ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
――古馬中距離の伝統の重賞、GII日経新春杯(中京・芝2200m)が1月19日に行なわれます。今春のGI大阪杯(4月6日/阪神・芝2000m)やGI天皇賞・春(5月4日/京都・芝3200m)を見据えた始動戦として今年も注目を集めていますが、このレースについてどういった印象をお持ちですか。
大西直宏(以下、大西)日経新春杯は例年、明け4歳馬が台頭する傾向が強い、というイメージがあります。ハンデ戦という特性上、(明け4歳馬は)斤量の恩恵を受けやすいうえ、成長過程において勢いに乗る時期でもあるからでしょう。
特にクラシック戦線で一定の実績を残してきた馬が、ここで結果を出すケースが目立っています。今年もそういった馬たちの活躍に期待がかかりますね。
――今年は阪神競馬場の改修工事に伴って、本来の京都ではなく、中京開催となります。距離も2400mではなく、2200mに。2021年〜2023年も京都競馬場の改修工事によって中京競馬場で行なわれましたが、中京・芝2200mというコースの特性について教えてください。
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大西 中京・芝2200mという舞台は、特徴がはっきりとしているコースです。まずは、スタートしてから1コーナーまでの直線距離が長く、序盤のペースが落ちづらいのがポイント。また、3コーナーすぎからのロングスパートが求められるため、(末脚の)持続力とスタミナが問われます。
中京開催の3年間を見ても、上がり最速馬やそれに次ぐ馬が馬券圏内に入るケースが多く見られました。今年も逃げ候補が複数いるため、平均ペース以上の流れが予想され、持続力勝負の展開になるのではないでしょうか。
――正月開催の雨の影響によって馬場が荒れてきたという話も出ていますが、そのあたりの影響をどう見ていますか。
大西 確かに先週の開催では、良馬場でも時計のかかるレースが続きました。馬場のタフさが際立っていましたね。
たとえば、1月13日に行なわれた3歳重賞のGIIIシンザン記念(中京・芝1600m)では、勝ちタイムが1分34秒6(全頭平均は1分36秒1)。対して、1月12日に中山で行なわれた3歳牝馬の重賞、GIIIフェアリーS(芝1600m)の勝ちタイムは1分32秒8(全頭平均は1分34秒5)でした。
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同じ明け3歳馬同士のマイル重賞でありながら、勝ちタイム、平均タイムともに2秒ほどの差がありました。この時計の差が、馬場状態の違いを如実に示していると思います。そういう意味では、馬場適性も問われることになるかもしれません。
――そうした状況にあって、上位人気が予想される馬たちについて、それぞれの評価をお聞かせください。
大西 明け4歳馬組では、川田将雅騎手が騎乗するヴェローチェエラ(牡4歳)は、これまでのキャリアすべてのレースにおいて、メンバー最速か2位の上がりをマーク。末脚の鋭さが光ります。ただ、タフな馬場やハイペースの経験が乏しく、今回はそれらの適性が問われる試金石となる一戦です。
ショウナンラプンタ(牡4歳)は持久力勝負に強く、舞台適性が高い1頭です。特に左回りでは、GII青葉賞(2着。4月27日/東京・芝2400m)や、GII神戸新聞杯(3着。9月22日/中京・芝2200m)で好走歴があり、この条件に合致しています。
メイショウタバル(牡4歳)は、この舞台で行なわれた神戸新聞杯での逃げ切り勝ちが印象的。力の要る馬場における適性も、これまでの戦績で証明されています。ですが、今回は同型馬が多いため、自分のペースで走れるかどうかがカギとなります。
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古馬勢では、牝馬のホールネス(牝5歳)が中京コース2戦2勝。タフな馬場やハイペースでの勝利経験もあり、この舞台での適性はピカイチです。古馬牡馬との力関係がどうかですが、この馬の好走確率は高いと見ています。
――一方、伏兵的な存在として気になる馬はいますか。
大西 関東馬のキングズパレス(牡6歳)です。左回りを得意とするこの馬にとって、中京開催へのコース替わりは好都合ですね。
それに、関東で開催される次週のGIIアメリカジョッキークラブC(1月26日/中山・芝2200m)ではなく、あえて日経新春杯を選んだ点に勝負気配を感じます。この陣営の判断は、この馬にとって理にかなった選択であるとも言えます。
昨年から重賞路線を歩んできて、GIIIでは安定した成績を収めている同馬。それは、充実期に入っている証拠です。これまでパンパンの良馬場では決め手に欠ける場面もありましたが、今の中京のタフな馬場状態は、この馬の持ち味であるスタミナと持続力を存分に発揮できる、絶好の舞台となることでしょう。
前走のGIII中京新聞杯(5着。12月7日/中京・芝2000m)では、今回も出走するロードデルレイ(牡5歳)に先着(2着)を許しましたが、今度は距離延長が大きな追い風となるはず。この馬のレースぶりを理解したであろう鞍上のミルコ・デムーロ騎手が、2度目の手綱を取ることも大きなプラス材料。さらなる前進が期待できます。
ということで、日経新春杯ではキングズパレスを「ヒモ穴」としてピックアップしたいと思います。