ZTEがスマホブランドを刷新するワケ 「ダントツで最下位」だった認知度の向上に本腰も、上位モデルに課題あり

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2025年01月18日 06:11  ITmedia Mobile

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ZTEは、nubiaブランドのスマホ2機種とタブレット1機種を発表した。日本での同社の戦略や、ブランド変更の狙いを解説する

 中国大手メーカーのZTEは、1月14日にnubiaブランドのスマホを2機種発表した。中心に据えたのが、フォルダブルスマホで2024年に発売された「nubia Flip 5G」の後継機にあたる「nubia Flip 2」。廉価スマホの「nubia S 5G」も披露した。いずれも、ソフトバンクのサブブランドであるY!mobileで販売される。ソフトバンク版のZTE端末はこれまでLiberoというブランドで展開していたが、2機種の投入に合わせ、名称をnubiaに統一する。


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 とはいえ、Liberoもソフトバンクが長く続けてきたブランドで、特にY!mobileでは主力シリーズの1つになっている。なぜソフトバンクやZTEは長く続けてきたブランドを変更するに至ったのか。その背景には、ブランドの知名度やZTEのグローバル戦略があった。ここでは、同社の発表した2モデルを改めて紹介するとともに、ソフトバンクやZTEの思惑を読み解いていきたい。


●コスパを売りにしたnubia Flip 2、超格安のnubia S 5Gも登場


 ZTEは、nubia Flip 2とnubia S 5Gの2機種を開発した。2機種ともY!mobileが取り扱うことを表明しており、前者は1月23日に発売される。nubia S 5Gは、発表と同日の1月16日から店頭に並んでいる。前者は、2024年に導入された「Libero Flip」の後継機。縦折り型のいわゆるフリップ端末の中で、群を抜いて安いという特徴はそのまま受け継いでいる。後者のnubia S 5Gは、「Libero 5G」シリーズを踏襲したエントリーモデルだ。


 nubia Flip 2は、フリップ型端末の差別化要素になっている外側ディスプレイでLibero Flipとの違いを打ち出した。先代のLibero Flipは円形の外側ディスプレイを搭載していたのに対し、nubia Flip 2の3型外側ディスプレイは“縦長”に形状を改めた。これによって、スマホのアプリをほぼそのまま、外側ディスプレイに表示することが可能になっている。


 一般的なスマホのメインディスプレイと比べると小さいものの、閉じたままでもほとんどの操作を行えるのがこのアスペクト比のメリットだ。例えば、PayPayなどの決済アプリは、支払いをするだけなら大画面である必要はない。マップのようなアプリは大画面の方が見やすいものの、閉じたままでも使えれば、道順をサッと確認しやすくなる。コンパクトな形状に折りたたむことができ、かつそのままアプリを使えるというわけだ。


 縦長の外側ディスプレイは、先代のLibero Flipとの違いになるのはもちろん、他のフリップ型スマホとの差別化にもつながる。日本では、サムスン電子とモトローラの2社がフリップ型スマホを販売しているが、いずれも外側ディスプレイは横長。画面サイズはnubia Flip 2より大型だが、一般的なスマホに合わせて開発された縦長のアプリは表示しにくい。サムスンのGalaxy Z Flipシリーズに至っては、専用ツールでカスタマイズしないとウィジェット以外を表示できない。


 ZTEジャパンの商品企画本部長の?鵬(ピーター・デング)氏は「できるだけたくさんのアプリをサブディスプレイに対応してほしいというユーザーの声があった」としながら、「特殊な形状に合わせた(アプリの)ユーザーインタフェースの変更は必要なく、習慣を変えずにそのまま操作できる」とそのメリットを語る。フリップ型スマホの多くが、「機能が限られているウィジェット前提に設計している」(同)点を突いた格好だ。


 また、インカメラの画素数を3200万画素に向上させた他、重量も214gから191gに軽量化している。ヒンジやメインディスプレイの強度も大きく向上させ、「フォルダブルスマホは壊れやすい」というイメージの払拭(ふっしょく)に努める。その分価格は上がってしまったが、ソフトバンクは新たにY!mobile向けの「新トクするサポート(A)」を導入。端末を2年後に下取りに出すことで、実質価格は1万9680円(新規/MNPの場合)(税込み、以下同)に抑えられる。あくまで実質価格だが、ここまで安いフォルダブルスマホは異例。そのコストパフォーマンスは健在といえる。


 価格については、もう1機種のnubia S 5Gもインパクトが大きい。こちらは、いわゆるエントリースマホでスペックは低いが、指定したアプリを一発で起動できる「スマートスタートボタン」を搭載するなど、使い勝手に工夫を施した。また、nubia Flip 2と共通で「高機能通話録音」にも対応する。AIによる文字起こし機能も、アップデートで対応する見込みだ。nubia S 5Gは、5G対応ながら、一括価格は2万1956円。他社からのMNPだと、割引で1円まで価格が下がる。


●販売好調でも低い知名度、ブランド刷新でプロモーションも強化


 ZTEやLiberoと聞いても、一般のユーザーはあまりピンとこないかもしれないが、こうしたコストパフォーマンスが評価され、販売は好調だったという。ソフトバンクのLINE & Y!mobile事業推進本部 本部長を務める有馬英介氏は、「最初は苦労することもあったが、今ではY!mobileの主力メーカーとして販売が右肩上がりに伸びている」と語る。


 実際、2万2000円以下の端末に絞ると、nubia S 5Gの先代モデルにあたる「Libero 5G IV」はトップシェアを獲得しており、ユーザーから選ばれていることが分かる。有馬氏も、「コストパフォーマンスのよさは、マーケットも評価されている」と話す。格安なエントリーモデルだけでなく、フリップ型スマホのLibero Flip 5Gも同様に販売は好調だった。


