


河野氏 こち亀(こちら亀有公園前派出所)に日暮というキャラがいますが……(笑)


―― いやいや、それだと4年に1回になっちゃうじゃないですか(笑)。Findシリーズにはフォルダブルもありますが……。


河野氏 はい。Findには縦型と横型、両方の折りたたみがあります。ただ、少なくとも折りたたみはSIMフリーで単体販売することはないですね。語弊があるかもしれませんが、半ば壊れることが前提の端末は出せません。キャリアショップであれば、持ち込んでその日のうちに修理してもらえますし、そういった安心感があれば買ってもらえる。実際、縦折りのものについては極端に壊れやすいということもないのですが、折りたたみに関してはキャリアとの協業がマストだと思っています。


 キャリア側の想定しているお客さまと、私どもの端末が提供できる価値が合えば、ぜひ採用していただきたいですね。一方で、メーカーとして見せていきたいものがあれば、Find X8を単体で出したようにやっていきたい。Find X8は非常に好評でありがたい限りですが、そういったお声をいただきながら次期モデルも発売できればいいなと思っています。


●取材を終えて:Find X8の投入は将来のAI拡充に向けた布石


 3年ぶりにハイエンドモデルを投入したオウガ・ジャパンだが、その背景には、AI搭載に本腰を入れたOPPOの方針があった。AI対応はスマホのゲームチェンジになる可能性があるといわれているだけに、タイムリーにそれを市場に示していくことが重要になるというわけだ。逆にいえば、このタイミングでAI機能に先行するメーカーにキャッチアップできなければ、先細りしてしまう可能性もある。


 OPPOはクラウドで処理するAIにも注力しているため、今後、同様の機能がReno Aシリーズに搭載されていく可能性もある。それを最高のパフォーマンスで動かすなら、現時点ではハイエンドモデルが最適解だ。その意味で、Find X8の発売は将来の拡大に向けた布石と捉えることもできる。ただし、肝心の日本語への対応がアップデートになる点は少々残念。3月以降のアップデートで、この機種の真価が発揮されることを期待したい。



    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定