ドコモが国立競技場やアリーナの運営に注力するワケ 「年間15日ほどは自社で興行できる規模」目指す

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2025年01月17日 11:31  ITmedia Mobile

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国立競技場について、25年4月からNTTドコモを代表とするコンソーシアム「国立競技場 × Social Well-being グループ」が運営を行うことが決定した

 2025年、NTTドコモが運営に関わるスタジアム・アリーナ施設が3つ加わる。1つは、2024年11月に運営に関する契約を締結した新しい「国立競技場」だ。


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 さらに、名古屋の「愛知IGアリーナ(25年7月1日開業)」、神戸の「ジーライオンアリーナ神戸(25年4月4日開業)」も開業する。ドコモは2019年に「有明アリーナ」の運営に参加しているが、2025年はその規模を大きく広げることになる。


 通信事業者とイベント会場の関係といえば、人が集中する施設としてネットワーク整備を強化する取り組みの他、イベントやスポーツチームの後援といった関わり方が多い。なぜドコモは、ここに来てスタジアム・アリーナ運営に関して各地で取り組みを進めているのだろうか。


●スポーツ施設×街作りで注目のスマート・ベニュー事業


 周辺の街作りとの協調や交流施設としての機能を持つ、スタジアム・アリーナなどの複合施設を「スマート・ベニュー」と呼ぶ。このスマート・ベニューを中心とした街作りを、全国で民間企業や自治体が進めている。この事業には複数の民間企業が参入しており、多くはスポーツ、エンタテイメント事業による人のにぎわいを起点に、周辺開発やインフラ整備などを含めた地域活性化や情報発信への貢献が期待されている。


 スポーツに興味のある人なら、日本ハムファイターズの「エスコンフィールドHOKKAIDO」として知られる北海道北広島市「北海道ボールパークFビレッジ」や、ソフトバンクも連携する長崎県長崎市「長崎スタジアムシティ」が分かりやすいだろう。これらの施設は、周辺の街やビジネスの活性化を視野に入れて運営しており、スタジアム自体も普段から集客に力を入れている。これらは民間の事例だが、国や自治体も保有する施設の運営を民間企業に委託する取り組みを進めており、民間ならではの柔軟な取り組みによる街作りやにぎわい施設としての運用を期待している。


 なぜ近年、特に2025年に複数のスタジアム・アリーナ施設がオープンするのだろうか。理由の1つとして、2019年にプロバスケットボール「B.LEAGUE」が発表した新B1「Bプレミア」リーグ構想が影響している。以後各地でBプレミアにも対応するアリーナ施設の整備計画が進み、ドコモが関わる愛知IGアリーナとジーライオンアリーナ神戸もB.LEAGUEのチーム本拠地として運用される。


 なお、施設を中心に街の整備やにぎわいを創出する構想や、官民連携で運営する施設は以前からもある。規模はさまざまだが、IT通信系企業を中心に挙げると、ダイエー時代から続くソフトバンクの「みずほPayPayドーム福岡」もその1つだ。国が進めている施設や資産を官民連携で活用する事例のうち、民間の大手企業が参画した例としては指定管理者制度や管理許可制度を用いた楽天の「楽天モバイルパーク宮城」やDeNAの「横浜スタジアム」などが挙げられる。


●ドコモが目指す、コンテンツ重視のスタジアム・アリーナ施設運営


 では、NTTドコモがこれらスタジアムやアリーナ施設の運営で具体的に何を目指しているのだろうか。


 NTTドコモの櫻井稚子執行役員は「お客さまの心を動かすエンタテイメントを、リアルやオンラインを問わず、いつどこにいても最適な形で届けられることは、ドコモにとって重要な役割だと考えています」と語る。


 スタジアム・アリーナ施設ではホスピタリティにも注力し、5GやIOWNなど最先端の通信環境を備えた、ファミリーで何時間でも滞在できるような環境を目指していく。


 地域活性化でドコモが表にでる形ではないが、商業施設や雇用など経済の部分やDX化の面で貢献しつつ、dアカウントを通じて個々のニーズに応じた飲食店や交通機関、モビリティ、宿泊施設などの案内といった細かい部分に手が届くサービスを通じて地域を盛り上げたいとのことだ。


 ドコモならではの特徴としては、自社で興行やコンテンツ制作に取り組んでいる点がある。また、吉本興業とのジョイントベンチャーであるNTTドコモ・スタジオ&ライブ通じて、映像制作、興行、アーティスト創出を行っている。「将来的には各アリーナで年間15日ぐらいは自社で興行できる規模を目指している」という。


●2025年は通信とデータ、現実がつながった新しい体験に期待


 通信事業者といえば、今ではスマートフォンや通信インフラが注目されがちだが、昔からビジネスはもちろん個人向けでも通信を用いた新しい生活スタイルを提案してきた。2025年通信事業者のビジネスでは、ドコモのスタジアム・アリーナ運営とそれに伴うスポーツやアーティストの公演の他、交通インフラやコンビニ、流通など新しい生活スタイルに関する発表や体験が増える年になりそうだ。


 2020年代前半は、コロナ禍で急激に進んだ社会のデジタルシフトとスマートフォンを中心とした生活を、社会や個人が当たり前の物として受け止める期間だった。今後はさらにスマートフォンの利用を前提とした社会制度やインフラの整備、サービスの提供が広がることになる。


 エンタテイメントに関しては、全ての人がスマートフォンを通じてどこでも効率よく楽しめる時代に入った一方で、現実空間のイベントがより注目を集めている。今後はスポーツや音楽だけでなく、新たな表現やコミュニケーションをもとにしたイベント企画をどれだけ増やせるかも重要だ。近年だとeスポーツやVtuberもリアルでの集客を増やしており、こういった興行の拡大と定着に関する動きもある。eスポーツに関しては以前からNTTグループも取り組んでおり、IOWN事業も含め相性はよさそうだ。ドコモを含め、2025年以降の各社の取り組みに注目したい。



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