日本HPは1月16日、東京都内で「2025年度事業戦略説明会」を開催した。
2024年に「AI PC元年」を宣言した同社は、自社製PCの出荷台数に占める「AI PC」(NPUを統合したCPU/APUを備えるPC)の比率が15%に達したことを明らかにした。これを2025年には25%、2027年には50%まで引き上げる計画だ。
説明会では、個人/法人PC向けからワークステーション、ゲーミング製品に至るまで、幅広い新製品も発表された。
●法人向けCopilot+ PCにIntel/AMD版
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法人向けノートPCでは、「新しいAI PC」ことCopilot +PCに準拠する新製品「HP EliteBook X G1シリーズ」2機種を発表した。
本シリーズでは、QualcommのSnapdragon X Eliteを搭載する「HP EliteBook Ultra G1q」が発売済みだが、今回はIntelのCore Ultra 200Vプロセッサを備える「HP EliteBook X G1i」と、AMDのRyzen AI PRO 300プロセッサを備える「HP EliteBook X G1a」の2モデルを追加し、ラインアップを拡充する。
両モデルには、HP独自のAIアシスタントアプリ「HP AI Companion」がプリインストールされている。
HP AI Companionは、ChatGPTエンジンを活用した対話機能「Discover」、社内文書の分析・要約を行う「Analyze」、PC設定を最適化する「Perform」を単一インターフェースで提供する。
月額利用料は不要で、デバイス購入代金に含まれる。クラウドでのAI処理とNPUを活用したローカルAI処理を組み合わせ、セキュリティとパフォーマンスの両立を実現している。ただし、現時点ではβ版という扱いとなる。
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HP EliteBook X G1aは、NPUのピーク時性能が50TOPS(毎秒50兆回)の「Ryzen AI 7 PRO 360」か、55TOPS(毎秒55兆回)の「Ryzen AI 9 HX PRO 375」からプロセッサを選べる。メモリはLPDDR5X-8533規格で、容量は32GBまたは64GBとなる。ストレージはPCI Express 4.0接続の512GB SSDだ。
ディスプレイは2880×1800ピクセルの14型有機ELパネルで、ピーク輝度を400ニトとすることで視認性を向上している。バッテリーの定格容量は74.5Wh(4セル)で、稼働時間は最長10時間45分(MobileMark 25での計測値)となる。本体重量は約1.497kgだ。
一方、HP EliteBook X G1iはSoCの選択肢が豊富で、以下のものから選べる(★印が付いているものは「Intel vProプラットフォーム」対応)。
・Core Ultra 5 226V(40TOPS NPU/16GBメモリ)
・Core Ultra 5 228V(40TOPS NPU/32GBメモリ)
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・Core Ultra 5 236V★(40TOPS NPU/16GBメモリ)
・Core Ultra 5 238V★(40TOPS NPU/32GBメモリ)
・Core Ultra 7 258V(47TOPS NPU/32GBメモリ)
・Core Ultra 7 268V(48TOPS NPU/32GBメモリ)
ストレージはPCI Express 4.0接続のSSDで、容量は512GBか1TBから選べる。ディスプレイは1920×1080ピクセルの14型液晶で、最大輝度400ニトの標準パネルの他、電子プライバシーフィルター「HP Sure View 5」対応の高輝度パネル(最大輝度800ニト)も用意されている。
バッテリーの定格容量は56Wh(3セル)または68Wh(6セル)から選択可能で、駆動時間は最長21時間30分(6セル構成におけるMobileMark 25での計測値)となる。本体重量は、最軽量構成で約1.184kgとなる予定だ。
HP EliteBook X G1i 14 AI PCは2月下旬の発売を予定しており、最小構成の想定価格は40万1500円となる。HP EliteBook X G1a 14 AI PCは1月下旬の発売を予定しており、最小構成の想定価格は47万7950円となっている。
