タコの高騰でひと皿1000円超え店も続出! 大阪庶民の味「たこ焼き」よ、逆境に負けるな!!

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2025年01月20日 06:30  週プレNEWS

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タコや小麦の高騰でたこ焼きがピンチ!

たこ焼きがピンチだ! タコや小麦の高騰で、もはや小銭で買えない価格になっている。それでも庶民の味や価格を守ろうと頑張るたこ焼き店。思わず応援したくなる、たこ焼き愛に満ちた店主たちの話を聞いてみた!

* * *

■タコの価格高騰でたこ焼きがピンチに!

たこ焼きの本場、大阪の道頓堀にあるたこ焼き店の多くは連日行列ができている。

その行列店のお値段をのぞいてみると......8個1080円(1個当たり135円)! タコ足が飛び出すほどの大タコが入ったたこ焼きは8個なんと2040円!! たこ焼きは庶民の食べ物ではなく、高級料理になってしまったのか? その事情を探ってみた。

まず、たこ焼きの価格が上がっている一因として挙げられるのは、タコの価格の高騰。総務省の小売物価統計調査で東京都区部のタコの価格を比較すると、2010年3月に241円だったものが、24年10月には513円。この十数年で倍以上になっている。

なぜこれほど値上がりしたのか? タコの漁獲で有名な兵庫県明石市の豊かな海づくり課の担当者に聞いてみた。

「そもそもの漁獲量が激減しているのです。明石市の統計では09年で1363t。しかし、21年には133tと十数年で10分の1に減っています。タコが減っている一番の原因は窒素やリンなど海の栄養源が減っていること。そのため、タコのエサになる海中の小さな生物が減り、その影響でタコも減っていると考えられます」

さらに、海外からの輸入タコも高騰しているという。大阪にあるタコを中心とした水産物輸入加工業者「カナリー」の担当者に聞いた。

「高騰の原因のひとつはヨーロッパの人がタコを食べるようになってきたこと。最近はイタリア料理やフランス料理にも使われるようになってきて、ヨーロッパ全体の消費量が増えているんです。

加えて、漁獲量も減少している。さらに、ここ数年は円安の影響や中東情勢の悪化から遠回りの船便航路を使わざるをえないことによるコスト増など、値上がりする要素しかないのが実情です」

実際にたこ焼き店の話も聞いてみた。大阪市東淀川区にあるたこ焼き店「たこば」の店主・島田良太さんもかなり厳しい状況だと語る。

「今、うちみたいに個人事業でやっているたこ焼き屋は精いっぱいです。原材料費の値上がりもありますし、人件費や光熱費も上がって、たこ焼きだけで続けるのが難しくなっている。この近くでも2軒ほどなくなりました」

高騰に対して、どのように対応しているのだろうか?

「私は自分のことを『たこ焼き職人』と呼ばせていただいており、たこ焼き専門の料理人としての自負があります。なので、たこ焼き以外のメニューで利益を上げようとは思いません。

また、この状況では努力で安くすることはもう無理。なので、たこ焼きの品質は落とさないけど、その分価格を上げさせてもらう。そういう方針です」

たこ焼きを見ると、タコの大きさに驚き。この大きさでこの価格(8個640円、10個790円)ならお買い得だ。さらにその焼き方もユニーク。

「うちの店ではまずタコだけを入れます。ほとんどのお店が先に生地を流してそこにタコを落としていく。でも、それだとタコの大きさなどがわからないので、うちはこんな大きさのタコが入っていますというのをお客さんに見てもらうんです」

ただ、島田さんも子供が小銭を握って買いに来られないという状況に心を痛めているという。そこで、子供たちにたこ焼きを安価で提供する「たこ焼き子供食堂」を月に1度開催。6個50円と破格だ。

「私らが子供の頃はお小遣いでたこ焼きが食べられた。今の子供たちにもその感覚で食べてもらいたいんです」

品質に妥協せず、それでも庶民の味として守る。なんとも深きたこ焼き愛だ。

■たこ焼き店が試みるさまざまな施策

苦しいながらも、さまざまな方策を試みるたこ焼き店もある。

兵庫県尼崎市、阪急電鉄塚口駅前の「みつよ」は6個150円、10個250円と信じられない安さのたこ焼きを提供している、老夫婦が営む店だ。72歳になる経営者のみつよさんが語ってくれた。

「うちの店はもうすぐ30年になる。これだけ長いとお客さんがみんななじみになって、そう簡単に値上げできません。なので、焼きそばやお好み焼き、お弁当を売ったり、娘が作ったクッキーやケーキを売ってなんとか店を続けてる状況なんです。たこ焼きだけやったらもう大赤字です」