 調査会社MM総研によると、ZTEは2023年度におけるフォルダブルスマホの出荷台数でシェア2位を獲得。同調査の集計期間の中で、Libero Flipが販売されていたのは約1カ月しかなかったが、それでも3位のモトローラを抜き去り、1位のサムスン電子に肉薄することができた。ZTEジャパンの副社長でモバイルターミナル事業最高責任者を務める黄凱華氏は、「2号機をいち早く投入し、フリップ型のマーケットシェアを伸ばしていき、なおかつトレンドをけん引していきたい」と意気込む。


 一方で、その知名度の低さには大きな課題があった。ソフトバンクの有馬氏によると、Liberoのブランド認知度は主要メーカーの中で断トツの最下位だったといい、アンケート調査ではわずか13%しか知られていないことが分かった。名称や具体的な数値は隠しているものの、恐らくiPhoneやGalaxy、Xperia、AQUOSなどは7割から8割近い認知率が取れており、ここには大きな開きがあった。


 ありていに言えば、ブランドを信頼した指名買いではなく、安いから取りあえず買っておく(もらっておく)スマホブランドになっていたということだ。エントリーモデルだけでシェアを稼ぐならそれでもいいかもしれないが、やや価格が上のフォルダブルスマホを販売していく上で、この状態は少々厳しい。このタイミングで端末名をnubiaに変更したのは、ゼロからブランドを再構築していった方がいいという判断が働いたことがうかがえる。


 ZTEもブランド力のなさが課題と感じていたため、nubia Flip 2の投入に合わせ、テレビCMなどの広告展開を強化する。俳優の山崎賢人さんを起用し、「異色な存在感を放つスマホ」として同モデルを幅広いユーザー層にアピールしてく方針だ。


 nubiaブランドの端末は2024年から投入しており、Libero FlipやLibero 5G IVのオープンマーケット版は「nubia Flip 5G」や「nubia ivy」という名称だったが、このブランドをキャリア版にも拡大。「昨年は準備期間で、本日はマイルストーン」(黄氏)というように、25年からブランド認知の向上に本格的に取り組む構えだ。


●グローバルでnubia推しになったZTE、日本市場での成果も重視


 ZTEがnubiaブランドを全面に打ち出す方向にかじを切った背景には、同社のグローバル戦略の影響もある。もともとnubiaは、ZTEの子会社として発足したNubia Technologyのブランドで、一時は関連会社になって関係が薄くなっていたが、現在では再び子会社となり、“元のさや”に収まっている。現在も、内部ではNubia社としてnubiaブランドを冠したスマホを開発しており、その一部は代理店を務めるFastlane Japanを通じて日本市場にも投入されている。


 ZTEがnubia Flip 2やnubia S 5Gを発表した翌日となる1月15日には、Fastlane JapanがNubiaのフラグシップモデルとなる「nubia Z70 Ultra」の投入を発表。1月21日に販売を開始することが明らかになった。さらに、同社はNubiaのゲーミングスマホ「RedMagic」も取り扱っており、その最新モデルにあたる「REDMAGIC 10 Pro」も、1月23日に先行販売を開始する予定だ。


 Nubiaが自社の名前を冠したスマホを開発するのはある種当然だが、親会社のZTEも、ブランドを統一するにあたってnubiaブランドの使用を開始する。2024年2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelonaでは、ZTEがnubiaブランドの大規模グローバル展開を発表。その一環として、ZTEが手掛けたnubia Flip 5Gや音楽特化型端末の「nubia Music」などの複数製品を同イベントで披露している。


 こうした拡大戦略を通じて、「ドイツ、イタリアやスペインなどの欧州では、若い消費者に向けて予想外の体験を提供してきた。東南アジア、中東、南米でもユーザーから高い評価を得ている」(ZTE 上級副社長 アジア・独立国家共同体担当 梅中華氏)という。日本にnubiaブランドを導入したのは、このグローバル戦略の一環だ。


 中でも、同社は日本市場を重視している節がある。ZTEジャパンの社長、周涛(シュー・トゥー)氏は「日本市場はハイクオリティー名が知れ渡っているので、そこで認知を上げ、近隣の国に参入したい。グローバリゼーションを進める上で大変適している」と語った。


 実際、ZTEは初代フリップ型スマホとなるLibero Flipを、MWC Barcelonaのグローバル発表に先立ち、日本で発売。その後継機となるnubia Flip 2も、現時点では日本向けのモデルしか披露されておらず、グローバル版が後を追う状況になるとみられる。nubiaブランドの日本上陸を発表した2024年3月のイベントでは、日本版がベースになってグローバル版が開発されとの発言もあり、日本を中心的な市場と考えていることがうかがえた。


 一方で、ブランドを広げていく上での課題も感じた。上記のように、同じnubiaブランドの端末がZTEと代理店の双方から発売されているのは、その1つだ。販売元が分かれているとユーザーに複雑な印象を与えてしまうのはもちろん、ブランドイメージを統一する上でも支障になりかねない。


 ZTEとして、ハイエンドモデルをきちんと展開できていないのも、ブランドイメージを確立する際の課題といえそうだ。この点を問われた黄氏は「価格優位性を持った端末をY!mobileで展開しながら、これをベースにして、ソフトバンクブランドにおいても魅力的な製品を投入したい。もう少し価格帯がミドルハイなものも裏で企画している」と明かす。プロモーションの強化に加え、こうした製品を、矢継ぎ早に投入していくことがnubiaの認知度を向上させる鍵になる。



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