●電源オフでもリモートワイプ可能な法人向けセキュリティ
主に法人をターゲットとするセキュリティブランド「HP Wolf Security」では、ポートフォリオを拡充する。大企業や自治体向けには「HP Wolf Enterprise Security」を、中堅/中小企業向けには「HP Wolf Pro Security」を提供する。
HP Wolf Enterprise Securityでは、小規模仮想マシンを使って脅威を封じ込める「HP Sure Click Enterprise」、リモートアクセスを脅威から保護する「HP Sure Access Enterprise」、サプライチェーンセキュリティを提供する「HP Enterprise Security Edition」を用意。2025年春より順次提供を開始する。
HP Wolf Pro Securityは、先述のEnterprise Securityから大規模組織向けの機能を省いたイメージだ。次世代アンチウイルス機能と、小規模仮想マシンを使った脅威の封じ込め機能「HP Sure Click」を利用可能だ。
●ワークステーションがAI開発の新たな選択肢に
CES 2025で披露された新しい「AIワークステーション」も、日本投入が決定した。14型モバイルワークステーション「HP ZBook Ultra G1a」と、小型デスクトップワークステーション「HP Z2 Mini G1a 14」だ。モデル名からも分かる通り、いずれもAMDの最新APUを搭載している。
ZBook Ultra G1a 14は、Ryzen AI MAX/Ryzen AI MAX PROプロセッサを搭載している。メモリ(LPDDR5X-8533規格)は最大128GBまで対応している。ストレージはPCI Express 4.0接続のSSDを最大2台搭載可能で、容量は最大4TBとなる。
ディスプレイは1920×1200ピクセルの14型液晶か、2880×1800ピクセルの14型有機ELとなる。グラフィックスメモリはメインメモリと共有だが、最大96GBまで占有可能だ。本体重量約2.3kgで、ACアダプターは300W出力のものが付属する。
Z2 Mini G1aは、約168(幅)×200(奥行き)×86(高さ)mmのコンパクトさが魅力のデスクトップワークステーションだ。こちらもRyzen AI MAX PROプロセッサを搭載している(非PROモデルはない)。メモリ(LPDDR5X-8533規格)は最大128GBまで対応している。ストレージはPCI Express 4.0接続のSSDを最大2台搭載可能で、容量は最大4TBとなる。
両機とも外部GPUは搭載していない。しかし、プロセッサに統合されたGPUやNPUは強力で、「PyTorch」や「TensorFlow」など主要AIフレームワークを単独で稼働できる実力を備える。HPでは小規模言語モデル(SLM)のファインチューニングなど、従来はサーバ環境が必要だった開発作業をワークステーション上で実現できるとしている。
ZBook Ultra G1a 14がは3月中旬の発売予定で、最小構成の想定価格は31万6800円となる。Z2 Mini G1a Workstationは5月以降の発売を予定しており、価格はまだ決まっていないとのことだが、「最上位構成でも70万円台を見込んでいる」(担当者)。
●AIでゲーミング体験を向上できる新型OMEN
ゲーミングPCでは、OMENブランドから「OMEN MAX 16」「OMEN 16L」の2モデルを発売する。
OMEN MAX 16は、その名の通り16型ディスプレイを備えるゲーミングPCだ。Core Ultra 200HXプロセッサを備えるIntel版が4構成、Ryzen AI 300プロセッサを備えるAMD版でが2構成用意される。
メモリはいずれもDDR5-5600規格のSO-DIMM×2で、容量は32GBまたは64GBを選べる(32GBメモリ構成で容量を増やす場合は換装が必要)。外部GPUはGeForce RTX 50 Laptop GPUシリーズで、Intelモデルでは最上位の「GeForce RTX 5090 Laptop GPU」を備える構成もある。ストレージはIntelモデルがPCI Express 5.0接続、AMDモデルがPCI Express 4.0接続のSSDで、容量は1TBだ。
ディスプレイは2560×1600ピクセルの16型で、60〜240Hz駆動に対応するIPS液晶(最大輝度500ニト/sRGB 100%カバー)か、48〜240Hz駆動に対応する有機EL(最大輝度400ニト/DCI-P3 100%カバー)が用意されている(有機ELディスプレイはIntelモデルのみ)。