店にはひっきりなしに若者からお年寄りまでやって来る。「おばちゃん元気?」の会話などアットホームな雰囲気だ。

「こんな感じでなじみ客ばっかりやから、値上げどころか質も落とせへんのです。うちのタコは高級なアフリカ産のマダコ。心配した卸業者の人がもっと安いタコありますよと勧めてくれるんですけど、やっぱり味が変わってしまう。

ソースもちょっと高いのを使ってるけど、変えられへん。なので、ほかのメニューでたこ焼きの赤字をカバーしていくしかないんです」

涙ぐましい努力だ。そしてこんな試みをするお店も。

タコ以外の具材を入れ、たこ焼きのバリエーションを増やそうとしているのが、たこ焼き発祥の店「会津屋」。その意図を3代目社長の遠藤 勝さんに聞いた。

「たこ焼きは1933年に私の祖父の遠藤留吉が始めたものです。最初は牛すじ肉などが中に入っていました。名前もたこ焼きではなく当時の最先端の象徴だった『ラヂオ』から取って『ラヂオ焼き』と名づけたそうです。でも、牛すじ肉は冷めると脂っぽくなるのが難点でした。

そこで、代わりにタコを入れたところ人気に。最初は『ラヂオ焼きのタコ入り』だったのが、『たこ焼き』と呼ばれるようになって今に至っています」

そんな会津屋が力を入れるのが、「ラヂオ焼き」をバージョンアップした「新ラヂオ焼き」。「豚アスパラチーズ」「とんとろブラックペッパー」「ホタテバター」などそのままでも食べたくなる料理を入れたもので、いずれも4個350円。この新ラヂオ焼きについて遠藤社長に聞くと、前置きした上でこう答えてくれた。

「うちの基本はあくまでもタコの入ったたこ焼きです。しかし、原材料の高騰などで、たこ焼きはやむなく今後も値上げせざるをえなくなるでしょう。

ただ、その価格に見合ったおいしいものを提供して満足してもらおうと開発しているもののひとつが『新ラヂオ焼き』。タコは使っていませんが、タコを使わなくてもこんなにおいしいものができますよ、と提案するものです」

では、今後もメニューは増えていく?

「これから増やしていく予定です。コロナ前に家でたこ焼きをするタコパがはやりましたが、あれもみんな好きなものを入れてオリジナルのものを作るのが楽しい。それをたこ焼きのプロが作るとこうなるというのを『新ラヂオ焼き』として発信していきたいです」

■新店オープンのケースも!

こうした逆境の中、昨年5月に高級ブランドである「明石ダコ」を使ったたこ焼き店「たころう」が大阪市生野区にオープン。店主の松本泰成さんに話を聞いた。何ゆえこのタイミングでオープンを?

「子供の頃から、たこ焼き屋をするのが夢でした。ちょうどこのタイミングでいい物件に空きが出たので、今しかないと思い切りました」

最高峰の国産ブランドである明石のタコを使う理由は?

「私がおいしいと思うたこ焼き屋さんはたいていタコぶつも置いてあるんです。なので、自分が店を出したときには絶対メニューに『タコぶつ』を入れると決めてました。タコぶつとなれば、明石のタコ以外考えられませんので、それをたこ焼きにも使っています」

高コストの割には8個600円と割安に思えますが、経営は大丈夫なんでしょうか?

「なんとかなっています。実は私の本業は教育関係の経営。このたこ焼き屋はあくまでも副業なので、従業員の給料が出たらそれでOKなんです。確かにたこ焼きだけだと儲けはゼロですけど(笑)」

それでも続ける理由は?

「話が戻りますが、私が子供の頃、たこ焼き屋で友達と食べた楽しい思い出があるので、いつか自分もたこ焼き屋をやりたいと思い続けてきたんです。

私は今、少年サッカーの指導者もしているんですが、練習終わりに子供たちがくつろげる場所が欲しかった。今そういう場所が少なくなってきてるじゃないですか。なので、このたこ焼き屋を開いたというのもあるんです」

聞けば聞くほど、あふれる関西人のたこ焼き愛。さまざまな逆境に負けず「負けるな! たこ焼き(とそれに関わる皆さん)」

取材・撮影/ボールルーム

【写真】庶民の味や価格を守ろうと頑張るたこ焼き店(全16枚)

このニュースに関するつぶやき

  • 市内行ったら8個1,000円ぐらい当たり前になってきてるで?家族4人わなかで昼飯食うたら6,000円近くなったでwww
    • イイネ!2
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