冷却機構には「OMEN Cryo」とベイパーチャンバーを採用し、最新かつ高性能なCPUとGPUをしっかりと冷やせるようになっている。キーボードは日本語配列で7色に光る他、本体下部も間接照明のように演出する。本体重量は約2.68kgだ。
本機では、プリインストールされているユーティリティーアプリ「OMEN Gaming Hub」に「OMEN AI」というAI機能が統合されている。OMEN AIは機械学習ベースのAIで、ゲームに最適なシステム設定を自動的に行うという。ただし、ゲームタイトルごとに設定を行うため、対応タイトルでないと原則として利用できない。
OMEN 16Lは、その名の通り容積16Lのタワーボディーを備えるゲーミングデスクトップPCだ。Coreプロセッサ(第14世代)またはCore Ultra 200Sプロセッサを搭載するIntel版と、Ryzen 8000Fプロセッサを備えるAMD版が用意されているが、いずれも内蔵GPUなしの「F」プロセッサとなる。
外部GPUはモデルによってGeForce RTX 3050、GeForce RTX 4060、GeForce RTX 4060 Tiのいずれかとなる。メモリはDDR4-5600規格のDIMM×2で、容量は16GBまたは32GBだ(16GB構成で増量する場合は換装が必要)。ストレージはPCI Express 4.0接続の1TB SSDとなる。
約155(幅)×308(奥行き)×337(高さ)mmのコンパクトサイズながら、最大500W出力の80PLUS PLATINUM認証取得電源を内蔵している。
OMEN MAX 16のIntel版は2月中旬の発売を予定しており、最小構成の想定価格は52万8000円となる。AMD版については4月中旬の発売予定で、価格は後日公開される。
OMEN MAX 16はIntel版とAMD版共に2月中旬の発売を予定しており、最小構成の想定価格はIntel版が22万円、AMD版が20万9000円となる。
●オールインワンPC「HP OmniStudio X」にも新モデル
発表会の本編では触れられなかったものの、個人向けのディスプレイ一体型デスクトップPC「HP OmniStudio X」にも新モデル(G2)が登場する。
デザインは従来モデルを踏襲しているが、CPUがCore Ultra 200Vプロセッサに変更された他、ディスプレイの縁やロゴが黒基調に変更され、見た目が引き締まった。最小構成の価格は27型モデルが22万900円、32型モデルが34万9800円となる。発売時期は追って公開される予定だ。
●モジュール式のゲーミングマウス
HyperXのゲーミングマウス「Pulsefire Saga」シリーズは、モジュール式のデザインを採用していることが特徴だ。交換用のシェルやボタンを切り替えて形状を細かくカスタマイズ可能で、最大16通りの組み合わせに対応する。
さらに、3Dプリンタ用のデータも公開される予定で、3Dプリンタを持っていれば独自形状や色違いのパーツを製作可能だ。
本製品には有線版とBluetooth対応の無線版(Pro Wireless)が用意されており、ユーザーの手の大きさやプレイスタイルにいろいろ選びやすい。
●Polyの新型ヘッドセットも参考展示
HPの事業部の1つとなった「Poly(ポリー)」は、国内未発表のポータブルヘッドセット「Voyager Legend 30」と「Voyager Legend 50 UC」を参考展示していた。
いずれも4基のマイクを搭載し、AIで口元の音声と周囲の雑音を解析・分離することでノイズを低減し、風切り音を抑える「WindSmartテクノロジー」を備える。
両製品共に日本でも発売する方向で検討が進められているが、時期など詳細は未定だ。
●AIで印刷レイアウトを最適化する「HP Print AI」 日本提供は?
PCだけでなく印刷にもAI活用を広げる取り組みとして、HPが開発中の「HP Print AI」も紹介された。
HP Print AIはHP製プリンタのデバイスドライバに付属するAI機能で、Webページやスプレッドシートなど複数ページに分割されがちなコンテンツをAIが自動解析し、きれいに1枚に収めるレイアウト最適化を行える。
現在、本機能は米国でβ提供が行われている。日本市場については、既存モデルへの適用の可否など各種検証を行った上で導入するかどうか決めるとのことだ。
日本国内での正式展開や既存プリンターへの適用可否は今後の検証を経て判断される見込みだ。
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